1985年生まれ。21歳の時に投資用マンション大手仲介会社へ入社。専務取締役を務めた後独立。株式会社セルゲートジャパン代表取締役を経て、2012年にGATES株式会社を設立。
「人生一気通貫」不動産業界のニュースタンダード
中古不動産の仕入れや販売、管理をワンストップで行う事業を展開するGATES株式会社。2012年の創業から右肩上がりの成長を続け、2022年には年商150億円を記録し、フィナンシャル・タイムズの「アジア太平洋地域の急成長企業ランキング2023」のトップ500社にランクインした。中古市場の民主化や1万円から始められる不動産クラウドファウンディングなど、画期的なサービスを提供し続ける関野雄志代表取締役社長に成長の秘密を聞いた。
不動産業界の固定観念にとらわれない事業を展開し、創立10年でアジアの急成長企業に選ばれたGATES株式会社。関野氏は「伝統的に不動産仲介は売って終わり、買って終わり、それが主体になっていると思い、お客様のニーズに対して何ができるか、サービス業としてお客様視点で接点をどう増やしていけるかを考え続けてきました」と明かす。
人生のフェーズによって、欲しい不動産は変わっていくが、そこに当てはまるサービスを「一気通貫」で提供することで売買の現場以外でも関係性を続けていく。「本音を言えば、こうしたサービスで実務は増えるが、常にニーズがあるということは、利益に他なりません。持続可能な業界づくりにもつながる」と語る。
関野氏は、不動産業界で脈々と受け継がれてきた伝統と慣習に、時代に応じた新しさをプラスし、業界全体の価値向上につなげていきたいという。「海外と日本ではカルチャーが違うと言ってしまえばそれまでですが、いいものを長く使うという考えは万国共通の良識だと思います。例えば欧州の街の美しさも、そうした良識があるからこそ保たれているのでしょう。しかし、日本の不動産や住宅では、そうした美を受け継ぐという意識が諸外国に比べて薄いように感じています。いい建物は次の世代にバトンタッチしていく仕組みを作っていきたい」と力を込める。
そうした思いから関野氏は中古不動産に特化した事業を行なってきた。リノベーションで物件に磨きをかけ、市場価値が安定した物件にするのが特徴だ。「所有者が変わるごとに価値がアップダウンし続けてしまっては、安定した資産とは言えず、買い手、売り手、業界も含めた発展にもつながらない。不動産の価値評価もプロにしかわからなければ、発展性に欠けるので、中古物件の情報の民主化を進めていきたいと考えるようになった」という。
建物一つとっても多様な価値があり、立地する街の環境も、通り一つ違えば価値が違ってくる。そうした情報をクリアにしながら、買い手のリテラシーを高めていくことで、誰もがフェアに選べる不動産にしていく。関野氏はそんな業界の未来を描いている。
そんな業界の未来を具現化するサービスの一つが、一口1万円で、物件のオーナーになれる超小口クラウドファウンディングだ。このサービスを提供した背景について「例えば、初めての不動産投資でいきなり2000万円のローンを組み、もしそれが失敗すれば二度と不動産投資を考えたいとは思わないでしょう。しかし、1万円という少額にすることで、投資家側の負担を極力減らし、そのハードルを下げられる。仮に失敗しても勉強代だと割り切れるかもしれませんし、逆に成果が上がれば不動産投資に前向きになるでしょう。入り口は能動的で、リスクとリターンは常に投資家の方々の手の内にあるべきだと思います」と語る。
日本では、若い世代も含めて資産運用への関心は高まりつつあり、小口クラウドファウンディングなど多様な資産運用が提供されることは意義のあることだ。関野氏は、「人生一気通貫」で不動産のさまざまなサービスを提供するスタイルで、業界に新たなスタンダードを生みだそうとしている。
関野氏は不動産事業を”社会を良くしていくための一つのツール“としてとらえ、必要であれば金融や太陽光事業などにも活用していくという。「上場も視野に会社全体で成長し、社会の公器としてふさわしい企業体を目指すことが当面の目標。取り扱う物件のバリエーションも増やし、海外も含めてあらゆる不動産を扱っていきたい。今後、米国で人口増加率1位のテキサス州のほか、新興国などにもマーケットを広げ、グローバルな視点で事業を展開したい」と意欲を燃やす。
常識にとらわれない同社では、業界経験のない中途入社の社員ばかりだという。そうした環境が自由な発想を生み、成長の原動力につながっているのだろう。