意外と知られていない学習塾にまつわる「紙の問題」にデジタル化の救いを

POPER代表 栗原信吾 2022.03.31

栗原慎吾 POPER代表 塾講師のデスクから紙を消す

 学習塾の面倒な紙の業務を一元でデジタル化管理するシステムを提供する。

(聞き手=白鳥達哉・編集部)

 予備校や学習塾の講師が抱える紙に関わる業務をデジタル化し、一元管理できる業務支援システム「Comiru(コミル)」を開発・提供しています。

 塾講師が抱える仕事は、子供に勉強を教えるだけではありません。保護者への事務連絡、各生徒への授業の割り当て、アルバイト講師のシフト作り、成績・請求・勤怠の管理など、数々のバックオフィス業務があり、これが塾講師業務の7割を占めるといわれています。これらの業務は各種プリントや書類を通して行われており、日々、膨大な紙の作業に追われているといっても過言ではないでしょう。

業務の状況を数値化し、データとしてまとめておくことも可能だ POPER提供
業務の状況を数値化し、データとしてまとめておくことも可能だ POPER提供

 コミルでは専用のチャットを介して、保護者に指導報告の連絡ができるほか、教室への入退室通知、進捗(しんちょく)報告の共有、時間と空き教室を基にした生徒と講師のマッチングなど、授業以外の事務業務を一つのアプリで管理することが可能です。また、本部会社が別にあるような大手の塾企業に特化した「コミルプロ」、オンライン授業に特化した「コミルエアー」など複数のタイプを用意しています。

 導入コストは初期費用として1教室3万円、生徒に発行するIDは一つにつき月額300円から提供しており、教室の規模に合わせて調整することができます。

友人の誘いが天恵に

 私の父と祖父は、ともに企業の平社員から経営者に出世した、いわゆるサラリーマン社長でした。常に自分の周りに経営者がいたことから、私も自然と会社を経営してみたいと思うようになりました。

 最初は、父たちのようにサラリーマン社長を目指すくらいの考えで、住友スリーエム(現スリーエムジャパン)に入社しました。ただ、一介のサラリーマンが経営者に上り詰めるには、数十年の時間が必要になります。そこまで待てなかった私は、すぐにでも経営者になろうと会社の同期と一緒に起業の道に進み、Web制作の受託事業を始めました。当時は、とにかく起業したいという思いばかりが先行してしまい、具体的な事業モデルなども想定していなかったため、わずか1年半で頓挫しました。

 転機になったのはその後、大学時代の友人に学習塾を共同経営しようと誘われたことです。学習塾ですぐに直面した課題が、紙を使ったアナログな業務の多さ、そしてその非効率さでした。これをデジタルの力で解決できれば、塾の業界が変わるのではと思ったことが、今の会社の設立につながっています。

 現在、コミルは駿台予備学校や秀英予備校など3700教室に導入されています。シェアは全国におよそ5万ある学習塾の7%。今後は3~4年内に20%までシェアを伸ばすことを目標にしていきます。

 また、私たちはコミル上から塾で使う備品を安価に購入できるECサイトも運営しています。こちらは利用自体は無料でできますが、まだ利用者数が少ないので、ECサイトの利用者も増やしていき、将来の新たな顧客獲得につなげていきたいですね。

====================

企業概要

事業内容:塾講師の事務業務のためのシステム開発・提供

本社所在地:東京都中央区

設立:2015年1月

資本金:1億7111万9680円

従業員数:55人(22年2月末現在)

====================

 ■人物略歴

くりはら・しんご

 1983年埼玉県生まれ。2007年明治大学経営学部卒業、住友スリーエム(現スリーエムジャパン)、オプト、S.T進学教室を経て、15年POPERを設立。38歳。