成長の原動力はIoTや自動運転 谷本秀夫=京セラ社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

 

── 2018年3月期決算は売上高が過去最高を更新し、好調でした。


 谷本 主力の部品事業が市場環境に恵まれ、好運でした。半導体製造装置の需要が増加し、産業・自動車用部品分野では世界市場で過去最高の約6兆円の出荷額となりました。


── 需要増にどう対応しますか。


 谷本 積極的に増産投資を行っています。鹿児島・国分工場の新棟は18年10月に稼働予定で、滋賀・八日市工場の増設も進めている。米国でもワシントン工場、ノースカロライナ工場で増設に取り組みました。売上高で前年比20%以上の成長の継続を目指します。

 

── 半導体関連分野も伸びていますね。


 谷本 IoT(モノのインターネット)関連の電子部品表面実装セラミックパッケージやイメージセンサー用のセラミックパッケージは受注が拡大しています。耐熱性、耐摩耗性、硬度に優れたセラミック化へのニーズが高まっているからです。スマートフォン向けなどは部品はますます小型化が必要となり、京セラのセラミックパッケージの技術に対する引き合いも増えています。20年度の鹿児島・川内工場の生産能力を17年度比で1・25倍にする計画です。


── 自動運転が実用化へ向けて進んでいて、部品需要も旺盛です。


 谷本 先進運転支援システム(ADAS)関連の衝突防止用部品が増加傾向にあります。車載レーダー用アンテナ基板は、回路とアンテナの一体成型技術と、直射日光や雪など過酷な条件下での耐久性など長期信頼性が評価されるなど高い競争力を持っています。すでに高シェアを実現していますが、20年度にはADAS関連の売上高を17年度比で約2倍に引き上げたい。


── IoT関連市場では、今後の成長をどう取り込みますか。


 谷本 (京セラが筆頭株主である)KDDIが低価格、低消費電力で広範囲をカバーする新たなIoT通信の提供を開始したほか、次世代移動通信の「5G」が本格的に立ち上がれば、新しいサービスの実現が加速します。農業では日照時間や温度、湿度などを計測し、植物の育成に最適な環境を管理したり、都市ガスが普及していない地域で家庭のプロパンガスの残量を計測したりと、さまざまな便利なサービスが立ち上がります。京セラのIoT関連部品は7種類のセンサーの搭載が可能で、今後、活躍する場面は増えていきます。
── ソーラー事業を軸とする生活・環境分野は苦戦していますね。


 谷本 ソーラー苦戦の理由は、中国勢が低価格攻勢でシェアを拡大していることと、太陽光発電のような再生可能エネルギーで発電した電気を、国が決めた価格で買い取るよう、電力会社に義務づけた「固定価格買い取り制度」が改正され、新規参入者向けの買い取り価格が引き下げられていることが背景にあります。しかし、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)を受けて、政府が打ち出した「温室効果ガスを30年度に13年度比で26%削減する」という目標に向け、大手企業が本格的に動き出せば、需要が拡大するのは間違いありません。

 

  ◇M&Aに2500億円

 

── 具体的には、どのようなビジネスを展開するのですか。


 谷本 工場で使う電力を供給するためのメガソーラー事業を考えており、工場が再生可能エネルギー由来の電力を取引できる基盤の構築を目指しているデジタルグリッド(東京都千代田区)や電力会社、新電力などとの提携を検討し、今年度中にはメドを付けたい。こうした仕組みが出来上がれば、かなり大規模な事業になります。


  太陽光発電のモジュールのコスト競争では中国勢に負けているが、コストダウンを実現する工法の開発や、大型発電所の開発、保守運用に加え、電力取引の要となる専用装置の量産や普及などでビジネスチャンスは大きい。


── 21年3月期の売上高2兆円、税引き前利益3000億円を目標に掲げました。


 谷本 目標に到達するには売上高で5000億円の上積みが必要ですが、半分にあたる2500億円程度はM&A(企業の合併・買収)で実現したい。最近2年間は、約1000億円ずつのM&Aを実施しており、このままのペースなら達成できると思います。既存の事業でも部品事業を中心にさらなる成長を期待している。売上高2兆円という数字は簡単ではありませんが、的外れだとも思っていません。


── コスト削減にも力を入れていますね。


 谷本 生産部門では、徹底した原価低減や生産性倍増への取り組みを加速します。17年9月に開設したAI(人工知能)ラボや、17年10月に開設したロボット活用センターは大きな効果が期待できます。製造コストの削減にAIを活用する試みは、私がファインセラミック事業本部長時代に始めました。IBMの協力でデータサイエンティストを置き、ある製品の特定の工程のデータを解析したところ、10年間変化がなかった歩留まり率が6%向上しました。AIを使って莫大(ばくだい)な変動要素を多元解析すると、人間の頭では気が付かなかった要素が、歩留まりの改善に効果があることが分かったのです。「これは使える」と確信しました。


  AIやロボットは、学習しながら精度を高めていきます。テクノロジーの活用で生産計画の精度向上も期待できます。
 (構成=小島清利・編集部)

 

  ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか


A セラミックの製造プロセスを大掛かりに変えるプロジェクトのリーダーをやっていました。苦労しましたが、製造時間の大幅な短縮を実現しました。


Q 「私を変えた本」は


A 影響を受けたのは創業者の稲盛和夫名誉会長の著書です。本から学んだ「利他の心」は、従業員や顧客を大切にする経営の実践に役立っています。


Q 休日の過ごし方


A 会社の仲間たちとゴルフを楽しみます。鹿児島での勤務が長かったので、その頃からゴルフは趣味です。音楽も好きで、ジャズを聴いて過ごします。
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 ■人物略歴
  ◇たにもと・ひでお
 1960年生まれ。長崎市出身。長崎県立長崎西高校、上智大学理工学部卒業。82年京都セラミック(現・京セラ)入社。2014年ファインセラミック事業本部長、15年執行役員、16年取締役を経て、17年4月から現職。58歳。
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事業内容:部品事業、機器・システム事業
 本社所在地:京都市
 設立:1959年4月
 資本金:1157億300万円
グループ従業員数:7万5940人(2018年3月末現在)
 業績(18年3月期、連結)
  売上高:1兆5770億円
  営業利益:955億円