特集:学び直し日本経済 2018年6月19日号

どう違う、景気と経済成長 

「モノは安い方がいいのに」

 

 今の日本は景気が良いのだろうか。日経平均株価は2万2000円を超え、企業も過去最高益というニュースが相次ぐ。企業サイドからみれば確かに景気は良さそうだ。しかし消費者サイドに立てば「実感が湧かない」というのが実態だろう。賃金は、一部の大企業で上がった程度。都市と地方との格差も大きい。


  景気という言葉一つとっても、評価はこれだけ異なる。景気は感性に基づく経済用語だからだ。

 

では景気を語るうえで登場する経済成長とは。いかに景気と関連しているのか。そう簡単には答えられなくなってくる。経済事象は暮らしと密接でありながら、難解で取っつきにくいという印象が強いからだろう。


  取っつきにくさをほぐすには、何が分からないかを知ることから始まる。今春、大学を卒業して架空の大手通信会社JT&Tに就職した九州出身のコータローさん(23)の目を通して見てみると──。

 6月になって、リクルートスーツの学生が目立つようになった。僕も去年は同じ立場だったなあ。第1志望に就職が決まったけど、地元の銀行からも内定をもらっていた。サークル仲間のハルヒコは第1志望の電機メーカーに就職できたし、売り手市場といわれただけあって、仲間の多くは希望の業界に就職できた。

◇「氷河期」今は昔

 

 今春の大学卒業者の就職率は過去最高の98%。「就職氷河期」の2000年(91・1%)や「超氷河期」の11年(91%)の厳しさは伝説になりつつある。

 

  新入社員研修の担当だった人事部の課長は氷河期に就職したって話していたっけ。金融機関の破綻が相次ぎ、就職先がなくなった友人もいたという。「今の方がはるかに景気は良い」って話していたなあ。

コータローさんの情報収集の手段はもっぱらスマートフォン。ニュースは無料通信アプリのサービスを通じてチェックし、朝夕の満員電車の中で読む。

 

  だけどこの前、朝の通勤電車の中で読んだニュースでは、GDP(国内総生産)成長率が2年ぶりにマイナスになった、と書いてあった。成長はマイナスとなっているのに、景気は相変わらず好調と書いてあった。どういうことなんだろう。景気と経済成長の関係って、今一つ分からないなあ(18~21ページ参照)。

 

モノやサービスの値段が上がっている。人手不足を背景とした宅配料の値上げは社会に衝撃を与えた。6月には納豆が10~20%値上がりするなど他の分野にも広がっている。

 

  行きつけのラーメン屋でラーメンとギョーザだけでなく生ビールの値段が上がっていた。実は今、彼女とうまくいってなくて、一杯飲まなきゃやってられない気分。なのに今の給料じゃ我慢するしかなくなった。最近モノの値段が高くなってきた気がする。モノの値段なんて安い方がよいと思うけれど、そうじゃないという議論もあるみたいだ。学生のころから「物価上昇率目標2%」って耳にしてきた。なぜ上がる必要があるのだろう(22~23ページ参照)。

 コータローさんが勤める会社の給料日は毎月25日だ。給与明細を見て、手取りが思ったよりも少ないことに衝撃を受けている。

 

  うちの会社の案内には初任給21万円と記載してあったけど、給料から所得税に厚生年金、健康保険に雇用保険と、こんなにも引かれるとは(30~31ページ参照)。


  親からは貯金を勧められるけれど、金利が低いから利息はほとんど付かないという(24~25ページ参照)。会社の先輩たちは、株価が高い今のうちに、株や投資信託を買った方がいいという(26~27ページ参照)。だけど買った後に下がり始めて、損することになるのは嫌だなあ。それだったら定期預金の方がよいかもしれない。じっくり考えることにしよう。


  そういやハルヒコの会社は過去最高益だったとかニュースでやっていたなあ。円安の方がいいとか言ってたかな(28~29ページ参照)。どれぐらいもらっているのだろう。


  ともかく、週末は彼女を仲直りのドライブに誘わなきゃ。カーシェアを予約しておこう。部長に「車は買わないの?」と聞かれたけど、買おうとは思わない。カーシェアで十分だ(32ページ参照)。僕らの世代は「感覚が変わった」と言われる。給料は昔ほど上がらないっていうのに、そんなにぜいたくできないよ。


 (米江貴史・編集部)
 (古沢佳三・編集部)

週刊エコノミスト 2018年6月19日号

定価:670円

発売日:6月11日