二輪の戦略転換で過去最高益 日高祥博=ヤマハ発動機社長

Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長)

 

── バイクとモーターボートの会社というイメージです。


 日高 売上高ベースで一番大きいのは二輪事業で1兆円強、小型船舶用エンジンを中心としたマリン事業が3000億円超です。ただし、産業用ロボットや電動アシスト自転車などそれ以外の事業でも約3000億円の売り上げがあり、2017年12月期の全体の売上高は約1兆6700億円でした。

── 足元の業績は好調ですね。


 日高 17年12月期は営業利益が1497億円と過去最高を更新しました。特に二輪事業の利益率が伸びたことが寄与しました。


── 理由は。


 日高 二輪の売り上げは、東南アジアを中心とした新興国が約8000億円、日本や欧米などの先進国が2500億円です。新興国の中でも、インドネシア、ベトナム、タイ、フィリピンの4カ国で5600億円超に上り、収益の柱です。約5年前に東南アジアでの戦略を思い切って変えた結果、自動二輪全体の営業利益率がかつては5%だったのが、9%近くに向上しました。


── 戦略の転換とは。


 日高 複数モデルで車体を共有化したことです。東南アジアなどの新興国を中心に、エンジンやフレームの数を絞り込んで共通化しました。その上で、外装は各国の好みを取り込んで車種を増やし、他社とは異なるデザインも投入しました。一つのエンジンで何車種も製造でき、部品調達でもスケールメリットが出ました。
── 市場のニーズに対応したと。


 日高 東南アジアは、かつては「他の人と同じ車種を買っておけばよい」という雰囲気でした。しかし、現在は、収入が伸びて消費行動が変わり、人とは違う個性的なデザインを求めるようになっています。当社は、このような顧客を得意とします。少し高いけれどエレガントなバイクづくりを意識しているからです。


── 国内市場は。


 日高 1980年代の国内販売300万台という時代から縮小の一途で、10分の1近くになりましたが、原付きバイクを除いてほぼ下げ止まりました。車検が不要の250CCクラスに、これまでは大型二輪にしか採用しないようなスポーツモデルを投入しました。こうした活性化の努力で購入者が戻ってきています。

 

  ◇船舶エンジンは高収益

 

── マリン事業は。


 日高 プレジャーボートや釣り船、漁船用のエンジンユニットを製造しています。ユニットには、床下に設置する船内機と、船の後端に付ける船外機の2種類があります。世界的に見ればプレジャーボートの保有台数は大きく増えていませんが、船外機の需要が伸びており、しかも1基当たりの馬力を大きくする傾向にあります。また、1隻に設置する船外機の数自体も増えており「4基掛け」という船も出てきています。当社は、馬力のある大型船外機に強みを持ちます。プレジャーボートの主力市場である北米・欧州で、当社は150馬力以上の大型船外機で45%のトップシェアを有しています。トップメーカーゆえ高い信頼を得ており、営業利益率は20%に近い水準で推移しています。


── なぜ船外機の需要が伸びているのですか。


 日高 船外機だとボートの室内空間を広く取れるし、外に付いているので維持管理も楽だからです。さらに、購入コストでも船内機より低く済みます。


── その他事業にはどんなものがありますか。


 日高 産業用機械・産業ロボは利益率が20%超です。まず、電子回路などの所定位置に高速でチップを埋め込む「表面実装機」を製造しています。表面実装機は半導体やスマートフォン需要に支えられ、中国からの注文が大きく伸びています。産業ロボでは、直線的な動きをする直交ロボットや、水平方向の動きを得意とするスカラ型(水平多関節)などを製造しています。バイクやエンジンを作る過程で、自前でロボット製造やラインの自動化に取り組んだのが源流です。産業機械を専門とするメーカーとは異なる視点のアイデアが詰まっています。


── ヤマハ独自のアイデアとは。


 日高 画像を認識するイメージセンサーを自社製造していることです。ロボやラインの作業スピードを上げようとすると、画像認識の能力を上げなければなりません。当社の技術者は10年以上前から「イメージセンサーを内製化しないと、結局は技術の肝を他社に握られるのではないか」と気付いていたのです。


── 電動アシスト自転車も手がけていますね。


 日高 電動アシスト自転車は、当社が世界で初めて開発し、94年に発売しました。モードやギアを変えるコントローラー、動力を補助するモーター、バッテリーを自社製造して、ユニットとして販売しています。当社は、こぐ力を違和感なく伝えるモーター制御を得意としています。


── 開発のきっかけは。


 日高 80年代後半に原付きにヘルメット着用が義務づけられたことです。原付きの需要減が懸念される中、社内で「何か代替できる乗り物はないか」と検討した結果、アイデアが出たのです。しかし、商品にして世に出すまでには、警察当局との話し合いもありました。ある程度のスピードに達したら電動アシストをしない、人の力1に対して1しかアシストをしない、といった制御の固まりのような技術を盛り込みました。市場のニーズを取り込み、作り込んでいく顧客対応力は、当社の強みです。


 (構成=種市房子・編集部)

 

  ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか


A 前半はフランス駐在、後半は二輪事業の企画でした。通貨危機に見舞われて、アジア市場で二輪が売れなくなり、立て直し策を懸命に考えました。当時の上層部が現場のアイデアを聞いてくれた経験は、今、社長として「若い人の提案は受けよう」という心がけにつながっています。


Q 休日の過ごし方


A 下手ですがゴルフです。誘われると断れません。
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 ■人物略歴
  ◇ひだか・よしひろ
 1963年生まれ、愛知県出身。名古屋市立桜台高校、名古屋大学法学部卒業後、87年、ヤマハ発動機入社。主に二輪事業畑を歩み、2014年執行役員、17年1月、企画・財務本部長。17年3月、取締役、上席執行役員。18年1月から現職。54歳。
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事業内容:二輪、小型船舶エンジンなど
本社所在地:静岡県磐田市
 設立:1955年7月
 資本金:857億円
 従業員数:5万3579人(2017年12月末現在、連結)
 業績(17年12月期、連結)
  売上高:1兆6700億円
  営業利益:1497億円