アルパインと経営統合でソフト強化 栗山年弘=アルプス電気社長

Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

 

── アルプス電気はどのような製品を作り、どんな機器に搭載されていますか。

 

栗山 もともとは電子部品、スイッチなどを製造していました。1970年代から80年代にかけてテレビやビデオなど日本の家電が広がり、部品メーカーとして成長しました。その後はパソコンやデジタル家電、自動車、スマートフォン(スマホ)のスイッチや人が操作するところに当社の製品が多く使われています。

 

── 2017年度は営業利益が前年度比62%増でした。好業績の原因と今後の見通しは。

 

栗山 スマホの市場が拡大し、併せて高性能化、高付加価値化したことで当社の部品が活躍する機会が増えました。エレクトロニクス技術を使った自動車が増え、関連のビジネスも増えています。この二つの要因で業績が伸びました。スマホの需要は頭打ちでしょうが、中の部品や性能は進化するので、当社の市場はまだ伸びる余地があると思っています。

 

スマホのピント合わせに強み


── スマホ用部品の強みとは。

 

栗山 世界の大手スマホメーカーは月間1000万~2000万台の製品を作り、半年から1年ごとに新モデルを出します。部品メーカーは、このスピードに合わせて製品を進化させる必要があります。また、当社は生産量を需要に応じて一気に引き上げる能力があります。人海戦術ではできません。生産力と技術力が顧客に認められてきました。

 

── スマホカメラのレンズのピント合わせや手ぶれ補正に使われる部品が好調です。

 

栗山 スマホのディスプレーの高画素化が一段落し、カメラの進化が消費者に訴求しました。高画質化、レンズを二つにした「デュアル化」、手ぶれ防止など性能向上が続いたことが、当社の製品がよく売れている背景です。そこに使う部品を「アクチュエーター」と呼んでいます。製造には高度な技術が必要です。

 

── 来年1月に、カーナビなどを手掛けるアルパインと経営統合します。同社はアルプス電気の子会社ですが、あえて経営統合する狙いを教えてください。

 

栗山 アルパインの株式を約41%保有していますが、東証1部上場の同社は、我々以外の株主の利益も考える必要があります。以前から連携、協力してきましたが、お互いに協業するにはその都度、契約を結ぶ必要があります。そのことで経営のスピードが低下します。ともに車載関連の製品を扱っているので、独占禁止法上の制約もあり、別々の営業体制を持つ必要があるなど、非効率でした。技術革新の競争に勝ち残るために統合することにしました。

 

── アルパインに出資している香港の投資ファンドが、統合での株式の交換比率(アルパイン株1株にアルプス株0・68株を割り当て)について、価値を低く評価していると異議を唱えています。交換比率の見直しは考えていませんか。

 

栗山 アルパイン株主とアルプス電気株主との利益相反の問題を回避するため、中立的な外部機関によって企業価値を算定して、交換比率を決めました。比率の見直しは考えていません。

 

自動車の構造変化に危機感


 近年自動車産業では、通信でつながる「C=コネクテッド」、自動運転の「A=オートノマス」、所有せず共有する「S=シェアリング」、電動化の「E=エレクトリック」の各頭文字を組み合わせた、「CASE(ケース)」と呼ばれる変化の波が起きてる。

 

── 車載の電子部品、カーナビなどの市場をどうみていますか。

 

栗山 今話題のCASEに向けて、二つの変化が起きようとしています。一つはクルマにエレクトロニクスが従来にも増して使われること。もう一つはソフトウエアの比重が高まることです。アナログ家電がデジタル家電に移行したような変化です。エレクトロニクスがクルマに多く搭載されることはチャンスですが、米国のIT企業がこの分野に進出し、ソフトの比率が高まることは確実です。日本企業が得意とするものづくりの力、ハードウエアの擦り合わせの技術だけだと勝てないという危機感があります。

 

── アルパインがソフトに強いとは、どのあたりを指しているのですか。

 

栗山 アルパインは、かつてのカーオーディオの世界から、車載向け情報機器へと軸足を移し、エンジニアは8~9割はソフト系です。ただ、基幹部品は持っていないので、単なるシステム、ソフトの技術だけでは米国企業には勝てません。アルプス電気は部品メーカーで、生産技術を含めてものづくりの会社だからソフトは弱く、8割はハードのエンジニアです。両社が統合することで、弱点を補完する狙いがあります。

 

── 統合後の中長期的目標で、売上高を1兆円(18年度予想8790億円)に引き上げ、新規事業創出に1500億円と掲げていますが、達成時期は。

 

栗山 売上高1兆円は6年後の24年度ごろです。新規事業の1500億円はCASE関連の新商品を想定しています。

 

── 米国による中国製品への追加関税の影響は出ていますか。

 

栗山 影響はあります。金額は公表していません。大きくはないですが、小さくもありません。

(構成・浜田健太郎=編集部)

 

横顔


Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

 

A ずっとエンジニアでした。バブル崩壊でリストラがあって、辞める上司が結構いました。30代前半で部長になり、ハードディスクドライブの磁気ヘッドを開発。リーマン・ショック前までは花形商品でした。

 

Q 「私を変えた」本は

 

A 本はたくさん読みますが、一つに特定できません。海外ミステリーはよく読みます。

 

Q 休日の過ごし方

 

A 街歩きです。地方の工場勤務が長かったため、東京にはいろいろ発見があります。

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 ■人物略歴

くりやま・としひろ
 1957年生まれ。京都大学理学部卒業、80年アルプス電気入社。2004年取締役、11年常務を経て12年6月から現職。栃木県出身。61歳。

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事業内容:電子部品の開発、製造、販売

本社所在地:東京都大田区

設立:1948年11月

資本金:387億円

従業員数:4万2289人(2018年3月末、連結)

業績(18年3月期、連結)

売上高:8583億1700万円

営業利益:719億700万円