特集:新基準が分かる役立つ会計 2018年8月28日号

リース基準変更の波紋

 実務煩雑化で対応急ぐ企業

 

 国際会計基準(IFRS)の適用拡大の流れにリース業界が動揺している。

 

 リース活用を縮小する動きが広がると、経済成長に大きな影響が及ぶことが懸念される──。リース会社でつくる「リース事業協会」は7月18日、ホームページで「わが国リース会計基準の検討に対する見解」を公表、リースを巡るIFRSの会計基準変更が日本基準にも波及する動きをけん制した。

 

 工場設備からパソコンまでさまざまな機器を企業が貸し出す「オペレーティングリース」は、現在の日本の会計基準ではリース料を費用として損益計算書に計上するだけで、資産として貸借対照表に記載する必要はない。会計処理が簡単な上、残存価格の設定で初期費用が抑えられるため、経理担当人員が少なく、資金力の乏しい中小企業に利点がある。

 ところが、IFRSでは2019年から、オペレーティングリース対象物の資産計上が必要となった。資産であれば減価償却が必要で、支払ったリース料についても元本返済と利息を分けて計上する必要があり、会計処理が煩雑になる。

 

 日本の会計基準を作る「企業会計基準委員会」(ASBJ)はリース会計について国際的な整合性を図るため、6月から基準改訂を進めるかについて検討を開始した。リース事業協会は「近年、増加傾向にあるオペレーティングリースが使いづらくなることで、設備投資が減少する可能性がある。コストとベネフィット(利益)の観点などからIFRSと整合性を図る必要性はない」と主張する。

 

 野村証券の野村嘉浩・エグゼクティブ・ディレクターは「リース資産は固定資産のような台帳管理をしていない企業が多い。減価償却などのためには一つ一つのリース資産の詳細を把握する必要があり、大変な作業となる」と、実務的な問題を指摘する。大企業では営業所単位で地元のリース業者と契約しており、本社は件数や金額程度しか把握していないケースが多いといい、「払ったリース料を経費で落としていくこれまでの簡単な実務とは全く違い、衝撃は大きい」と話す。IFRSを採用している各企業は「現在部署ごとにリース資産を精査している」(大手自動車部品メーカー)などと対応を急ぐ。

 

続く統一化の動き


 1990年代後半の橋本龍太郎政権下でスタートした会計ビッグバンにより、00年以降、連結決算、時価評価など新しい会計制度が次々に導入された。IFRSの導入はその総仕上げともいえる動きだ。東京証券取引所に上場するIFRS適用会社は年々増加し、18年6月末時点では今後の適用会社も含めて204社に上る(図)。時価総額に占める割合は3割超だ。18年以降も、IFRSの基準変更は相次ぎ、日本基準でもそれに沿った対応が行われる項目もある(表)。こうした会計基準の国際的な統一の動きはもはや不可逆だ。

 

 だが、日本におけるIFRSはあくまでも任意適用で、導入当初に検討されていた強制適用の議論は進んでいない。野村総合研究所の三井千絵・上級研究員は「複数基準の混在は投資家も含めた関係者の不利益となる。IFRSを一度適用し始めたのであれば、金融庁は強制適用を検討すべきだ」と語る。日本基準の採用企業も、IFRSへの対応を急ぐ必要がありそうだ。

 

(松本惇・編集部)

(米江貴史・編集部)

週刊エコノミスト 2018年8月28日号

定価:670円

発売日:8月20日