07
Beth合同会社 社長

河上泰之

https://beth.co.jp/
Yasuyuki Kawakami

新規事業やDXを成功させるために何を考えれば良いのか、という「考え方」の専門家。慶應義塾大学大学院SDMを優秀賞で修了。IBM、デロイトに在籍。IBMではデザイン思考チームの立上げや社内講師に参加。独立後は特許庁の大阪万博のビジョン検討やトヨタ自動車の事業創出などを支援。

豊かな環境を次世代へ引き継ぐため新規事業創出やDX推進を支援

「まず、知っていれば避けられる失敗を避け、結果ではなく成果を数えながら、正しい挑戦をしていただきたい」。Beth 合同会社の河上泰之社長は、仕事をする上で自らのベースにある顧客への思いをそう明快に話す。
自治体や公的機関、一般企業などが、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や新規事業創出に取り組む際、顧問業としてその挑戦を支援するのがBeth 合同会社のミッションだ。「例えばDX計画の策定支援であれば、それを推進する理由は何かを考えてお客様と共に状況を整理し、目的と数値目標を定めて、それを達成するための進め方を計画としてまとめます」と河上社長は解説する。

新規事業においても、企業の手に入れたいものが「新規事業を創出する能力」であれば、「一連の業務プロセスを策定して事業創出を支える人材を育成するとともに、新規事業のアイデアを個別に検証しながら、その推進を支援します」と話す。このように、新規事業に取り組む理由や目的が明確でないと、途中で進まなくなってしまう可能性が高いのだという。また新規事業の創出においては、現在のビジネスとは異なる新たなビジネスを始めようとすることが多く、そうすると、「それはわが社がやるべきことなのか」という疑問の声が出ることもあるが、「自社の強みにこだわり過ぎると新たな挑戦が進展しなくなりますので、そうした点もアドバイスします」と紹介する。
その上で、Beth 合同会社が支援から離れた後も「自走」できるよう、ゼロからビジネスを創出する際のプロセスに沿って業務ができる社員を、2パターン育成することが多いと話す。
「一つには、アイデアを事業として提供できるまでに創り上げられる人材の育成。そしてもう一つが、そうしたアイデアを持った社員をサポートする支援部隊の育成です。そうすることで、新たなアイデアを募って育てることができるようになり、それに対して役員が意思決定できるのです。そうなることを目指し、私は自分が教えられることは全て教えます」と話し、支援する顧客自身ができるようになることを前提に、必要に応じて座学、体験学習、OJTを実施しているという。
実際、現在もプライム市場の上場企業に対して、新規事業創出のためのプロセス導入と、そのプロセスを回せる人材の育成支援が複数進行している。さらに、個別企業での新規事業推進やDX推進に向けた講演会・勉強会での登壇、東京商工会議所での特別講演会なども行っている。自治体など行政向けの取り組みにも注力しており、複数の自治体で、DX推進の骨格となる行動計画の策定から、実施に向けた実務推進の支援などが進行中だ。特に、日本においては自治体がDXに取り組むのが必須の状況にあり、河上社長は「日本では今、自治体のDXは3種類が走っていると認識しています。一つ目は総務省が推進するデジタル化で、二つ目が総務省は強制していないが自治体が独自に進める職場内の効率化、そして三つ目が他の市町村との競争に勝ち、生き残っていくための個別施策の検討と実施です」と話す。このうち、自治体にとって重要なのは、三つ目の生き残るための個別施策だという。

自治体の業務の中では、住民票の発行といった業務は機械的に自動化することが可能である。つまり、他の自治体から人が転入したり、企業が移転してくることに直接関わらない業務はデジタル化することを河上社長は提唱しており、「そうすることで生まれる人的な余裕や予算を活かし、他の自治体から新たな住民や企業を獲得するため、自分たちの魅力向上に注力することが重要なのです」と話す。その考えに基づいた支援業務も複数の自治体で進行中だとして、例えば三重県伊賀市では、Beth 合同会社がDX行動計画策定を支援し、計画遂行に向けて取り組みが進められているということだ。
そんな河上社長が今重視しているのが、問題解決力の向上である。「そのために必要なのが教育ですが、多くの社会人に『ロジカルシンキング研修』を提供しても効果が薄いと見えるように、個人に対して教育を提供しても実務上の結果はあまり得られません。そうではなく、問題解決ができるチームを育てると、実務では有益に働き始めるのです」。そこでのポイントが、階層別研修ではなく、組織が皆で理解するチーム研修の重要性で、「東京商工会議所の特別研修は階層別研修を廃止して、トップ以下、新規事業に関わるメンバー全員でのチーム研修の受講を推奨しています」と強調する。そして、そうした問題解決ができるチームが多数できるための仕組みづくりを構想していると話す。

今後に向けての展望を伺うと、今の日本は暗い状況にあるように見えると述べた上で、「現状を変えようとする行政官であったり、企業のリーダーや志を持って組織を動かそうとしている人たちと一緒に、一つ一つ真剣に問題を解いていけるよう取り組みたい。そうして『飲める水でトイレを流せるし、洗濯もする』ような幸福な住環境を、次の世代にも引き継いでいくため、この国を前に進めていきたい」と、熱い言葉が返ってきた。