社名変更でグローバル化へ総仕上げ 島村琢哉=AGC社長  

interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

 

── 7月1日にAGC旭硝子からAGCに社名を変更します。狙いは。


 島村 ガラス会社のイメージが強いですが、実は化学やセラミックス事業も歴史は長い。2002年から進めているグローバルグループ一体経営の総仕上げと考えています。旭硝子の頭文字をとったAGCはアドバンス(前進・進歩した)、ガラス、ケミカル(化学)、セラミックの頭文字でもあります。


── 歴史ある社名を変更することに抵抗はありませんか。


 島村 110年前に日本の近代化に必要なのがガラスの技術でした。そうした歴史を振り返り、創業者の思いを社員一人ひとりが考え直しました。それは、世の中に変化が起こるときに必要なもの、具体的には素材やソリューションを提供することです。社名が変わっても、ぶれない軸を持ち続けます。

 

── とはいえ、現在でも売上高の半分はガラス事業ですね。強みは何ですか。


 島村 高い省エネ性能を実現するコーティング技術が強みです。多彩な製品群を擁しており、建築用ガラス市場の世界シェアはトップクラスです。国内でいち早く、(板ガラスに特殊金属膜をコーティングした)Low─Eペアガラスを投入しました。例えば、「サンバランス」は、夏季に頻繁に冷房を使用する地域に適応した「遮熱タイプ」と、冬季に頻繁に暖房を利用する地域に合った「断熱タイプ」を選べます。

 

◇半導体関連に期待

 

── 電子事業は、液晶テレビの普及が一巡し、ディスプレー用ガラスに代わる主力製品が必要ですね。

 

島村 新しい成長分野としては、半導体製造・部材関連に期待しています。なかでも、7ナノ(ナノは10億分の1)メートル世代の微細な回路パターンを描けるEUV(極端紫外線)露光用フォトマスクブランクスは、AGCのコア技術を結集した複合部材で、世界で唯一、ガラス材料から被膜までの一貫生産が可能です。供給体制を大幅に増強します。


── 化学品事業は好調です。


 島村 フッ素化学品は、半導体・自動車・エネルギー・建築など、多くの分野で使用されるフッ素樹脂・ゴムが強みです。シンガポールのマリーナベイ・サンズは船の形をした最上階部分がシンボルですが、外装パネルには当社の塗料用フッ素樹脂「ルミフロン」が使用されています。屋外でも長期間劣化しない高い防食性と耐候性が特徴です。


── 他に国際的な建造物に採用されているものは。


 島村 サッカースタジアムの「アリアンツ・アレーナ」(ドイツ・ミュンヘン市)の外観にはフッ素樹脂フィルムが使われています。側面と屋根部分のセルに2重構造のフィルムをはめ込み、そのクッション内部を空気圧力で膨らませる構造で、当社のフィルムが使われています。


── 海外では東南アジアに力を入れている。


 島村 東南アジアでは、カセイソーダのナンバーワンメーカーとして高い存在感を確立しています。1960年代にタイ、80年代にはインドネシアで電解工場を稼働させるなど、早期に国際展開を進めました。現在はさらに、近年の東南アジア市場の需要拡大に対応し、インドネシアでの能力増強を進め、14年には現地の有力な塩ビメーカーを傘下に収めてベトナムにも進出しました。


── 18~20年の中期経営計画の課題は。

 

島村 体質強化はおおむね完了したので、20年までの中期経営計画では成長戦略を加速させます。25年に目指すべき理想の姿を打ち出し、過去最高の営業利益を更新する(2292億円以上)を掲げました。そのための礎を築きたい。

 

  ◇自動車分野などに注力

 

── 注力する事業分野は。


 島村 モビリティー、エレクトロニクス、ライフサイエンスの三つを戦略事業と位置づけ、高成長・高収益事業を創造します。モビリティーは自動運転やつながるクルマ、情報表示の進化、環境車など大きな変化の波に対応します。乗用車のフロントガラスはさまざまな機能を搭載できる「一等地」です。高機能化競争をリードしていきたい。


── 通信インフラも進化します。


 島村 次世代高速移動通信規格「5G」の時代になると、自動車や電車など、さまざまな乗り物、移動手段を舞台に、開発競争が進みます。5Gは高速で大容量だが、届く距離が短い。そのため、建物などの中に、アンテナを設けたり、コンクリート壁やガラスがある中で、通信機能をどう確保するかが課題です。当社はガラスにアンテナを埋め込み、デザインを損なわずにクリアな通信を可能にするなど技術力を競うことになり、当社にとっては大きなチャンスだと考えています。


── ライフサイエンスの強みは。


 島村 フッ素をベースにした技術力が強みです。フッ素が導入された医薬品や農薬は増加の一途をたどっています。医薬品の原薬・中間体やバイオ医薬品の受託生産など既存の事業を拡大させていきたい。再生医療など新しい分野でも、さらなる事業機会を探っていきたい。


── 新規事業で期待できるのは。

 

島村 商業施設や公共施設などへのデジタルサイネージ (電子看板)に力を入れています。ガラスに液晶ディスプレーを直接張り合せることにより、従来のデジタルサイネージに比べ大幅に見やすくなりました。反射面が減り、高コントラストでクリアな映像表示を実現できます。


 (構成=小島清利・編集部)

 

  ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか


A 大阪支店で営業をしていました。お客様との良好な人間関係を強く意識していました。


Q 「私を変えた本」は


A 小林秀雄の『考えるヒント』、遠藤周作の『沈黙』『死海のほとり』は、本質を考えるきっかけになりました。
Q 休日の過ごし方


A 仕事を忘れて、ゴルフや読書でリフレッシュします。
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 ■人物略歴
  ◇しまむら・たくや
 1956年生まれ。神奈川県立鎌倉高校、慶応大学経済学部卒。80年、旭硝子入社。主に化学分野を歩み、2010年、執行役員化学品カンパニープレジデント、13年常務執行役員電子カンパニープレジデントを経て、15年から現職。神奈川県出身。61歳。
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事業内容:ガラス、電子、化学品、セラミックス
本社所在地:東京都千代田区
 創業:1907年9月
 資本金:908億7300万円(2017年12月末現在)
 従業員数:5万3224人(17年12月末現在)
 業績(17年12月期、連結)
  売上高:1兆4635億円
  営業利益:1196億円