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株式会社コロプラ 代表取締役会長兼チーフクリエイター

馬場 功淳

https://colopl.co.jp/
Baba Naruatsu

1978年生まれ。大学院在学中の2003年に個人で世界初の位置情報ゲーム「コロニーな生活」を開発をスタート。IT企業に勤務しながら個人で運営を続け、2008年コロプラを創業し、社長に就任。2021年に会長 兼 チーフクリエイターに就任。2022年に設立したブロックチェーンゲーム事業を行うグループ会社「Brilliantcrypto」の社長も兼務。

AIとの共生で、価値あるコンテンツを作る

スマートフォンゲーム、ブロックチェーンゲーム、コンシューマーゲーム、メタバースサービスなど、多様なオンラインゲームを開発・運営している株式会社コロプラ。ゲームを含むエンターテイメントは時代と共にものすごいスピードで変化しているが、同社は最新のテクノロジーと独創的なアイデアで、国内にとどまらず海外展開も積極的に進めている。創業者である馬場功淳・代表取締役会長兼チーフクリエイターに聞いた。

現在、六本木ミッドタウン内にオフィスを構えるコロプラだが、その歴史は馬場氏のマンションの一室から始まった。会社員勤めをしながら、個人で位置情報ゲーム「コロニーな生活」を開発・運用。これが世界初の“位置ゲー”の誕生だった。

「近年流行った『ポケモンGO』や、当社とスクウェア・エニックスで共同開発をした『ドラゴンクエストウォーク』の大元と言えるでしょう」と、馬場氏は説明する。

当時は、ガラケーと呼ばれるフィーチャーフォンやPHSが出始めた頃で、ガラケーは使った分だけ通信費がかかるため、定額で使えるPHS用の位置情報ゲームを作ろうと考えたのが開発のきっかけだった。当時は個人が作ったゲームは目新しく、リリースしてすぐに数千人のユーザーが集まった。

やがて、フィーチャーフォンの定額化によりそちらにも進出したところ、ユーザー数が増加したため、2008年に法人化。「コロニーな生活PLUS」を略し、コロプラと名付けた。スマートフォンが世に広まりだしてからはスマートフォンゲームの制作にいち早く移行したり、仮想現実(VR)やメタバースにも領域を広げたりするなど、時流に合わせながらさまざまなコンテンツをリリースし続けてきた。

同社のようなスマートフォンゲームが主力商品の企業は、ヒットするか否かに業績を大幅に左右され、他分野へ事業を広げることで安定を図る企業が多い中、ゲーム事業にこだわってきた。19年にリリースした位置情報ゲーム「ドラゴンクエストウォーク(通称 ドラクエウォーク)」は社会現象になるほど大ヒットし、20年9月期の連結純利益を前期比7・5倍に伸ばした。その後も大型遊園地とウォーキングイベントを共催したり、新型コロナウイルス禍では自宅でも楽しめる仕様に一時的に変更したりして、コアユーザーを獲得し続けた。

次なる一手として、この春、馬場氏が代表を務めるグループ会社からブロックチェーンゲーム「Brilliantcrypto(ブリリアンクリプト)」を世界でリリースする。代表的な暗号資産であるビットコインをマイニングするように、ゲーム内でプレーヤーが鉱山を掘り出すことで、非代替性トークン(NFT)の「宝石」や独自の暗号資産を得られる。NFTは他のメタバース上で「宝石」として使え、暗号資産はゲーム外の取引所でも売買できる。暗号資産は上場企業が手掛けており、ゲームも適法に開発されているため、安全も担保されている。

「Brilliantcrypto」では「宝石」が得られるが、馬場氏は「ビットコインは金のような資産価値があり、デジタルゴールドと言われています。値動きも、投資行動も、ほぼ金と同じ。そこで『金があるなら宝石もあっていいのでは』と考えたのです。貨幣価値はゴールドから始まったと思われていますが、正確には宝石から始まっているので、デジタル宝石を生み出すサービスを作りたいと思ったのがきっかけでした」と語る。

ブロックチェーン技術下では、運営者ですら勝手に暗号資産を作り出せないため、宝石はこのゲームで遊ぶことでしか手に入らない。そこに資産価値が発生し、本物の宝石のように価値が生まれると考えている。

馬場氏は「これまでもブロックチェーンゲームはありましたが、エンタメ性が薄く、株式投資や外国為替証拠金取引(FX)と変わらないと感じていた」と語る。「Brilliantcrypto」は、まさにゲームを楽しみながら稼げるゲーム好きな人には夢のようなゲームといえる。

「新しいものは全て『人』から生まれる」と同社は考える。2016年に馬場氏が、未来を担う学生クリエイターを援助する公益財団法人クマ財団を設立した。奨学金を通して、これまで300人以上の創作活動を支援している。

また、新たな価値創出を目的として、人とAIの共生についても積極的な姿勢を見せている。ChatGPTを活用した業務改善の優秀な事例を表彰する「ChatGPT活用促進プロジェクト」を立ち上げ、業務効率の向上に日々取り組んでいる。

大学時代に人工知能を扱っていたAIの専門家でもある馬場氏は、これからの経営にはAIの活用が不可欠であり、AIを取り入れない企業は淘汰されていくと予想する。 「実は、日本はAI大国なのです。なぜなら、私たちはドラえもんや鉄腕アトムを見て育ってきた。米国ではこれがターミネーター、つまり人間の敵であり、AIやロボットが人間を助けてくれるという教育を受けたのは日本人だけです。AIに心理的抵抗がない日本では、これから活用の幅がどんどん広がっていくでしょう」と語る。 

すでに法律の契約書業務などはAIも高い正確さを持ち、芸術分野でもハイクオリティのものを瞬時に大量に作ってくれる。単価も人間の1000分の1くらいで済むので、コストパフォーマンスだけ見たら人間に頼む理由がないという。「特定分野に使うなら、圧倒的に人間を凌駕していくでしょう。私だって、今後どんな人と一緒に働きたいかと言われたら、そのうちの一人はAIでしょうね」と笑う。