EVで組んだトヨタ・パナソニックに漂う不安

会見する豊田章男トヨタ社長(左)と津賀一宏パナソニック社長
会見する豊田章男トヨタ社長(左)と津賀一宏パナソニック社長

 トヨタ自動車がEV(電気自動車)シフトを一段と加速させた。

 

 トヨタとパナソニックは12月13日都内で共同会見を開き、電気自動車(EV)向け電池開発の協業に向けた検討を始めることで合意したと発表した。具体的には高容量の角型リチウムイオン電池や全固体電池の共同開発を目指す。

 トヨタの豊田章男社長は「2030年にトヨタ車の全販売台数の50%を電動車両にする」と述べ、同社としては初めてEVの数値目標を掲げた。

  

 内訳はEV100万台、ハイブリッド車(HV)・プラグインハイブリッド車(PHV)合わせ450万台の計550万台。現在、トヨタの電動車量はHV142万台、PHV5万台の計147万台。現在の3倍以上の目標について、豊田社長は「達成には電池性能の向上と安定供給が必須」と提携の理由を語った

2017年の東京モーターショーに出展されたトヨタのコンセプトEV
2017年の東京モーターショーに出展されたトヨタのコンセプトEV

 一方、津賀社長は「高性能の新型電池は単独で開発できない」とトヨタとの協業に意欲をみせた。

 

◇巻き返し期すトヨタ

 

 EVの量産モデルを持たないトヨタは欧米メーカーに水をあけられている。9月にマツダ、部品大手デンソーと共同でEV開発の新会社を設立したが、EVの中核部品である電池は新会社の領域外。供給先確保が最優先課題だ。

 

 パナソニックはもともとモバイル機器向けだった円筒型リチウムイオン電池をEV向けに米EVメーカーのテスラに独占供給し、世界生産で首位に立つが、テスラの16年の生産台数は約8万台。今後EVを量産する大手自動車メーカーへの供給が電池事業の鍵を握る。

 

 すでにHVのプリウス向けに電池を供給しているが、これまで電動化の見通しを示さなかったトヨタと組むのはリスクが大きかった。しかし、「トヨタがマツダと組み、他社も加わればボリュームが期待できるため提携を決めたようだ」(シンクタンク研究員)。

 

◇パナは「一本足」に不安

 

「100万台という数値目標を出したのは前進」と提携に前向きな見方がある一方、独フォルクスワーゲン(VW)が打ち出した25年までにEV販売300万台、うち中国向けは150万台という目標などに比べ、「トヨタ全体への影響は小さい」(遠藤功治SBI証券投資調査部専任部長)との指摘もある。

 

 というのも電池コストが高いEVの生産は、1車種当たり20万~30万台が損益分岐点とされる。複数モデルを投入すれば赤字は必至だ。また、量産効果を出すにはEV専用のプラットフォーム(車体基盤)も必要になる。

 

 すでに開発段階にあるVWや独ダイムラーに比べ、トヨタは「ガソリン車との共通基盤を考えている時点で遅れている」(アナリスト)。

 

 パナソニックは供給量を確保できるかが課題だ。テスラと共同で巨額を投じた米電池工場ギガファクトリーでは、円筒型・角型両方を生産するが、すべてテスラ向け。トヨタと共同出資する、HV用電池をつくるプライムアースEVエナジーの宮城、静岡工場の拡充が考えられるが、HV用とEV用は必要とされる容量が違うため、新たな生産ラインの設備投資が不可欠だ。角型を生産する中国工場の能力増強が必須とみられるが、社内では全体に占める車載事業の比率が3割近に迫り、「クルマ1本足」経営を不安視する声もある。

 

 両者の思惑が一致した提携劇だったが、巻き返しは容易でない。

(終わり)

関連する記事・ebooks

爆走EV GoGo

巨大市場狙う欧米勢 追撃トヨタの正念場

 

10月24日開幕した東京モーターショーで、自動車メーカーの多くが派手なデザインのコンセプトカー(試作車)を競う中、地味なデザインながら専門家の目を引いたのが、独フォルクスワーゲン(VW)が12月に市場投入するEV「e─ゴルフ」だ。ゴルフは同社の人気モデル。日本にもユーザーが多い。e―ゴルフを最前面に展示したVWの姿勢からは、同社のEVにかける「本気度」がうかがえた。続きを読む