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株式会社プラウド 代表取締役

富田久由

https://www.otegorosha.com/
Hisayoshi Tomita

1971年生まれ、静岡県出身。中学校卒業後、静岡忠燃へ入社し、19歳で最年少店長に就任。21歳で株式会社オートベルへ転職し、自動車業界入りを果たす。27歳で取締役経営部長に就任するも30歳で独立をし、オートベルの同僚と共に株式会社イータスを設立。36歳になった2007年に株式会社プラウドを設立し、現在に至る。

会社は楽しく働きながら自己実現を行う場所

自動車のオークショントレーダーとしての経験を生かした仕入れで、中古車販売を中心事業としている株式会社プラウドは、低価格でも安心して乗れる車が見つかると購入者からの信頼も厚い。レンタカーやカーリースといった自動車関連事業以外に、コッペパン専門店や美容院、エステサロンなど、業界を問わずに事業拡大を続けている。一つの業界にとらわれず、挑戦をし続ける代表取締役の富田久由氏の原動力を探った。

仕事への誇りを社名に掲げて起業

中学校卒業後、ガソリンスタンドの経営を事業とする会社に就職したことから富田氏のキャリアは始まる。自動車会社への転職を経て、自動車のオークショントレーダーを行う会社を仲間とともに立ち上げたが、社長が自動車業界を軽んじ、別の事業へ舵を切り始めたことをきっかけに離職。自動車業界に携われる誇りを大切にしたいという思いから、社名をプラウドとし、仲間と5人で設立したのが2007年だった。

1年目はオークショントレーダーとして、仲間とともに全国のオークション会場を飛び回った。メンバーは全員、オークショントレーダーであり、競りで勝てる確かな腕はあった。しかし車という高額な商材を扱う苦労はあったという。「ある時、オークション会場にいたら、経理部から電話がかかってきて、『早く飲み屋に行ってください』と言われました。車を購入するよりは、飲み代のほうが安価ですからね」と笑う。ふたを開けてみれば、1年目で黒字化。三島で1000坪以上の広大な土地に出会ったことから、2年目には中古車販売事業に参入を果たした。

事業を通して、業界イメージの向上に努めたい

一般的に「いい車」といえば高級車を指すが、結果的に利益になるのであれば、単価が低い車でも「いい車」だという。「お手頃価格」をコンセプトに、安価で購入した車を15万円、20万円、25万円という三つの低価格帯のみで販売。これが功を奏して、今では年間約5000台を売り上げる企業にまで成長した。

長く中古車業界に携わっている富田氏は、「真摯(しんし)に事業を行う姿勢を通して、業界の地位を上げたい」と訴える。中古とはいえ、大きな額が動くゆえに、さまざまな人間が集まりやすいという業界事情がある。しかも、ディーラー権を得るのが難しい新車業界とは異なり、警察署に届け出をすれば中古車事業を営むこととができるため、参入のハードルは非常に低い。そのため、中には顧客に対して不誠実な対応を行う業者もいると警告を鳴らす。「新卒で入社する社員の両親が、この業界に不安感を抱くことがあります。その解消のためにも、当社が模範的存在であり続け、業界内で一目置かれる企業になる必要がある」と目標を掲げた。

楽しく働ける場所を増やすための事業拡大

新卒採用を始めて8年、合同説明会に自ら赴く富田氏は「やりたいことがなくても、面白いことをできる会社」と自社を紹介するという。彼自身、天職に巡り合えたと思ったのは、プラウドを立ち上げた36歳の時。大学在学中の学生が何をやりたいか分からないのも無理はないと理解を示す。多くの企業は事業を一つの業界に特化していて、いざ入社してみたものの、肌に合わなかったというのはよくある話だ。彼が業界を飛び越えて事業拡大をする理由はここにある。「当社の社風が合わないのであれば仕方がないが、事業が合わないのであれば、辞めるのはもったいない。だから受け皿を増やしています」という。幅広く事業展開をしていれば、中には合うものもあるであろうし、なければ作ればいいという考えだ。「会議の合間の休憩中や飲み会の席で社員から出た話題が、新事業につながることもあります」と話す通り、提案も企画も自由。「さまざまな事業を行うことによって、中古車業界以外の人と出会えることも魅力です。将来的には『プラウドって車屋だったんだ』と思われるようになりたい」と語る。

富田氏は、会社を「仲間が集まる場所であり、自分がやりたいことをできる場所」と定義付けているので、転勤をして欲しい社員には必ず事前に面談を行い、その可否を委ねる。新店舗の出店時には、積極的に手を上げた社員に任せることも多い。「ライフスタイルの変化により、車に乗る人は減り続け、売り上げの維持ですら難しい。しかし、社員の給料は上げなければいけません」と話すとおり、別業界への進出は社員に還元したいという思いも原動力になっている。「社員がいたから、ここまで来ることができました。今度は私が彼らに返す番です」と社員への思いを繰り返した。

2023年には既存事業の店舗拡大と、新たに福祉事業や人材関連事業、フィットネス事業の立ち上げを控えている。プラウド創立30周年、社会人歴50年を迎える14年後までに売り上げ300億円、社員500人を目指す。「これはあくまでも今の事業の延長線上の数字です。予想もしなかった出来事によって化ける可能性も期待しています」と目を輝かせる。