1952年生まれ。兵庫県神戸市出身。大阪工業大学工学部経営工学科卒。1977年に日本オリベッティ株式会社入社。本社営業企画・東海事業所長等を務めた後、1991年に株式会社日本M&Aセンター設立に参画。2008年、社長に就任。2024年4月から現職。
地方創生、日本創生のために目指す世界ナンバーワン
M&A仲介支援のリーディングカンパニーとして、中小企業の事業承継問題を数多く解決してきた株式会社日本M&Aセンター。2022年「M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取り扱い企業」として3年連続でギネス世界記録™に認定されてきた。三宅卓会長に「世界ナンバーワン」を目指す理由を聞いた
多くの中小企業が直面している事業承継問題を友好的M&A支援で解決に導いてきた三宅会長は、「日本でM&A仲介のリーディングカンパニーと呼ばれるようになり、その中で我々のミッションである地方創生、さらにその集合体としての日本創生を達成しようとしたときに、やはり世界に目を向けないといけない。世界のなかで存在感のある企業でないと誰も相手にしてくれないだろうと。そういった意味で世界ナンバーワンを目指すようになりました」と語る。
1991年に三宅会長が同社に参画してから、10年ごとに転換期があったという。「最初の10年はまだM&Aが日本に根付いていなかった時代で、ノウハウを作るのに一生懸命でビジネス展開ができていませんでした。ですが、お客さまには喜んでいただけていた。そこで初めて社会的な意味が大きい仕事だなと感じました」と振り返る。
「会社を残すことは、創業社長や従業員にとってはハッピーなことで、買い手企業にとっては新しいビジネスチャンスが生まれる成長のトリガーになる」と実感した三宅会長は、まず会社をスケールしていこうと成長戦略に切り替え、2006年に東証マザーズ、2007年に東証一部に上場を果たした。2008年には社長に就任した。「より多くの人にM&Aを通じてハッピーになってもらいたいという10年目で決断したことをずっと継続しているだけ。世界一になる、という目標もその思いが強く込められています」
社長就任からの10年で、M&Aに対する世の中のイメージが大きく変わったという。「当時、M&Aというのは良くないもの。売り手企業にとっては恥ずかしいものでしたし、買い手企業にとっては買収するなんて下品だと。そういったイメージで、双方ともに拒絶することが多かった。ですが、我々がセミナーや広告等で啓発活動をしてきた結果、『M&Aは両社ともハッピーになる』という本質的なことが広がっていった」と語る。
そして今、それが大きく変わりつつあるという。「M&AもBtoCの時代になってきました。例えば、中小企業の経営者が直接当社に問い合わせをしてきたり、悩みを相談してきたり。ラーメン店やネイルショップ、美容室など、そういったところまでもがM&Aを考える時代になってきています」
より小さなところで需要が高まっているM&Aだが、その背景にあるのは深刻な後継者問題だ。「日本には中小企業が336万社以上あると言われていますが、そのうちの8割以上の経営者が65歳以上。それだけ多くの企業がM&Aで会社を継いでもらうか、廃業するかのどちらかを選ばなくてはいけない時代になってきています」と感じている。
地方の中小企業の場合、廃業によって長年働いてきた従業員が失業する可能性も高く、納入業者の売り上げが下がるなどの地域経済への影響も大きく、廃業後には借金しか残らないということも多いという。「そうした実態が分かってきて、M&Aを熱望される会社が増えてきた。最初の10年、真ん中の10年、今の10年で大きく世の中が変わってきたと述懐する。
三宅会長は今後、M&AはさらにBtoC化が進むだろうと予想し、そのニーズに応えるため、DX化でのサービス増強に力を入れている。「婚活サイトの方向性と同じです。昔は近所の人が自分の範囲内でお見合いをセッティングしていましたが、全国的なマッチングができないかと結婚相談所が現れて、今はインターネットでのマッチングが主流です。M&Aも企業同士の結婚なので、最初は我々が企業同士を結び付けていましたが、データベースを作って、AIを駆使しながらマッチングしています」
DX化で加速度的に進むM&A業界について、「M&Aビジネスは、クールヘッドとウォームハートが必要なハイエンドなビジネスだと思います。長年経営してきた会社を売るときの悔しさや寂しさをハートで共感できないとダメですし、だからといってそれに流されてもいけない。会社の現状を冷静に把握して、的確にリスクを分析して契約書まできっちりと実行する必要がある。非常に高度なIQ(知能指数)とEQ(心の知能指数)を持たなくてはいけない」と解説する。さらに「今の時代はAIやインターネットの知識も必要。頭脳と共感力、インターネットのノウハウ。それを持っている人が勝ち組になれる世界だと考えると、これからの若い世代にとっても魅力的な業界ではないでしょうか」と力を込める。
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、本格的に超高齢社会を迎える2025年以降、事業承継できず廃業する中小企業は今後さらに増加すると言われている。「そうした社会課題をM&Aで解決し、地方創生から日本創生を担う一手になりたい」と語る三宅会長は学生時代から、世の中が抱える社会課題の解決に興味を持っていたという。「大学1、2年生ごろまでは写真に夢中で、写真と社会課題をつなげていくことがすごく楽しくて、考える力が身に付いた。会社のビジョンを考えるときにも社会の課題点やニーズを把握して、課題を切り取り、それを統合していく。それはまさに写真なんです。写真は1枚ずつしか撮れませんが、それを50枚並べたとき、世界が見えてくる。新聞やニュース、本を読んだときの一つ一つが僕の頭の中では写真のようなワンシーンになっている。そこで状況をつかみ、次に求めるものが何なのか。そういった考え方の手法は、自分の原点ですね」三宅会長の独特のアプローチは、日本から世界へと続いていく。