特集:日本経済総予測2018 2017年12月26日号

 

日本の経済構造は変わった 

株価は3万円超えて上昇へ

 
 <第1部 景気&マーケット>

 

 1211日、日経平均株価は約26年ぶりの水準となる2万2938円73銭をつけた。

 トランプ米大統領がイスラエルの首都としてエルサレムを認めるとの方針が伝えられた同6日には2017年最大の下げ幅を記録したが、わずか3営業日で回復。この強固な株高の流れは18年も一段と加速するだろう。

 

 私は、4月下旬から始まるゴールデンウイークを前に日経平均が3万円に到達し、年末までには3万2000円程度まで上昇すると考える。さらに20年の東京五輪までにTOPIX(東証株価指数)構成銘柄のEPS(1株当たり利益)は2倍になり、日経平均では4万円になると見込んでいる。

 

 企業の収益力は大きく改善

 

 1212月から続く景気拡大期は、1965年11月から57カ月続いた「いざなぎ景気」を超え、戦後2位の長さとなっている。現在の日本経済の好景気は、循環的なものではなく、構造的な変化がもたらしたものだ。ほぼゼロ成長だった「失われた20年」を脱したと言える。

 

 その根拠の一つは、企業の収益性の大きな改善だ。8090年代は、日本の実質GDP(国内総生産)成長率が2・5%にならないと、日本企業は増益にならなかった。だが、この「失われた20年」の間、日本企業は技術革新やリストラ、コスト削減などにより生産性を上げて損益分岐点が下がった結果、実質GDP成長率が0・5%程度でも増益を確保できるようになった。日本の輸出企業は海外に生産拠点を移すなど円高耐久力もつけており、1ドル=100~105円でも増益になるため、国際競争力も全く劣っていない。

 

 企業の収益性の改善は、正社員の増加にもつながった。総務省が12月に発表した10月の労働力調査によると、正規雇用者は前年同月比68万人増の3485万人で、前年同月比では35カ月連続の増加となっている。正社員の増加は、雇用が量的・質的に改善していることを示しており、国民の所得も増えて購買力の伸びにもつながっていくだろう。

 

 実際、働いている人に分配されるお金の総額である実質雇用者報酬は伸びている。17年7~9月期は前年同期比1・8%増で、15年4~6月期以来、10期連続で増加。さらに17年1月以降、ゼロかマイナスが続いていた実質賃金の伸び(前年同月比)は10月、10カ月ぶりにプラス(0・2%)に転じた。

 

 実質賃金は就業者1人当たりの平均賃金であるため、無職の人が賃金を得るようになっても平均以下であれば、1人当たりは減少する。だが、その実質賃金の伸びもプラスになったことは、雇用環境の一層の改善が進んでいることを裏付けている。

 

 そんな環境の中、これからの将来に希望を抱く若者は恵まれている。厚労省の賃金構造基本調査(16年)で、基本給である所定内給与を年代別に見ると、10代から39歳まではすべての年代が15年比で増加している。

 

 若年層の賃金増

 

 また、17年の大卒の初任給は前年比0・9%増の20万7800円で、14年から4年連続で増加。いずれは労働力の中心となる若年層の雇用環境の改善が、今後の日本経済に好循環をもたらすだろう。

 

 アベノミクスの開始以降、日本株市場には多くの外国人投資家が入ってきた。外国人投資家は旧民主党政権と異なり、安倍晋三政権がトップダウンで異次元の量的緩和を進める金融政策や財政政策を実行し、規制強化はしないことを評価している。

 

 さらに10月の衆院選で与党が大勝し、安倍政権が継続されることも、外国人投資家は好感している。来年4月に任期を迎える黒田東彦・日銀総裁の去就は別にしても、現在の金融緩和路線が引き継がれることに対する信頼も厚い。

 

 外国人投資家はベンチマーク(基準)と比較して日本株の資産配分を3%程度低くしており、この資産配分がベンチマークまで戻ると、約8兆円が日本株市場に入ってくることになる。

 

 企業収益が増えることも、外国人投資家の買い増しにつながる。みずほ証券によると、3月決算の東証1部上場企業全体では18年3月期の最終利益が前年比で11・2%増加すると見込んでいるが、17年4~9月期の実績は同22・7%増となっており、上方修正される可能性が高い。PER(株価収益率)が15倍程度と割安な日本株に、外国人投資家がさらに投資する要因となりそうだ。

 

 日本株の投資先としては、メガバンクが魅力だ。金融庁によると、日本のメガバンクの海外への貸出金は過去10年で約3倍に増加し、海外収益比率は約40%に上昇した。米国の金融規制強化や、欧州の金融危機などの影響で、今後の成長が見込めるアジア企業への融資額が多いのも強みだ。

 

 

 

 実質3%成長も

 

 さらに安定的に日本株が上昇するには、日本人投資家の動きが重要になる。生命保険会社など国内の機関投資家が日本株への投資を増やさないと株価の上昇は続かないからだ。

 

 その意味では、100兆円超の資産を運用する巨大機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が14年に日本株の運用比率を12%から25%に引き上げたことは大きい。外国人投資家の買い増しやGPIFの下支えにより、今後も株価の上昇が続けば、民間の機関投資家なども日本株への投資を増やさざるを得なくなり、更なる高値を目指すことになるだろう。

 

 米国では、18年に中間選挙があるため、トランプ政権が国民の支持を得ようと、法人減税などの経済政策を進めることになるだろう。これにより18年の米国経済は3・5~4%の成長が見込める。米経済の成長に引っ張られるように、米国での現地生産や輸出の多い日本企業はさらに業績が向上していくだろう。日本の実質GDP成長率は2・5~3%まで上昇する可能性もある。

 

 

(イェスパー・コール、ウィズダムツリー・ジャパンCEO)

週刊エコノミスト 2017年12月26日号

発売日:2017年12月18日

定価:670円