付加価値高い鋼材でニーズを先取り 進藤孝生=新日鉄住金社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

 

── 来年4月1日「日本(にっぽん)製鉄」に社名が変わります。狙いは。

 

進藤 理由は二つあります。子会社の日新製鋼を完全子会社とし、山陽特殊製鋼の子会社化も検討しています。日本の鉄鋼を支えてきた国内有数の企業が新日鉄と住金以外にも入ってきます。社名を並べるわけにはいかないので、包括した名前が必要になってきました。

 

 もう一つの理由がグローバル化です。米国やブラジルでも事業を展開していますが、スウェーデンの特殊鋼メーカーのオバコ社を買収し、インドでもアルセロール・ミタル(ルクセンブルク)と共同で買収を決めています。海外での事業展開が増えており、我々が日本発祥ということをわかりやすく海外に向けて発信する必要があると判断しました。

 

 鉄鋼業界は世界的なM&A(企業の合併・買収)が進む。2017年の世界粗鋼生産ランキングでは、新日鉄住金は日新製鋼の子会社化により世界3位になったが、首位アルセロール・ミタルの半分にも満たない。

 

── 鉄鋼業界の市況は。

 

進藤 大変良いです。15年から16年は、中国が4億トンを過剰生産し、過度に安い価格で輸出していたので大変でしたが、中国政府が生産能力を削減するなど、適正な需給関係になりました。原料も石炭の価格の乱高下がありましたが、落ち着いています。

── 足元の業績はいかがですか。

 

進藤 数字だけ見れば、17年度は連結ベースで売上高は5兆6686億円、経常利益は2975億円と増収増益でした。しかし、生産量は前年度より約200万トン減少しています。大分製鉄所の火災や設備事故などのトラブルで減産せざるを得ず、不十分な業績でした。事業環境は大変良いので、今年度こそ生産量を回復したいと思っています。

 

── あくまでも生産量世界トップを目指しているのですか。

 

進藤 規模の面で順位を上げることに意味があるとは思いません。日新製鋼との経営統合は、相乗効果を追求しました。また、オバコの買収は特殊鋼の強化という戦略によるものです。そういう個別の戦略で、結果として規模が大きくなっています。規模よりは効率性、収益性の面で競うべきだと考えています。

 

新興国で鋼の自国産化


── なぜ、合併が盛んになっているのでしょうか。

 

進藤 要因の一つが、新興国における鋼の自国産化です。かつては鋼を輸入して鋼板や鋼管などの製品に加工していましたが、今は鉄鉱石を溶かして鋼を作り出す段階から自前で行うところが増えています。そこに雇用も生まれてくるため、自国産化のニーズは高くなっています。中国をはじめ、インドやインドネシアなど鋼を自国産化する動きが一気に広がりました。今は世界中の需要と、新興国での鋼の自国産化に対応しなければならなくなりました。成長していくには海外へ進出せざるを得ません。

 

── 合併によって、どのような相乗効果を期待していますか。

 

進藤 海外進出で新たにプラント(製鉄所)を設置して製品を作るのは非効率ですし、生産能力が過剰になります。ならば、売りに出る会社に出資したり、買収した方が時間的にも手っ取り早いです。あるいは買収して大きいものにした方が、次の日からキャッシュを生みます。当社がM&Aを進めるのはそのためです。

 

── 国内需要は今後しぼみ、20年の東京五輪後は厳しいという見方があります。

 

進藤 国内需要が減り、全体として縮小すれば生産能力を下げる必要はあります。ただ、付加価値の高い製品に対する需要は減るどころか、逆に増えると思います。例えば電気自動車(EV)の場合、軽量化のニーズが増え、軽い素材が必要とされるかもしれません。また、アルミや樹脂など他の素材と組み合わせたニーズも増えるでしょう。

 

── 米国が鉄鋼に25%の関税を導入しました。影響は。

 

進藤 日本から米国への輸出は170万トンで、当社はそのうち70万トンです。競争力のある長いレールなどほとんどが米国で生産できないものです。関税がかかっても顧客は、買うと言ってくれています。影響は出ていません。ただ、欧州連合(EU)は心配です。鉄鋼製品についてセーフガード(輸入制限)を検討し始めたといいます。他の国も同様に始めると、鉄鋼業界が縮小する恐れがあります。

 

── 今後はどのような取り組みを進めますか。

 

進藤 今年から20年までの中期経営計画を策定しました。「つくる力を鍛え、メガトレンドを捉え、鉄を極める」という副題を付けました。つくる力とは成長期に作った生産設備と、世代交代に伴い若くなった人材の再構築です。

 

 メガトレンドは三つ。鉄の需要がある業界の技術革新を先取りして対応しなければなりません。例えば、EVでの車体の軽量化に必要な素材を提案する必要があります。さらにIoT(モノのインターネット)など高度先端技術への対応、そして後進国の自国産化への対応をしていきたいですね。

 

(構成=米江貴史・編集部)

 

横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A 30歳から32歳まで米国に留学していました。帰国後は本社の総務部で経営多角化に携わりました。スペースワールド(北九州市、閉園)の事業部を作ったりしました。

 

Q 「私を変えた本」は

 

A 高校時代に読んだ池田潔『自由と規律』です。英国のパブリックスクールでラグビーに取り組んだ経験から「英国は自由を教える前に規律を教える」ということ記しています。チームワークやリーダーシップを考えるようになったのは、これを読んだのがきっかけで、ラグビーを始めることにもなりました。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 健康管理が大切だと思うので、付き合いのゴルフ以外はウオーキングやジムに行って体を動かしています。

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しんどう・こうせい
 1949年生まれ。秋田県出身。秋田県立秋田高校、一橋大学経済学部、米ハーバード大学大学院ビジネススクール卒業。73年4月新日本製鉄入社。広畑製鉄所(兵庫県姫路市)総務部長、本社経営企画部長、新日鉄住金代表取締役副社長などを経て2014年4月から現職。68歳。

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事業内容:製鉄、エンジニアリング、化学などの事業

本社所在地:東京都千代田区

設立:1950年4月

資本金:4195億円

従業員数:9万3557人(2018年3月末、連結)

業績(17年度、連結)

 売上高:5兆6686億円

 営業利益:1823億円