特集:機関投資家はこう動く 2018年4月24日号

米中摩擦に一喜一憂 

問われる「目利き力」

 

すっきり買いにいけない、モヤモヤしたセンチメント(心理)」


 年金資金を運用する担当者が、もどかしさを口にする。例年、新年度に入ると、株式などに新たに資金を振り向ける機関投資家が、すっきりしない日々を送っている。


 2~3月の株価低迷に見舞われた日本の株式市場は新年度を迎えて、変化の兆しはある。1月以来、猛烈な売り越しを仕掛けてきた外国人投資家が、3月最終週(26~30日)、48億円ながら買い越しに転じた(図1、現物株ベース)。4月は過去17年連続で買い越している。3月最終週の買い越しへの転換は、日本株反転への兆しに見える。

だが、例年とは趣が異なる。


 年金や保険などの長期保有の機関投資家は、日経平均株価を構成する大企業株を購入する。
 大企業株の代表格であるファーストリテイリング株が4月に入って緩やかに上昇しているのも、新たな資金流入の影響とも言える。


 一方で、同じ大企業株でも、ソフトバンクグループは4月9日に年初来安値を付けた。


 三菱UFJ国際投信の荒武秀至チーフエコノミストは「世界的にフェイスブックやアマゾン、アリババグループなど、ハイテク銘柄が売られた影響では」と指摘する。

 

 ◇貿易、北朝鮮、為替

 

 機関投資家が買いをためらう理由で真っ先に挙げられるのが、米中の貿易摩擦リスクだ。今年の年初来安値更新(3月26日=2万347円)のきっかけとなったのが、3月23日にトランプ大統領が鉄鋼・アルミニウム製品の輸入制限を発動したことだった。


 返す刀で、中国も大豆や自動車などに対する関税措置発表で米国に応酬。米中で貿易制裁の報復合戦の様相を呈している。


 ただし4月10日、中国の習近平国家主席が外資に国内市場を開放する方針を明らかにして、米国に対する一定の配慮をにおわせた。米国では5月22日までは一般からの意見聴取手続きを取っており、結論は出ない。


 それまで市場は、米中の一挙手一投足に一喜一憂することになりそうだ。


 第二の懸念が、政治リスクだ。4月中旬以降、南北首脳会談や米朝首脳会談が予定されてはいる。米朝首脳会談は、当初「5月末実施」と発表されていた。しかし、4月9日にトランプ大統領が「5月か6月初旬に開く」と述べ、後ろ倒しになることを示唆した。

暗雲がたれこめているように見えるが、米朝間が水面下で事前交渉していることも徐々に明らかになっている。こちらも、市場にとって模様ながめの要素だ。


 さらに機関投資家が見極めたいのが、18年度の企業業績予想だ。


 4月11日、百貨店大手「J・フロントリテイリング」が年初来安値を付けた。前日発表した2018年2月期決算は営業利益が前期比18・7%増の495億円で着地したものの、今期予想を前期比2・1%減の485億円としたことに市場の失望が広がった。


 4月中旬以降に始まる決算発表で注目は為替である。18年度の予算を立てていた2~3月は急速に円高が進んでいた時期。さらに円高が進むと見込んで1ドル=100円程度で予想していたならば、業績の下振れ要因になる。


 JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストは「貿易摩擦や日銀の緩和縮小観測、国内政治などへの懸念から、今後も為替が円高で推移する可能性があり、企業業績のマイナス要因になり得る」と指摘する。


 また、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「米中貿易摩擦、森友学園・加計学園など国内の政治リスクなどに、過剰に反応する必要はない。しかし、リスクは払拭(ふっしょく)されていない。また、企業決算が出るのも4月以降。投資家は、これらの結果を見極めるまで積極的には買えないのでは」と話す。

 ◇恐怖指数下がらず

 

 一進一退の日本株市場に、変動リスクがくすぶっていることをを示すデータがある。日経平均の1カ月先の不透明感の高さを示す「日経平均ボラティリティー(変動率)・インデックス(日経VI)」だ。通常、20ポイント以下ならば、日経平均株価も安定した動きを取る。


 その日経VIは、4月以降も20ポイントを上回る日が続く(23ページ図2)。S&P500指数のボラティリティーを示すVIX指数も、「べた凪(なぎ)」と言われる15ポイントを上回って推移する。


 17年の市場全体が緩やかに上昇する適温相場から一転、今年は変動の激しい相場となりそうだ。荒れる相場の主役の代表は、ヘッジファンドである。値動きの差を狙って売り買いを駆使して利ざやを稼ぐ手法を取る。足元のVIX指数の水準も、虎視眈々(たんたん)と相場変動を狙うヘッジファンドはじめ機関投資家の姿を映し出したものと言える。


 低インフレ、低金利の適温経済では、日経平均などのインデックス運用で手軽にリターンが得られたが、今年は違う。株、為替、債券、原油、金など幅広い商品に対する選別の見極め、目利き力が問われる。


(種市房子・編集部)
(下桐実雅子・編集部)
 

週刊エコノミスト 2018年4月24日号

定価:670円

発売日:4月16日