23
株式会社DaN 代表取締役

西之園洋佑

https://www.d-a-n.co.jp/
Yosuke Nishinosono

慶應義塾大学文学部民族学考古学専攻卒業後、農林水産省入省。収益不動産を取り扱うベンチャー企業へ転職し、7年間不動産投資および管理業務に従事する。その後、大手小売ブランドの不動産運営本部会社に転職し、2022年11月に株式会社DaNを設立。現在は不動産を活用した資産形成運用サポートおよび賃貸管理業務効率化・改善サポートを提供している。

「不動産業界に恩返し」を胸に、三つの「だん」の実現へ

不動産を活用した資産形成運用サポートと賃貸管理業務効率化・改善サポートの2本柱で事業を展開している株式会社DaN。代表取締役の西之園洋佑氏は、農林水産省から収益不動産を取り扱うベンチャー企業に転職し、以後10年以上不動産業界で実績を積み上げてきた。官僚を辞めたときの「レールから外れたため、自分で稼ぐ力を何としてもつけなくてはいけない」と考え、不動産売買でなく、ユニークな立ち位置での起業につながった。「働く人が自身と家族の時間(団らん)を大切にできるように」など三つのビジョンを掲げる西之園氏に聞いた。

DaNは、資産形成運用サポートでは不動産会社と物件のオーナーを橋渡しし、賃貸管理業務効率化・改善サポートでは不動産会社と業務のデジタル化を担当するITベンダーの間に立ち、さまざまな調整を行う。西之園氏は「このポジションは、不動産売買のような大きな利益が出るものではないので、あまり競合がいない」と語る。大学を卒業して農林水産省に入省した西之園氏だが、「組織外でも通じるビジネススキルを身に付けたい」と不動産を扱うベンチャー企業に転職した。「官僚を辞めて、『レールから外れた』ときに、『自分で稼ぐ力をつける』という決意をしました」と振り返る。

不動産ベンターに転職した西之園氏だが、「お金を稼ぐことに固執していては、一生不安はなくならない。不安よりも希望にフォーカスする人生を歩むことで、逆に不安は軽減する。そんな風に考えるようになった」といい、不動産売買そのものではなく、不動産投資による資産形成のための不動産の購入・運用や売却のノウハウの提供、物件の紹介と、非常に手間がかるアパートなど不動産物件の管理業務の効率化や品質向上という業務に可能性を感じ、「この分野で成功することが人生の安定につながる」との思いを持ったという。

ただ競合が今まで進出してこなかった、稼ぎにくい領域での事業展開だけに、起業はこれまでの人生で一番のチャレンジだったという。その時、西之園氏の背中を押してくれたのが妻の存在だ。「一人で事業を成り立たせられるのか、不安で二の足を踏んでいた私に、妻は『グダグダしてないで、早くやんなさいよ』と一言。この一言がきっかけで起業する決心がつきました。現在も妻には全面的にサポートをしてもらっており、本当に感謝しかありません」と笑顔を見せる。

西之園氏が成し遂げたい思いとは何か。それは社名の「DaN(だん)」にヒントがある。同社の社名は、「働く人が自身と家族の時間(団らん)を大切にできるように」「仲間との絆や一体感を大切にできるように(団結)」「人生のステージを一つ一つ上がっていけるように(階段)」という、西之園氏が実現したい三つのビジョン・思いに共通するキーワード「だん」から名付けられた。

例えば「働く人が自身と家族の時間(団らん)を大切にできるように」には、どのような思いが込められているのだろうか。「人生には仕事以外にも大事なことはたくさんありますよね。人によっては趣味や友人関係のほうが、仕事より優先順位が高いかもしれません。そして、そんな多様な『大切なこと』の中でも、家族との時間から生まれる精神的な豊かさも大事にしてほしい。そんな思いを込めています」と解説する。
三つのビジョンは、社会というより個人に対して矢印が向いている。これは人生の目的が「豊かな人間生活を営むこと」と考え、まず個々の幸せを願う西之園氏ならではの特徴だ。

今後の展望について、西之園氏は「10年以上、不動産業界でお世話になってきました。だからこそ、事業を通じて不動産に関わる人の力になることで、恩返しをしたい」と話す。この思いの根幹にあるのが、西之園氏が企業経営をする上で大切にしている考え方の一つ、「必ず相手に何かしらの価値提供をすること」だ。これは、自分だけが一方的に何かを得る関係性が嫌いな、西之園氏の性格からも形成された考え方である。

西之園氏「不動産会社とIT企業の橋渡しをする賃貸管理業務効率化・改善サポート事業では、不動産会社の業務・収益改善化を通して労働時間を短縮させたり、お給料が上がる後押しをしたりと、さまざまな形で私の経験を不動産業界へ還元したい」と考えている。
また、不動産会社とオーナーの間に立つ資産形成運用サポート事業についても、「『不動産投資の不安がなくなった』という人を着実に増やしていきたい」と語る。こうした不動産業界への恩返しは、株式会社DaNのビジョン「団らん・団結・階段」の三つの「だん」実現にもつながることだろう。