特集:商社 7社の野望 7つの不思議 2018年9月25日号

不思議1 最高益どう稼いでいる 

資源、機械、生活関連 

7社七様の得意分野

 

丸紅の株価が8月29日に年初来高値(934円)を付けた。年初来最安値(3月26日=742円)から実に25%の上昇だ。9月に入っても、過去10年間の最高値圏で推移している。

 

 きっかけは、8月上旬に発表された2018年度第1四半期(4~6月)決算だ。連結最終利益は前年同期比61%増の868億円で、四半期利益としては過去最高益だ。米国農資材会社「ヘレナ」の販売が好調だったことや、パルプの市況好転で素材分野が伸長した。今期(19年3月期)は過去最高益の2300億円を見込んでおり、最初の3カ月で4割近くを稼いだことになる。社内でも当初、この数字を見た社員にどよめきが起きたという。

 三菱商事も、18年度第1四半期決算は、四半期としては過去最高の2043億円(前年同期比73%増)だった。増額幅は、四半期だけで865億円という驚異的な数字だった。金属、エネルギー、機械(自動車、船舶、産業機械など)の各分野で大幅増益だったのが寄与した。

 

 大手商社5社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)は18年3月期、三井物産を除く4社が過去最高益を更新した。三井物産も過去最高(12年3月期)に迫るレベルだ。上げ潮基調なのは共通だが、収益構造は各社で異なる(16~17ページの図1)。

 首位の三菱商事は、金属、エネルギーという資源関連の二つの事業分野の割合が半分を占める。特に金属だけで2600億円超の利益を挙げた。また、機械は852億円、生活産業(食料品、小売りなど)は747億を稼いだ。同社は、金属など市況に左右されやすい事業と、生活産業など、劇的増益はないが、安定収益が見込める事業をまんべんなく網羅し、一つ一つの事業分野の規模が大きいのが特徴だ。

 

 2位の三井物産は鉄鋼製品、金属資源、エネルギーという資源関連の3事業分野が占める割合が他社に比べて大きい。資源市況の波を良くも悪くも受けやすく、昨年の市況高騰の追い風を受けやすかった。一方、生活産業は赤字で、得手不得手がはっきりしている。

 

 3位の伊藤忠商事は、三井物産と逆だ。食料、住生活、機械、金融・情報(信販事業やITサービス)など生活密着型、安定収益型事業に強い。

 

メディア、電力も


 住友商事はケーブルテレビ「JCOM」やITサービス「SCSK」などメディア事業に強い。丸紅では「電力・プラント」の割合が大きいのが目を引く。発電所を建設して、15~20年間発電事業を担い、売電収入でまかなう「独立系発電事業(IPP)」を得意としており、持ち分発電量は商社ナンバーワンだ。

 

 総合商社の源流は、商品のトレード(取引仲介)だ。食品、素材、自動車、航空機、防衛機器などあらゆる商品について、メーカーと買い手の間に入り、卸売りや取引仲介を担っていた。しかし00年代に入って、メーカーが直販体制を確立し、ITシステム普及による物流仲介も充実してくると、商社のトレード機能は狭まっていった。

 

 そこで商社はトレードの知見を生かして、事業や会社に投資して人を送り込み、出資比率に見合った利益(取り込み利益、持ち分法利益と呼ばれる)を取り込む投資会社に変遷した。たとえば、石油やガスの輸入を手がけていた部署には、優良鉱区の情報が入り「どの資源案件は収益性が高いか」という目利き力が育つ。繊維や食料の卸売りをしていれば、物流や小売りのノウハウも見えてくる。この結果、各社は資源開発やコンビニエンスストア会社に投資して、事業を直接手がけるようになった。

 

 この間、00年代後半には各社が競うように大型資源開発に出資した。しかし15~16年、資源価格の下落を背景に各社が資源事業で巨額減損を計上した。

 

 減損から2年が経過し、再び成長している商社業界。成長の源泉は、得意分野に注力して投資先を選んでいることにある。その結果が、収益構造の違いだ。強い分野をより強化して、今期は大手7社(大手5社プラス豊田通商、双日)中6社が最高益を見込む。

 

 順風満帆に見える業界ではあるが、割安な株価に苦悩し、会社組織も制度疲労を起こしている。業界外から見れば「不思議」に見えるこれらの課題や現状七つをあぶり出すとともに、大手7社が期待する「収益の種」を紹介したい。

 

(種市房子・編集部)

週刊エコノミスト 2018年9月25日号

定価:670円

発売日:9月18日