戸建て住宅でも1位を目指す 芳井敬一 大和ハウス工業社長

 Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

 

── 2017年11月、社長に就任しました。

 

芳井 昨年9月に突然、打診されました。樋口武男会長に「ここまで来たら逃げるなよ」と言われて、考える余裕はありませんでした。ただ、事業を進めていく上で自分が障害になってはならないという思いはありました。

 

 

 

 国内ハウスメーカー最大手。18年3月期は売上高3兆7500億円、営業利益3250億円、純利益2160億円で2期連続の最高益更新を見込む。

 

── 好業績の要因は。

 

芳井 商業施設、賃貸住宅、物流などの事業用施設の三つの主力事業が圧倒的に引っ張っています。意外なところでは戸建て住宅の数字が良いです。14年発売の「ジーヴォ・シグマ」は、天井高を272センチとれることで人気です。従来の「ジーヴォ」の特徴である外張り断熱は、玄人には受けるけれど、一般の方は理解しにくかった。一方、天井高はわかりやすい。東京エリアのお客様の決定要因を見ると、一番は設計が良い、コーディネーターが良いですが、二番目に天井高が入っています。

 

── コア3事業の拡充策は。

 

芳井 商業施設は都市部に増やしていきます。1棟当たりの単価もかつては1億円程度でしたが、今は3倍になっています。

 

 物流施設は供給が増えて飽和状態にあると言われていますが、実は日本にある物流施設の7割が古い形式のものです。

 

 また米国の統計では小売業に占めるeコマースの割合は8%で、日本は5・4%程度。eコマースの需要はまだまだ増える余地があります。施設の場所も東京や大阪など都市部の近郊が増えるでしょう。

 

 賃貸住宅は、金融庁がアパートローンの貸し出しに対して監督を強化したこともあり、ローンがつかずに着工を待つ案件が発生するなど、難しい場面もありました。ただ、当社の管理物件は高い入居率を維持しており、市場が落ち着けばおのずと選ばれると思っていました。すでに昨年の12月の受注はもとの水準に戻っています。

 

── 国内戸建て住宅事業の強化を掲げています。

 

芳井 戸建て住宅でトップではない要因はいろいろあります。ただ、これまでは人材を増やすなど、首位を取りに行く戦略を積極的にとってきませんでした。そこを見直していきます。

 

 すでに東京では住宅展示場を急速に増やしており、この5年間で8カ所から14カ所に拡大しました。欲しいのは銅メダルじゃない。上位に追いついていくことは非常に大事です。

 

 当面は消費税の増税が気がかりです。駆け込み需要があるとして、その後の反動減をどう乗り切るか。過去2回の消費税増税の時と同じような道をたどらないようにしなければなりません。

 

 ◇海外は新しいステージへ

 

── 19年度からの中期経営計画ではどのように芳井色を出しますか。

 

芳井 当社は創業100周年を迎える55年度に売上高10兆円を目指しています。どんな道をたどり、10兆円になった時にどんな会社になっているか。今年4月に入社する新入社員が20年、30年先を見えるようなロードマップを用意したいです。

 

── 海外事業の今後は。

 

芳井 10兆円という数字を追いかける上で、海外事業の拡大は避けて通れません。

 

 私が海外事業部長に就いた11年当時、海外事業の売り上げは100億円強の規模でした。しかし18年3月期は為替が大きく動かない限り2000億円になる見通しで、来期は2500億円が見えています。展開する国も中国1カ国だったものが現在は17カ国に広がりました。

 

 これだけの規模になると、100億円の頃には見えなかった景色が見えてきますし、実際に事業につながるような前向きな情報が入ってくるようになります。チャンスが広がっている手ごたえがあります。

 

── 拡大に当たり、M&A(合併・買収)も選択肢に入りますか。

 

芳井 これまでに米国の戸建て住宅会社のスタンレー・マーチン社や、フロントドア社の戸建て住宅事業を取得しましたが、M&Aありきで考えているわけではありません。重要なのは、当社のDNAに合うかどうか。時間をかけてゆっくり話し合う必要があります。

 

── 正月に住宅展示場を休業するなど働き方改革でも芳井色を打ち出しています。

 

芳井 自宅でお正月を味わったことのない営業スタッフが、お正月をゆっくり過ごせる住宅を提案をするのはばかげています。展示場は1227日に閉めて、正月を味わう。その代わり12月も1月も数字を確保しろと言っています。実際、三が日の営業休止は東京では5年目ですが、1月の住宅契約数は過去4年間、まったく落ちていません。

 

── 人材育成は。

 

芳井 大和ハウスのDNAをいかにつないでいくかが課題です。樋口会長は、「オーナー(石橋信夫氏)はこうだった」と繰り返し話しています。「またか」と思う人もいるかもしれませんが、社員の間に「凡事徹底」「10兆円」という言葉は刷り込まれています。そしてその方向に人は導かれる。これをしっかり伝えていけばいいと思っています。

(構成=花谷美枝・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 神戸製鋼所でラグビーをしていましたが、交通事故で8カ月入院して、何もかも失いかけました。32歳で大和ハウスに転職。上司・後輩に恵まれました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 創業者の石橋信夫がまとめた『わが社の行き方』(非売品)。その時の気持ちで捉え方が変わるので、日付と感想を書き込んだ付箋を貼っています。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 絵画鑑賞と観劇。俳優の古田新太さんのファンで、劇団☆新感線の『髑髏(どくろ)城の七人』は花鳥風月、全部観ました。

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 ■人物略歴

 ◇よしい・けいいち

 大阪府出身。大阪府立大和川高校(現・大阪府教育センター附属高校)、中央大学卒業。神戸製鋼所を経て1990年大和ハウス工業入社。2013年東京本店長、16年取締役専務執行役員、1711月から現職。59歳。

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事業内容:戸建て・賃貸住宅、商業・事業施設の建築など

本社所在地:大阪市

設立:19554

資本金:16169920万円

従業員数:15725人(20174月現在)

業績(173月期、連結)

 売上高:35129億円

 

 営業利益:3100億円