アクセンチュア株式会社等でアーキテクトやコンサルタント、インフラジスティックスでエバンジェリスト(Microsoft MVP for CRM)、MicrosoftでCRM製品担当を経て、CRM専門企業アーカス・ジャパン株式会社を設立し、企業のCRM導入・定着化を支援。インタビューや記事寄稿を通じて真なるCRMの普及に努めている。
CRMの活用で日本を変える
顧客の情報を把握し、ビジネスを展開するCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)のリーディングカンパニーとして、多くのCRMベンダーを支えているアーカス・ジャパン株式会社。他社にはないCRMの成功ノウハウを高品質・低価格で提供する同社だが、近年は飲食業や若手支援など事業領域を拡大。松原晋啓代表は「CRMの活用で日本という国そのものが変わる」と力を込める。
CRMを中心としたITソリューションの専門企業である同社は、約1年前に大阪・心斎橋に「健康家庭料理&雑煮BAR「膳」をオープン。CRM事業と飲食店、一見かけ離れたものに思えるが、同店はCRMを活用した飲食店ソリューションを作るモデル店舗的な位置付けがあるという。
「いわゆるマーケティング業務や営業、顧客との接点を管理するためにCRMは必要不可欠なものですが、逆に言うとどの業界業種でも使える分、分かりづらい。今の競争で優位に立つためにはCRMが絶対に必要だけど、使い方が分からないという企業が多い。CRMを正しく理解してもらうために、実際に稼働している店舗で、しっかりと当社のソリューションを見せられれば、分かりやすいだろうと思い、オープンしました」と説明する。
「ITは、人の可能性を狭めるものでも役割を奪うものでもなく、人がやってこそのものを支援する仕組みでなければ意味がない。ですが、今飲食店で使われているのは、セルフオーダーにロボット配膳。人との接点に関しては人が対応しないと満足度は得られないのに、そういったところにITが使われてしまっている。当社では、在庫の管理や発注業務、サービスと関係ない世界をシステム化することに重きを置いています。ITがあれば人間なんていらない、と血も涙もない世界ではなく、ちゃんと人がおもてなしをする。血も涙もある世界を作れるのが、正しいITの使い方だと考えています」と力を込める。
飲食業への進出もあくまでCRM事業の一環であり、「世界で最もCRMを熟知した日本唯一の専門企業」という肩書は設立以来変わることはない。「CRM事業では世界のトップだという誇りを持って事業を進めていくことを大事にしています。多角的に事業を手がけていますが、どれもすべてCRMの考えに基づいている。CRMは日本的に言えば、〝おもてなし〟に通じる部分が多々あります。世界中におもてなしを広げていく。世界中みんなを笑顔にする。そのビジョンは、今後も変わることはない」と言い切る。
CRMだけに特化することについて、「海外を見ると、Microsoftはソフトウエア、Googleは検索エンジン、MetaはSNS、 Appleはデバイスと、それぞれに特化したITの専門家ばかり。日本企業は『あれもやります。これもできます』と手を広げすぎているように感じます。当社は専門性を持つ世界のIT企業のやり方に基づいて作っているので、強い。当社はあくまでCRMのプロフェッショナルですから」。松原代表は、自身のこともプラットフォーム型CRM(CRM2.0)に関しては日本で唯一の正当後継者と自負する。
グローバルスタンダードとして、専門性に特化した正しいITのプロジェクトサービスを担う同社だが、現在の拠点は大阪。関西や西日本の経済発展に尽力している。「世界各国いろいろな場所でビジネスを行ってきたなかで思うのは、首都と経済都市は違うということ。東京に集中している日本はすごく弱い。経済都市を移すべきだとすると、一番ポテンシャルがあるのは、大阪だと考えた。大阪から、当社のミッションステートメントでもある“おもてなし”の文化を広げていきたい」と語る。
その思いで創業当時から地方創生、地方活性化に注力している。近年では、後継者問題が深刻化した「日本きくらげ」の栽培事業を手がける企業も子会社化した。これまで培ったITソリューションで、情報システムと収益化を重視した展開を進めている。
さらに、社会貢献の一つとして若手支援にも力を入れている。23年11月には、映像や写真業を手がけるノイギア株式会社をグループ会社に迎え入れた。「やる気のある若者がいれば後押しするのが大人の務め。経営ノウハウはもちろん、継承できるものがあれば伝えていきたい。ノイギアの代表も自分で資金をためて起業すると言っていたので、だったら子会社にならないかと。いい機材を買うためにアルバイトをして、その結果制作の時間がなくなる、それは本末転倒ですから。当社との関連性や連動性、可能性はもちろんですが、相乗効果を見込める若手との協業は今後も注力していきたい。若手支援は、社会に対する還元でもあると考えています。当社が得た利益を活用して、さらに経済を発展させる。当社のグループ会社が増えれば、その分当社のおもてなしを広める窓口も増えますから」と展望する。
若手経営者の支援や飲食店経営を通じた社会貢献にも積極的に取り組む松原代表だが、やはり主軸はCRM事業。「日本唯一のCRMプロフェッショナル企業として、その存在をもってして日本経済立て直しの一助になりたい」と力を込める。
「元々ポテンシャルが高い日本人には優秀な人もたくさんいますが、大手企業中心の日本のIT業界は発展が遅れているし、ITができていないから無駄が多い。せっかくGDP4位という国力を持っているのに無駄遣いをしているから、働いた分が価値として表に出ておらず、とても残念に思います。CRMの専門企業として、その無駄をなくせるようなんとかしたい。CRMが普及すれば、日本という国そのものが変わるはず」。CRM市場のトップランナーとして、さらに道を切り開き続ける。