10
㈱ナニワ電装 代表取締役

北中一男

https://www.naniwa-densou.co.jp/
Kazuo Kitanaka

1964年大阪府生まれ。大阪府立布施工業高等学校電気科を卒業後、会社員を経て30歳の時に父親が経営するナニワ電装に入社。2005年10月会社を法人化した後、引退した父に代わって代表取締役に就任。独学にて経営を学び、今もなお会社を成長させ続けている。

「人材育成」と「常に前進」の精神で事業を拡大

新車を購入する際、カーナビやETC、ドライブレコーダーなどの電子機器オプションや、ドアバイザー、エアロパーツなど外装パーツの取り付けを希望する人は多いだろう。ナニワ電装は、そのようなディーラーオプションの取り付けのほか、車両の塗装やコーティングなどを請け負っている。代表取締役の北中一男氏が父から経営を引き継ぎ、法人化したのが2005年。決して順風満帆ではなかったが、現在は神戸を拠点に、国産自動車メーカー5社の整備会社内に出張所を設けるまでに成長した。「経営は独学」という北中代表がどのようにして事業を拡大し、この先も継続していくために何を重視しているのか。その経緯や思いを聞いた。

会社員だった北中代表は、30歳の時に父が経営するナニワ電装に入社した。当時は景気が良く、仕事も順調だったが、わずか1年半後にバブルが崩壊。ピザの宅配などのアルバイトとダブルワークで必死に働くことを余儀なくされた。
常に目の前にあることに全力で取り組み、前に進んでいくという北中代表は、そんなときでも「アルバイト先でトップを目指していた」といい、10年間の苦境に耐えた。そのうちに景気が回復し、40歳のときにナニワ電装を法人化して、父に代わって代表取締役に就任した。高卒で就職し、経営の勉強などしたこともなかった北中代表は「当時は不安しかありませんでしたよ」といい、プレッシャーがかかる中、税理士の協力を得て少しずつ経営の基礎を学んでいった。

まず着手したのは人材育成だった。「父は昭和の人間で『嫌なら辞めろ』と言う人だったので、長く勤めてもらえる職場を目指しました。この仕事は入社してすぐできる仕事ではないので、続けてもらわないと会社全体のスキルが上がらない」と、給与や休暇、研修制度、福利厚生など働きやすい環境を徐々に整えていった。

法人化して約5年後、事態が大きく好転した。親会社の自動車メーカーが自動車オプションの取り付け作業をアウトソーシングに切り替えていったのだ。それで仕事が増え、再び経営は安定してきた。また、リース車のナビの取り付けなど、外回りの仕事も積極的に行っていたことが功を奏し、他の自動車メーカーにも「ナニワ電装」を覚えてもらえるようになった。気付けば他社からの仕事も入るようになり、現在では国産自動車メーカー5社の整備会社内に出張所を持つまでに成長した。従業員もグループで150人に増えた。北中代表は「仕事が見つかってから人を採用して育てたのではない。先手必勝というか、先に人材を育成しておいて、新たな仕事の話が来たらすぐ対応できるようにしています」と語る。

派遣会社や外国人技能実習制度も活用して、常に人材を確保した。個人のスキルアップにも力を入れ、閑散期を利用し、高級車など普段は触らない車種での経験も積ませておく。会社全体のスキルを上げることで、「ナニワ電装には頼れる人材がいる。いろいろなことを頼める」と取引先に思ってもらうためだ。まさに“先手必勝”、これが北中代表のやり方だ。

北中代表は会社を育ててくれた神戸への恩返しとして、神戸の花火大会やフラワーロードのスポンサー花壇を協賛してきた。また、従業員への福利厚生も兼ねて、プロ野球の阪神タイガースの甲子園球場と、オリックスバッファローズの京セラドーム大阪の試合、サッカーJ1のヴィッセル神戸のシーズンシートを購入し応援している。
さらに、モータースポーツを応援しようと、2023年のスーパー耐久では国内屈指の名門チーム「TEAM IMPUL」のメインスポンサーとなった。TEAM IMPULは話題性のあるチームのため注目されることは間違いなく、業界内で「ナニワ電装」の知名度アップも期待できる。

「100年後は知名度100%の会社にしたい」と北中代表は夢を語る。「会社を100年継続させようと思ったら、大事にしたいのはやっぱり人の優しさです。今の時代にはそぐわない考え方かもしれませんが、人と人のつながりで企業は成り立っていると思っているので、私はそういうものを大事にしていきたいです」。
一度は“どん底”を見たこともある北中代表だからこそ、企業を人が支え、人とのつながりが次の仕事を生み出すことを知っているのだろう。

代表に就任してから着実に事業を拡大し会社を成長させてきたが、北中代表は現状で満足しているわけではない。そこには「現状維持」=「マイナス」という考えがあり、決して歩みを止めることはなく、前進し続ける。そのためには外部の人間とコミュニケーションをとることが不可欠だという。会話の中から相手が困っていることに対して、「何か助けられることはないか」と考え、それが新たな仕事につながることもあるからだ。最近は「ここに勝機がある」や「これは会社の利益につながる」ことが長年の経験から分かるようになり、「人材さえいれば、新たな仕事は取れる」と自信を見せる。

思ったことはすぐに実行しないと気が済まないので、考えるより先に行動する。「今ある仕事を守り続けるという性格ではないので、常に前進して会社を成長させたい」と言った後、「現状で満足していたら、楽しくないでしょ」とほほ笑む。北中代表の“前進を楽しむきたなかだい気持ち”が、ナニワ電装を成長させているのかもしれない。