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医療法人社団都筑会 つづきレディスクリニック 理事長

吉岡範人

https://www.tsuzuki-ladys.com/
Norihito Yoshioka

1978年千葉県生まれ。聖マリアンナ医科大学卒業後、2003年同大学の初期臨床研修センターに配属。婦人科腫瘍を専門とし、一般産婦人科に加え救命救急、内科、外科、小児科を学ぶ。2013年カナダ・ブリティッシュコロンビア大学への留学を経験。2019年つづきレディスクリニック理事長に就任。

「産婦人科の医療×プラスα」のサポートで 一人一人にオーダーメイドな医療を提供

横浜市の医療法人社団都筑会つづきレディスクリニックは、企業の経営層や管理職も注目すべき革新的な診療の実践で知られる。それは単に疾病の治療や出産のサポートにとどまらない女性の健康課題へのアプローチであり、「生理に関連した体の不調による労働損失は年間で約5000億円という試算もあり、経済産業省は女性が働く環境の整備や改善を進めることが生産性や業績の向上に結びつくと指摘しています」。そう紹介するのは、同クリニックの吉岡範人理事長だ。
いわば、女性特有の健康課題への取り組みは企業の経営面においても重要課題といえるわけで、吉岡理事長は「例えば女性社員の生理痛をコントロールすることによって心身の負担を軽減し、営業成績が伸びたり、プレゼンテーションの質が高まるなどのパフォーマンスが向上することは、企業にとって業績アップにつながる大きなメリットなのです」と明言する。そのため、今後はさまざまな企業にその取り組みを広げていきたいと話す。

もちろん、同クリニックでは働く女性だけでなく、あらゆる世代の女性に対し積極的かつ独自性に富んだ診療やサポートを行っている。そのベースとなっているのが、吉岡理事長のという考えに基づく診療だ。「通常の医療であれば、『ここで終わり』となるところを、医療の範囲を超えて思考を巡らせることで、プラスαのものと掛け合わせた新しい切り口が見えてくるのです」という。そこには、婦人科一般の診療に加え、婦人科腫瘍の専門医としてがん患者さんの終末期医療にかかわってきた経験や、救命救急・内科・外科・小児科におけるこれまでの経験や知見が活かされている。

長く大学病院に勤務し海外留学なども経験してきた吉岡理事長が、前院長から請われて同クリニックを引き継いだのは2019年。ここで目指そうとしたのが、可能な限り個々の患者さんにオーダーメイドな医療が行えるよう配慮し、たとえ検査結果で陽性とならない場合でも、患者さんが訴えている症状を少しでも改善するための医療の提供だった。そうした中から生み出されたのが、「産婦人科×医療脱毛」や「産婦人科×訪問診療」「産婦人科×月経カップ」といった新たな視点や切り口の診療で、「就任2年目から実施している婦人科における医療脱毛では、患者さんの痛みが少なく仕上がりもきれいで、料金も安いといった医療機関ならではの利点があります。さらに、終末期医療における脱毛は、患者さんが下の世話を受ける際の精神的な負担を軽減するといった点でも有用性があります」と話す。

産婦人科と訪問診療を掛け合わせた取り組みも、患者さんへのオーダーメイドな医療の提供という考えがベースにある。吉岡理事長は大学病院でがん患者さんの緩和ケアを行ってきていて、「そのときから診ている患者さんから最期まで僕に診てほしいという要望があり、それをきっかけに訪問診療に取り組むようになりました」という。

また、最近多く取り組んでいるのが、中学高校の女子生徒や大学の女子学生に対する生理痛の改善で、それによりスポーツやさまざまな部活動、受験などにおけるパフォーマンスの向上に寄与しようというものだ。その背景には、生理痛は我慢するものといった考えを変えたい思いがあり、「低用量ピルは避妊の薬として知られていますが、適切に使うことによって生理痛を改善することが可能なのです。他にもニキビやプレ更年期の症状改善などにも効果が期待でき、より良い社会づくりに貢献できると考えています」と思いを込める。

吉岡理事長は、こうしたのさまざまなアプローチは、女性の健康課題をテクノロジーで解決しようという「フェムテック」にも通じるものだと話す。しかし、残念ながら参入する企業は多いものの、フェムテックに関心の高い医師は少ないということで、「フェムテックを提供する側、それを受ける側、そして私たち医師が医療を活用しながら積極的にかかわることで、日本の土壌に合ったフェムテックを確立していけるのではないかと思っています」と話す。そうした考えから、産婦人科医の視点でフェムテックの概念や医師としてのかかわり方、さらに有益な情報を多くの女性に提供するため、

そんな吉岡理事長には、将来、ぜひ実現したい計画がある。それはビル1棟を使って女性のための施設をつくりたいというものだ。そこには産婦人科や女性専用の内科などの医療施設があるのはもちろん、美容院やネイルサロン、おしゃれなカフェ、悩みを相談できる占い、ギフトや雑貨のショップなどが入り、「病気を治してもらうだけでなく、プラスαでおしゃれを楽しんだり、友人との会話を楽しんだり、ショッピングを楽しんだりしてもらい、より健康で生き生きとした人生をサポートしたいと考えています」と話す。今後も吉岡理事長の次なるに期待が高まる。