国産生薬で漢方由来のサプリ
herbal-i代表取締役 中村航 2025.10.27
中国産が多い原材料の生薬を国産に切り替え、機能性表示食品を開発するほか、国内農家の支援も目指している。(聞き手=稲留正英・編集部)
「医食同源」をテーマに、主に漢方の考えに基づいた医薬品やサプリメントを自社サイトやアマゾン、楽天などのEC(電子商取引)モールで、販売しています。社名の「herbal-i」(ハーバルアイ)は生薬の「herb」に「innovation」「interesting」などの「i」を組み合わせました。
ブランド名は「漢方生薬研究所」です。取り扱い商品は28点で、日常的に購入してもらっている顧客数は約3万人です。創業以来の累計販売個数は今年9月末で349万個を突破しました。当社の特徴は、子会社を通じて国内農家と契約し、無農薬・有機栽培の国内生薬を使った機能性表示食品を開発していることです。
主力商品の一つが、「日本山人参(やまにんじん)」です。これは血圧や血糖値を引き下げる効果があります。原材料は「ヒュウガトウキ」というセリ科の多年草で、背丈は2メートルもあります。宮崎県や大分県など九州の一部の地域にしか自生せず、古くから「神の草」と言われてきました。
当社では子会社を通じ、宮崎県小林市の農家が栽培したヒュウガトウキを独占的に買い取る契約を結んでいます。このヒュウガトウキは無農薬で栽培されており、子会社は日本では数少ない有機JAS認定を取得しています。

当社の問題意識には、日本国内で使用される生薬の88%が輸入品で、さらに、そのうち83%が中国産であることがあります。これらの生薬の原材料はどのような環境で栽培・製造されたのか把握できません。さらに、中国では生薬の投機的な買い占めが起こっているほか、トランプ関税の影響で原材料価格も高騰しています。
減少する栽培農家を応援
そこで、原料の供給先を日本国内に切り替えることで、製品のライフサイクルを通じたトレーサビリティー(履歴管理)を向上させています。原料の安定供給も可能になります。
一方、日本国内では、薬草の栽培農家の減少が深刻です。2015年には2065戸あった生産者は22年には1306戸まで減りました。背景には、薬草は種まきから収穫まで3〜5年かかり、資金回収が難しいことがあります。そこで、商品開発が得意な当社がタッグを組み、出口戦略を提供し、国内農家をしっかりと応援していきます。
現在、当社の全売上高に占める「日本山人参」の割合は2割程度です。これ以外にも、糖尿病やほてり、肥満などに効能がある生薬を複数扱っています。今後も原材料の国産化を進めるほか、調達先をトレーサビリティーが確保できる中国以外の国に切り替えていく考えです。国産化比率は中長期的に5割以上を目指します。
私自身は長崎県の出身で、短大で保育士の資格を取るために福岡市へ移り、夜間保育の仕事をしていました。その後、縁あって橋口遼会長が経営する通信販売会社(ハーバルアイの前身企業ステイゴールド)に入社し、「漢方生薬研究所」ブランドの立ち上げに関わりました。
当社のビジネスモデルを通じ、会社としてしっかりと収益を上げながら、国内農家の自立などの社会課題を解決し、地方創生にも役立てればと考えています。
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企業概要
事業内容:健康食品、医薬品の通信・店舗販売、生薬栽培
本社所在地:福岡市中央区
設立:2015年12月
資本金:6859万円
従業員数:76人
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■人物略歴
なかむら・わたる
1991年長崎県生まれ。純真短期大学で保育士資格を取得後、保育士として従事。2013年に健康食品の通信販売とコンサルティングを行うココシスに入社。16年にステイゴールド(現herbal-i)に入社し、通信販売ブランド「漢方生薬研究所」の運営責任者を担当。19年に同社取締役、23年11月に代表取締役就任。
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週刊エコノミスト2025年11月4・11日合併号掲載
中村航 herbal-i代表取締役 国産生薬で漢方由来のサプリ
