エコノミスト未来賞2025

株式会社メディカルレビュー社は、医療専門の出版社および医療用医薬品広告のエージェンシーとして、医師、薬剤師、看護師、そして患者やその家族など、多様なステークホルダーに向けた医療・医学情報を発信している。

「仲間を思うこと」から始まる経営

同社が掲げるのは「病で悩む人をゼロにする」というビジョン。医学的専門性を持ちながらも、誰にでも伝わる形に変換し、必要な人へ的確に届けることを使命としている。

「情報の届け方は、相手によって変わります。医師には薬理の根拠に基づく治療情報、患者には治療の選択肢や安心感につながる知識など。それぞれの立場にとって“意味のある情報”を提供することが、私たちの役割です」と松岡氏は語る。

2020年4月1日、松岡氏は代表取締役に就任。しかしその直後、新型コロナウイルスの感染拡大により緊急事態宣言が発出された。未知の状況に不安を抱える中で、社員一人ひとりの自律的な行動と誠実な業務遂行が、社長としての覚悟と信念を支える礎となった。

「人を思うことは、組織を強くする。仲間を思いやる気持ちがあれば、立場や部署を越えて力が結集する。私はそこに経営の本質を見出しました」この経験が、松岡氏の経営哲学「仲間を思うこと」に確信をもたらした。

疾患啓発という新たな挑戦

現在、同社が注力しているのは「疾患啓発事業」。個別化医療が進む中、患者やその家族が自身の病気について深く知る機会をつくることが求められている。「患者自身が病を知ることによって、医師や医療従事者との対話がより有意義なものになります。治療の納得感が高まり、社会復帰にも前向きな影響が生まれる。そのための“正しい知識の共有”が私たちのテーマです」

今後は、行政や地域とも連携し、市民向けの教育啓発活動も展開していく方針だ。未病・予防の重要性を伝え、「病気になる前から健康を考える」社会の実現を目指す。「難しい医学知識も、私たちなら一般の方にわかりやすく伝えられる自信があります。広告代理店としての表現力・発信力も強みです。市民の健康が社会の根幹。だからこそ、ひとりひとりに“自分の身体を知る力”を届けたい」

未来を見据え、メディカルレビュー社は「正しい医療情報を伝えるための拠点」としての価値をさらに高めていく。認知症やヤングケアラー、美容医療など、従来医療と無縁とされていた領域にも取り組みを拡大中だ。「情報が溢れる現代だからこそ、正しさが際立つ必要があります。ネット上の情報に惑わされず、信頼できる情報を届ける“灯台”のような存在になりたいですね」

PROFILE

代表取締役社長

松岡武志

株式会社メディカルレビュー社

https://m-review.co.jp/

京都府出身。中央大学法学部卒業後、新卒で大手IT企業へ入社。2008年にメディカルレビュー社へ入社、中国にて北京支社の立ち上げを行う。帰国後の16年、18年、19年に関連会社3社の代表取締役に就任。20年からメディカルレビュー社の代表取締役に就任し、現在に至る。