「挑戦と発見」で社会問題を解決 上原弘久=T&Dホールディングス社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

 

── T&Dの特徴は。


 上原 国内の生命保険会社として初めて、2004年4月に持ち株会社の「T&Dホールディングス」を設立し、上場しました。中核となる太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命の3社はそれぞれの市場で独自性と専門性を発揮していることが最大の強みです。


── 3社のターゲットはどのような市場ですか。

 

上原 太陽生命は「家庭」、大同生命は「中小企業」、T&Dフィナンシャル生命は銀行の窓口販売・来店型保険ショップなどの「乗り合い代理店」をターゲットにしています。ホールディングスの仕事は、3社の独自性と専門性を生かし、グループ全体としての最適な形を追求して、グループ力を引き出すことです。


── 太陽生命の「ひまわり認知症治療保険」が話題です。

 

 上原 現行の中期経営計画(16~18年度)では、今後10年を見据えた「成長領域の拡大」を最大のテーマに掲げ、「シニアマーケットへの開拓・深耕」などに取り組んでいます。「ひまわり認知症治療保険」は16年3月、シニア層に向けた「100歳時代」シリーズの第1弾として発売しました。持病や過去に病気をしたことのある人でも加入しやすくした「選択緩和型」商品で、認知症について保障する保険は業界初です。認知症にかかるのは高齢者が多く、選択緩和型のニーズは高いからです。

── どのくらい売れていますか。


 上原 累計販売数は今年5月に35万件を突破し、ヒット商品となっています。その原動力は、商品力のほかに、専門知識を持っている事務員が、お客様を直接訪問し、保険金や給付金などの支払い手続きをサポートする「かけつけ隊サービス」の存在があります。全国約150の拠点の仕事をお客様へのサービスに力点を置き、これまでやっていた事務をIT(情報技術)で効率化して、本社で一括管理するという戦略がうまくいっています。


── 大同生命では、中小企業の従業員の「健康」を支援しているとか。


 上原 「健康サポートプログラム」というサービスですね。健康診断の受診管理など、大手企業では浸透してきましたが、手の回らない中小企業も少なくありません。健康診断の受診を促して、経営者や従業員の生活習慣病などの発症リスクを分析し、食事管理と栄養士のアドバイスや毎日の運動量を自動記録するなどネット上のサービスで支援します。


── どれくらいの中小企業が利用していますか。


 上原 約3500件です。大同生命は37万の契約企業を抱えてるので、もっと多くの企業に参加してもらいたいと考えています。長く働くためには健康であることが必要です。従業員への健康投資は、従業員の定着率向上や欠勤率低下など、生産性の向上や業績・企業価値の向上につながっていくという「健康経営」の考え方を普及させたいですね。


── 利用拡大に向けてどのような取り組みを実施していますか。


 上原 例えば、ウオーキングキャンペーンで、期間中の歩数をランキングし、それに応じてポイントがもらえます。また、140社を超える企業から1万点超の商品・サービスを提供してもらい、プログラム内のサイトからネットショッピングのように優待価格で購入できたり、ポイントを利用できたりします。

 

  ◇ペット保険に成長余地

 

── 19年度からの中期経営計画の戦略は。


 上原 数字や施策はこれから詰めていきますが、中核の生保3社に加え、運用会社の「T&Dアセットマネジメント」、ペット向け保険を展開する「ペット&ファミリー少額短期保険」の2社の成長を促し、グループ力の底上げを図ります。チャンスがあれば、新しい事業会社への投資も検討していきます。


── ペット保険は成長が期待できますか。


 上原 ペット&ファミリー少額短期保険の商品「げんきナンバーわんスリム」は、年間の支払い限度額を上限に、入院日数や手術の回数などに制限なく補償するのが特徴です。T&D保険グループの傘下にいるという信用力を背景に、ペット保険業界3位に位置しています。全国の犬・猫のペット飼育頭数は約1844万頭(ペットフード協会調べ)ですが、日本のペット保険の加入率は数%にとどまっています。まだ、成長の余地はあると考えています。


── 生保業界でいち早く株式会社化しました。どのような効果がありましたか。


 上原 投資家や株主から意見を聞き、経営の場にフィードバックしたり、ガバナンス(企業統治)に反映させるといった規律ある経営が強化されました。説明ができない経営やあいまいさがあれば、株主から厳しく追及されます。企業価値を示す指標を用いたり、リスク管理の体制を強化するなどし、透明性の高い経営につながっています。


── 今後の生保経営に求められているものは。


 上原 08年のリーマン・ショック以降、投資家の企業を見る目は変わっています。社会にとって必要な存在かどうかで、中期的に成長する会社を見極めようとしているのです。今年は太陽生命と大同生命の提携によるグループ結成から20年、経営統合してから15年目の節目です。社会問題の解決に役立つ会社として、T&Dグループの経営理念にある「Try&Discover(挑戦と発見)」の精神で臨みます。


 (構成=小島清利・編集部)

 

  ◇横顔

 

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか?


A ロンドン駐在から帰国し、外国為替市場を担当していました。1ドル=80円まで円高が進むなど、人知を超える相場の怖さを知りました。


Q 「私を変えた本」は


A スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』です。リーダーは誠実で紳士であることが大事で、私もそうなりたいと思っています。


Q 休日の過ごし方


A 歴史小説を読んだり、落語を聞きにいったり、リフレッシュします。
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 ■人物略歴
  うえはら・ひろひさ
 1962年生まれ。長野県出身。長野県須坂高校、学習院大学経済学部卒業。84年太陽生命入社。2007年T&Dホールディングス経営企画部長、17年副社長を経て、18年4月から現職。56歳。
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事業内容:生命保険業
 本社所在地:東京都中央区
 設立:2004年4月
 資本金:2071億1186万円(2018年3月末)
 従業員数:1万9757人(18年3月末、連結)
 業績(18年3月期、連結)
  経常収益:1兆9283億円
  経常利益:1564億円