外食企業の成長を一貫支援

ナシエルホールディングス代表取締役 中村幸司 2025.06.23

 伴走型の経営支援で外食経営者の心強い「相棒」を目指している。(聞き手=稲留正英・編集部)

 店舗型ビジネス、特に外食企業の成長支援をしています。店舗型の事業者が成長していくには、(1)店舗を出す、(2)人を増やす、(3)フランチャイズを活用する、(4)M&A(企業の合併・買収)で他社を仲間にする──の主に四つの方法があります。当社はこの四つをしっかりと押さえながら、ビジネス拡大のお手伝いをします。

 グループの集客装置になっているのが、「テンポスマート」という店舗物件を専門とするポータルサイトです。顧客は無料で多くの物件情報の中から効率的に希望の物件を検索することができます。会員数は7万社。その6〜7割が外食企業です。

 月間のユニークユーザー数は約10万人と、店舗専門では日本で最も利用者が多いサイトです。会員数も毎月1500社くらい増えています。これまでは1都3県が対象エリアでしたが、今年5月からは関西でもサービスを開始しました。

 店舗物件の仲介でお付き合いする相手は、大抵、外食企業の社長さん自身です。仲良くなると、例えば人の採用で悩みを抱えていることが分かります。そうすると今度は、我々の飲食業界専門の求人サイト「エフジョブ求人」を通じ、店長、料理長、経営者など、飲食業で必要な人材を紹介したり、人事評価制度の構築や運用のお手伝いをします。

 フランチャイズでは「超速FC構築塾」を主催して、フランチャイズの構築から集客、出店まで一貫して支援します。さらに話が大きくなってくると、グループの「M&Aプロパティーズ」を通じ、M&Aを通じた一段の成長をサポートします。

大型のM&Aでも実績

 伴走型の経営支援で事業計画を一緒に作りながら、「3年で売上高5億円を目指しましょう」などと訴えると、経営者と強い信頼関係が構築できます。そうすると、例えば、顧客がビジネスを売却したい時に、当社に最初に声が掛かるようになります。

 M&Aでは、レインズインターナショナルのロブスター料理店「レッドロブスター」の売却(11年)や、マック(東京)による「東京チカラめし」「神戸らんぷ亭」の買収(14〜15年)など、大きな案件でも実績があります。

 私はもともと証券会社出身です。大和証券SMBCで入社1年目からM&Aの部署に配属されました。その後は、外資系企業でもM&Aを担当しました。外食に目を付けたのは、M&Aの世界では大きな案件ばかりが注目され、1社1社の規模が小さい外食産業はほとんど見向きもされなかったためです。「みんなが見ていないんだったら、うちでやろう」と考え、独立して今の会社を創業しました。

 会社の名前は外国語のようですが、実は日本語の「成し得る」から来ています。「皆さんの思いを成し得ていこう」ということで、会社のロゴも「成」という字と富士山のイメージを組み合わせました。今後は、国境を超えたフランチャイズ展開やM&Aの支援を手掛けたいと考えています。

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企業概要

事業内容:飲食店・小売り・サービス業向けM&A・出店支援、人材紹介

本社所在地:東京都新宿区

設立:2009年4月

資本金:9億7400万円

従業員数:150人

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 ■人物略歴

なかむら・こうじ
 1981年東京都出身、2004年3月早稲田大学理工学部卒業、同4月大和証券SMBC入社。08年2月ラザードフレール、09年4月M&Aプロパティーズ(現:ナシエルホールディングス)を設立し代表取締役就任。18年11月から現職。

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週刊エコノミスト2025年7月1・8日合併号掲載

中村幸司 ナシエルホールディングス代表取締役 外食企業の成長を一貫支援