高い品質と営業力で特許切れ克服 眞鍋淳 第一三共社長兼最高執行責任者(COO)

  Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

 2017年3月期通期に国内医療用医薬品売上高で、競合他社を抑え初の首位を達成した第一三共。一方、連結売上高は前年同期比3・2%減の9551億円となり、今後は特許切れとなった主力の高血圧症治療剤「オルメサルタン」に続く収益の柱の育成が急務だ。

 

── 国内医療用医薬品は何が好調ですか。

 

眞鍋 血液を固まりにくくして血栓の生成を予防する抗凝固剤「エドキサバン」が好調に売り上げを伸ばしています。直接経口抗凝固薬(DOAC)市場におけるエドキサバンの国内売り上げシェアは、17年9月末時点で23・5%を獲得しました。特に、主なターゲットとしている新規患者の処方箋数シェアではトップの同38・6%まで拡大しています。

 

── 好調の理由は。

 

眞鍋 当社のエドキサバンが高品質であることに加え、医薬情報担当者(MR)の高い評価と営業力の強さがあります。現在日本では、代表的な抗凝固剤として「ワーファリン」が圧倒的な処方箋数シェアを占めていますが、ワーファリンは納豆が食べられないなど食べ物に制限があるほか、投与量の調整も必要です。

 

 一方、エドキサバンは食事制限がほとんどなく、服用も1日1回でよい。臨床試験でもワーファリン以上の安全性と同等の有効性が立証されており、当社製品の高い品質と利便性が選ばれている理由だと思います。

 

── 営業力の強さとは。

 

眞鍋 当社の国内約2200人のMRは、医療機関による信頼性評価で5年連続1位をいただいており、信頼を土台とした営業力の強さが新規患者の獲得につながっています。

 

 他の製薬企業からも、当社の営業力を活用して日本で製剤を展開したいとのお話をいただくことが多く、他社製品の販売が収益に大きく貢献しています。実績を残すことで別の製薬会社とも提携でき、他社製品が充実すれば当社の営業力も更に増すという好循環が生まれています。

 

── オルメサルタンの特許切れによる減収をどう補いますか。

 

眞鍋 まずはエドキサバンの世界シェアを伸ばします。現状では、18年3月期のオルメサルタンは840億円(前年同期比38・5%減)の減収見込みに対し、エドキサバンは277億円(同74・1%増)の増収で、減収を補うには至っていません。

 

 しかし、世界のDOACの市場規模は17年6月末時点で約1兆7000億円と大きく、今後も拡大が予想されます。当社の高品質な製品と営業力を武器に着実にシェアを獲得していけば、20年のエドキサバンの売上高目標1200億円は達成できるとみています。

 

 ◇独自のがん治療薬を開発

 

── 米国事業はどうですか。

 

眞鍋 鎮痛剤と貧血治療剤の主に二つの事業がありますが、鎮痛剤事業は厳しい状況です。米国で麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の乱用が問題となったことを受け、14年に米チャールストンから取得した制吐剤配合の麻薬性鎮痛剤「CL─108」の開発・販売権を返還しました。これに伴い、17年7~9月期に約278億円の減損を計上し、18年3月期の連結営業利益見通しも1000億円から750億円に下方修正しました。

 

── どう挽回しますか。

 

眞鍋 鎮痛剤事業の他の3製品を強化します。オピオイドの副作用である便秘の治療薬「モバンティック」と、乱用防止特性を持った麻薬性鎮痛剤「モルファボンド」と「ロキシボンド」です。この3製品は、コミットメントを強めながら慎重、確実に販売を伸ばしていきます。

 

 また、貧血治療剤事業では、子会社のルイトポルドが販売する鉄欠乏性貧血治療薬「ヴェノファー」と「インジェクタファー」が好調です。この2製品の合計で、現在米鉄注射剤市場で7割以上のシェアを占めており、今後も予想以上の伸びが期待できるとみています。

 

── がん事業にも注力しています。

 

眞鍋 現在、乳がんなどに多く発現する遺伝子「HER2」を標的とした抗体薬物複合体(ADC)「DS─8201」の開発を最優先で行っています。ADCとは、抗体と制がん剤をリンカー(抗体と薬物をつなぐもの)で結合させたものです。リンカーと結合した抗体ががん細胞に正確に届き、細胞に取り込まれると制がん剤を放出する仕組みになっているため、正常な細胞には負荷をかけずに高い治療効果が見込めます。

 

 従来のリンカーは最大でも四つの薬物しか付けられず、がん細胞に到達する途中で抗体から外れてしまうなどの難点がありましたが、当社が独自に開発したリンカーは八つの薬物を付けることができ、安定性にも優れているため、より高い治療効果が期待できます。

 

── 現在の進捗(しんちょく)は。

 

眞鍋 臨床試験はフェーズ2(申請用試験)に入り、20年度に米食品医薬品局(FDA)に承認申請を行う計画ですが、既にFDAから16年にファストトラック(優先承認審査)指定、17年に画期的治療薬指定をいただいており、早期承認申請に向け開発を進めているところです。

 

 16年に開始した5カ年中期経営計画では、20年時点で25年度までに売上高1000億円以上を期待できる中核製品を三~五つ保有する目標を掲げていますが、DS─8201はその候補として期待しています。

(構成=荒木宏香・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 当社の安全性研究所や米オハイオ州立大学で、肝臓に有害な「肝毒性」の発現メカニズムなどを研究していました。帰国後も研究一筋の30代でした。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 柳田邦男氏の『ガン回廊の朝(あした)(上)・(下)』です。いかに患者に貢献できるかが一番大切だと気付くきっかけとなった本です。

 

Q 休日の過ごし方

 

A ジムに毎週通い体を動かしています。お付き合いのゴルフも増えました。

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 ■人物略歴

 ◇まなべ・すなお

 1954年生まれ。香川県出身。香川県大手前高校(現大手前丸亀高校)、東京大学農学部卒業後、78年三共(現第一三共)入社。2009年第一三共執行役員、16年同社副社長を経て、174月から現職。63歳。

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事業内容:医薬品の研究開発、製造、販売

本社所在地:東京都中央区

設立:20059

資本金:500億円

従業員数:14791人(179月末時点、連結)

業績(173月期、連結)

 売上高:9551億円

 

 営業利益:889億円