未来が読める記事を作り、選ぶ 有料独自記事と無料キュレーション=土屋直也・ニュースソクラ編集長

土屋直也(ニュースソクラ編集長)

つちや・なおや◇1961年生まれ。日本経済新聞社記者として、91年大手証券4社の損失補てん問題で補てん先リストをスクープし、新聞協会賞を受賞。ロンドン、ニューヨークに駐在。2014年7月、ソクラ創設のため、日本経済新聞社を退職。


 会計検査院が、森友学園への用地売却で8億円以上もの不自然な値下げがあった、と11月22日に参議院に提出した報告書で指摘した。直後から、ニュースソクラの常連読者からメールや手紙が舞い込むようになった。

 

「今夏の衆院選挙直後の10月22日に『大勝でもうかない自民幹部 森友・加計で免責得られず』との記事を掲載していたが、そのとおりになりましたね」という励ましだ。

 

 記事は大阪地検の捜査の進展などを見込んだもので、現時点で言えば、記事での予想通りに展開しているというわけではない。お褒めはちょっと面はゆいものがある。

 

 しかし、掲載直後ならともかく、1カ月もたってから反響があるのはうれしい。さらに、「ニュースソクラでは今後の展開の材料がみつかる」という感想が何通かにあったのは、ひそかに我が意を得たりと思った。

 

 ちょっと大風呂敷と思われそうだが、未来が読めるメディアになりたいと意識してきた。解説記事ばかりではない。好評を得ている連載は、医療法人の徳洲会とそれを育てた徳田虎雄氏の人生を、ノンフィクション作家・山岡淳一郎氏がたどった「神になりたかった男」だ。

 

 徳州会が「政治」から離れ、口の端に上ることは少なくなっているが、褒貶(ほうへん)はあっても医療を大きく変えたエネルギーは忘れてはならないものがある。未来を切り開いたその足跡から、未来に向かってどんな姿勢をとったらいいかを教えてくれる。

 

 もうひとつアクセスの多い連載「尊厳ある介護」は、ニュースとは言えないかもしれないが、関係者には悩みの多い介護現場の実情が盛られている。

 

 ◇豊かな終末期という“未来”

 

 この連載の底流に流れるのは、介護現場が高齢者の尊厳を尊ぶ態度の重要さだ。そうした姿勢を取り続けられれば、多くの人の終末期が豊かになることを示している。裏返して言うと、そうあってほしい未来を切り開く手法や考え方が盛り込まれている。これも「未来」を先取りする記事と言えるのではないかと自負している。

 

 ニュースソクラは上記のような独自記事を掲載し、その記事を読むために月500円の会員になっていただくことで運営費用を捻出するメディアだ。いったん会員になってくださった方々の継続率は非常に高い。

 

 この有料部分とともに、ネット上のおもしろい記事を拾い集めるキュレーションサイトでもある点が特徴だ。2014年7月末に会社を設立した当時、キュレーションサイトが先行していくつも生まれていた。その流れに乗り遅れたくないと、会社設立からわずか2カ月ちょっとでシステムを開発した。いま思い出しても冷や汗がでる綱渡りだった。

 

 有料の独自記事のないキュレーションだけの「β版」をスタートさせたのは、10月10日午前10時というトリプル10だったのだが、わざと数字合わせをしたわけではない。実はIPアドレスの登録漏れで記事が流れないという初歩的なミスにより、開始が1日ずれた結果だった。

 

 キュレーションはシステムの力を生かしながら、最後は人の手を介して行う。一般的な重要度とともに「未来」を意識した選択をしてきた。フリー(無料)のネット記事でも、ここまで読み応えのあるものがあるのか、とはっとさせられることが多い。広大なネット世界のなかで、埋もれがちな「掘り出しもの」を紹介できているとの自負が私とスタッフにはある。

 

*週刊エコノミスト2017年12月12日号