組合員に必要とされる組織へ改革する 中家徹 全国農業協同組合中央会(JA全中)会長  

Interviewer 金山隆一(本誌編集長)

── JAとはどんな組織ですか。


中家 農業者の協同組合です。農家が1人では成しえないことを、互いに協同して大きな力にしていこうとする組織です。


 JAの主人公は、1000万人の組合員と650の単位農協です。都道府県、全国段階で事業ごとの組織があります。保険のような共済事業、銀行と同じ信用(金融)事業、肥料農薬の購買や農産物販売の経済事業などです。グループ全体で23万人の職員がいます。グループを代表するのが全国農協中央会(全中)です。


── 政府の農協改革にはどう臨んでいますか。


中家 我々はあくまでも自主的な組織ですから、自己改革案を作成し、現在取り組んでいます。農業者の所得拡大と、農業生産の拡大、地域の活性化の三つが基本目標です。


── JA全中が改革を主導するのですか。


中家 具体的な改革は各地のJAが創意工夫しています。日本の農業はとても多様です。山間地、平場と地理的な違いがあり、コメ、酪農、野菜、果樹と作物も違います。その土地に合わせ、改革のメニューは650通り、単位農協の数だけあります。それぞれ組合員の皆さんの要望を聞きながら改革を進め、「JAは必要な組織だ」という評価をいただきたいと思っています。


── 具体例を教えてください。


中家 例えば、私の地元の和歌山では梅やみかんを生産していますが、JAがドライフルーツの工場を4月に立ち上げます。2級品、3級品を加工することで付加価値を高め、海外需要にも応えていくことで、農家の所得増大につなげます。


── 農家の手取りを増やすには、流通段階の中間マージンを省けばいいのではないでしょうか。


中家 確かに農産物の小売りの末端価格と出荷価格との差は大きい。JAでも直売所やネット販売に力を入れています。ただ、すべて直売にするのは不可能です。中間流通を省けば、決済はじめリスクも負います。


 出荷段階におけるJAの役割は、生産物を均質化し、消費者の皆さんに安全・安心なものを提供することです。みかんならば、選果場でセンサーにより、大きさだけでなく、糖度まで測ります。私の地元では残留農薬の検査も行っています。検査を行うには設備投資が必要です。


── 強い農業に向けて、どう手を打っていきますか。


中家 高付加価値化や輸出はもちろん大事です。ただ、どういう農業が「強い農業」なのでしょうか。大規模であれば強いのでしょうか。


 日本の農業は規模が小さく労働集約的で、その代わり品質のいいものを生産しています。大規模化も大事ですが、大半を占める家族経営が維持継続できる農業を実現しなければなりません。


 農業者の所得増大と同時に、地域を維持することにも取り組まなければなりません。農村をどう守っていくかが我々の使命です。

 

 ◇地域のインフラとして

 

── 農協改革では、農業振興に専念する方向性が示されています。


中家 JAグループは総合農協として、金融、共済、経済、生活を支えるサービスとさまざまな事業を行うことでトータルに組合員対応ができています。世界的にも協同組合の理想的な形として評価が高い総合農協であることを堅持していきます。


── 農業者以外の准組合員の利用規制が検討課題となっています。


中家 私の地元のJAは、山奥の過疎地に移動スーパーの車を走らせています。利用者は農業をリタイアした准組合員が多いです。民間ガソリンスタンドが撤退した後、行政と連携して引き継いで運営しています。


 地域には准組合員が多く、利用規制が入ると、地域のインフラとしての機能を果たせなくなります。


── 金融事業は、世界的な運用環境の悪化で厳しくなるのでは。


中家 我々の組織は、単位農協が集めた預金を金融事業の全国組織である農林中央金庫が運用して還元するという大きな形があります。金融事業が利ザヤをとれないのは本当に厳しい。経済事業の収支改善をはじめ、組織の効率化や合併などさまざまなことを考えなければなりません。


── この冬は野菜が値上がりしました。


中家 天候不順で野菜の価格が高騰するのは、生産基盤が脆弱(ぜいじゃく)になっているからです。農業者の平均年齢は67歳と高齢化し、担い手不足です。これ以上、農業を弱くしてはいけないと思います。人間が生きていくうえで一番大事な食の基ですから。


 いま日本の食料自給率は38%(カロリーベース)と先進国で最低です。世界的に人口増と異常気象で食糧不足が来ると言われています。その時、お金を出せば農産物を調達できる時代がいつまでも保証できるのか。いったん遊休化した農地を元に戻すのはものすごく大変です。どこかで歯止めを掛けなければ日本の食が危ういとの思いがあります。消費者に少々高くても国産の農産物を買うことにご理解いただくため、現状を発信する必要があります。


── 持続可能な農業に向け、JAとしてはどう取り組みますか。


中家 農業者の手取りを1円でも増やすため、いかにコストを下げ販売力を高めるか。農産物の販路拡大や輸出に取り組んでいきます。国内にはまだ潜在需要があると思います。


 農協改革の期限(19年5月)まで、この1年が正念場です。組合員にもう一度、JAに結集しようと認識してもらった時、より強固な基盤を持つ組織として新たな出発を切れると思っています。
(構成=黒崎亜弓・編集部)

 

 ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか


A 和歌山の紀南農協に勤め、青年部の事務局を担当していました。血気盛んでしたね。


Q 「私を変えた本」は


A 松下幸之助さんの本です。


Q 休日の過ごし方


A 趣味は海釣りです。紀伊半島の串本あたりで大海を相手にするのは最高ですが、今は休日がありません。
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 ■人物略歴
 ◇なかや・とおる
 1949年生まれ。和歌山県出身。和歌山県立田辺高校(田辺市)、中央協同組合学園卒業。2004年紀南農業協同組合(JA紀南)代表理事組合長、12年和歌山県農業協同組合中央会(JA和歌山中央会)会長、17年8月より現職。68歳。
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事業内容:JAグループ─信用、共済、経済、営農・生活指導などの事業
     JA全中─JAグループの代表、行政との連携
所在地:東京都千代田区(JA全中)
設立:1954年
JA全中の従業員数:131人(2017年10月1日現在)
JAグループの事業総利益:1兆8561億円(2015年度農林水産省「総合農協統計表」)