特集:戌も笑う投資テーマ2018 2017年12月19日号

 

成長の四天王と

家電ドミノと新元号

 

 国内外では今、人工知能(AI)やロボットなど先端技術の開発が進み、コミュニケーションや輸送、エネルギーといった幅広い分野で社会や生活を劇的に変える新たな「産業革命」が進行中だ。

 

 2017年は、株式市場も日経平均株価が10月に過去最長の16連騰を達成し、1992年1月以来、約26年ぶりの水準を回復。好調な景気や業績を支えに、これら先端技術の関連銘柄をはじめとする企業の株式が買われた

 

 

 こうした中、来年も株式市場で話題となりそうなテーマは多い。AIとビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、EV(電気自動車)と自動運転、ロボットは、「成長の四天王」と言われる。今後も新しい技術やアイデアが出るたびに関連企業の株価に大きく影響するだろう。

 

 

 

 最後に勝ち残る企業をピンポイントで選ぶのは難しい。勝ち組候補の複数の企業への分散投資をおすすめしたい。

 

 EVに関しては電池業界だけでなく資源関連企業にも影響する。EVに積むリチウムイオン電池にはニッケル、チタン、コバルトなどの金属資源が欠かせないからだ。完成車メーカーがどのタイプの電池を採用するか、その動向が注目される。

 

 自動運転を活用した社会実験も着々と進んでいる。たとえば東名高速道路で夜間の一定時間帯に限って一番左の走行車線を自動運転トラック専用レーンにする計画があるそうだ。ドライバー不足を気にする必要がないことや事故が起きないだけでなく、人間と違って休憩が不要なうえ、余計な渋滞を引き起こさないので燃費の改善も期待できよう。

 

 栃木県や沖縄県など自動運転の小型バスで実験を進めている自治体もある。運転手の人件費をかけずに、通院や買い物などの住民サービスを充実できるとして大いに期待されている。まさに“待ったなし”だ。

 

 ◇2万6000円が視野に

 

 来年の株価予想には「日経平均3万円」という強気の見通しもあるが、少なくとも2万6000円は視野に入ってくるだろう。

 

 株価はEPS(1株当たり利益)とPER(株価収益率:市場心理の代理変数)の掛け算で決まる。EPSについては来期の予想増益率(市場予想)の8%を前提とすれば1685円となる。これにPERの標準的な水準である15倍を掛けると2万5300円程度となる。

 

 米朝軍事衝突、米国景気の減速、極端な円高など企業業績にマイナスの影響を及ぼすような外部環境の変化がなければ、市場心理が強気に傾かなくても日経平均の実力値はいずれ2万5000円まで引き上がるはずだ。予想以上に業績が改善して2桁増益となれば2万6000円も見えてくるだろう。

 

 もちろん一本調子で上がるとは考えていない。北朝鮮情勢に加え、サウジアラビアの内紛も火種として意識されそうだ。原油市場の混乱は投機マネーを通じて金融市場に波及するはずだ。個別業界では、薬価引き下げ圧力が強まっている製薬業界や人件費上昇に苦しむ運輸・物流業界も逆風が予想される。

 

 成長の四天王が逆風になる業界もある。自動運転の普及に悩まされているのが損害保険業界だ。自動運転車と通常の車で事故が起きた場合にどちらの責任か(過失割合)が確立されていないからだ。もし将来的に自動運転で事故がゼロになれば、そもそも自動車保険が不要になるという極端な話もある。

 

 銀行・保険などの金融セクターは、世界的な低金利の継続やフィンテックの台頭による他業態との競合激化で厳しい収益環境を強いられるだろう。

 

 ◇買い替え特需

 

 それでも来年は四天王以外にも投資テーマは少なくない。一つは家電製品の買い替え特需。日本では2009年5月~11年3月に家電エコポイント制度が実施された。地デジ対応テレビ、エアコン、冷蔵庫が対象だったが、テレビは通常の年間販売台数が800万台程度であるのに対し、0911年の3年間で実に5700万台が売れたという。一般にテレビの買い替えサイクルは7~8年とされることや、20年に東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えていることを考えると、来年にもテレビの買い替え特需が訪れる可能性は十分にある。さらにIoT化が進んでいることもあって、テレビと同時にエアコンや冷蔵庫にも買い替え需要が波及する“家電ドミノ”が発生するという見方もあるほどだ。

 

 忘れてはならないのは19年5月とされる新天皇陛下の即位だ。18年秋にも新元号が発表されると幅広い領域にビジネスの可能性が生まれる。昭和から平成に変わるときは天皇陛下(昭和天皇)の体調不良が理由だったため自粛ムードだったが、今回は生前退位なので「自粛すべき」という話にはならないだろう。

 

 典型例は公的書類などの作り直し特需が発生する印刷業界や紙パルプ業界だ。請求書や領収証の発行など業務書類を手掛けるシステム会社にも恩恵がありそうだ。

 

 連想ゲーム的ではあるが、新元号と似た地名やお店に多くの人が訪れたり、仮に、天皇陛下の即位をお祝いして新紙幣が発行されることになれば、駅の券売機や飲料などの自動販売機、銀行などのATMも更新が必要となる。中には社名変更する企業も現れるかもしれない。企業が社名変更すると、名刺や封筒、紙袋など社員が利用する物にとどまらず、看板やホームページ、新聞・雑誌への広告やテレビCMに至るまで、社名が入ったあらゆるものを作り直す必要が生じる。

 

(井出真吾・ニッセイ基礎研究所チーフ株式ストラテジスト)

週刊エコノミスト 2017年12月19日号

発売日:2017年12月11日

定価:620円