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スズデンホールディング株式会社 代表取締役

鈴木 達也

https://suzuden-hd.co.jp/
Suzuki Tatsuya

山形県米沢市生まれ。大学卒業後、グループ会社の山形電気保安管理株式会社に入社し電気主任技術者として勤務。父親の急逝後、株式会社スズデン代表取締役に就任。電気工事事業を事業譲渡したのち、太陽光発電事業を手掛けるスズデンホールディング株式会社を設立。

関わるすべての人を大切に 託された思いを未来へ

SDGsの機運が高まる昨今、再生可能エネルギーに注目が集まっている。太陽光発電事業を手がけるスズデンホールディング株式会社は、東北地方に27カ所の太陽光発電所を展開している。鈴木達也代表取締役は、従業員や地域の人々、関連企業など「関わるすべての人を大切にすることが重要」と語る。

スズデンホールディングは、太陽光発電のみにフォーカスして事業を展開しており、27か所の太陽光発電所で発電した電力は100%東北電力へ売電している。再生可能エネルギーへの期待の高まりから新規参入もありそうな業界に思えるが、省庁の許可や地域住民の意向などから、これからの発電所建設はハードルが高いという。

一方で、同社は現在稼働中の発電所の他にも、2~3カ所の発電所建設準備を10年以上前から進めている。創業は2022年と若い企業だが、太陽光発電事業は鈴木氏の父が経営していた株式会社スズデンから引き継いだもので、太陽光発電の分野では〝老舗〟としての利益を得ているのだ。

「スズデンが初めて発電所を建設したのは2014年でした。父が育てていこうとしたこの事業を受け継ぎ、効率を最大化しながら次の世代へ繋いでいくのが、スズデンホールディングの使命」と話す。だが、スズデンからスズデンホールディングへの移行は、そう簡単なものではなかった。

鈴木氏は、元々スズデンのグループ会社であった山形電気保安管理株式会社で、電気主任技術者として働いていたが、2021年に父が急逝し、スズデンの代表取締役に就任することとなった。

「父の死を悲しむ余裕が全くないほど、漠然とした不安に襲われました。いきなり社長になり、とにかく会社や従業員をなんとかしなくてはという思いで、がむしゃらに働いていました」と振り返る。

突然の慣れない業務に戸惑う中、鈴木氏は社長として大きな決断を迫られた。スズデンの事業は元々電気工事事業と太陽光発電事業の2軸だったが、先代の父には電気工事事業を大手へ事業譲渡する構想があり、その判断は新社長の鈴木氏に委ねられた。

「事業譲渡せずにスズデンを続けることも含め、さまざまな選択肢がありました。しかし、私は父の方針を引き継ぎ、事業譲渡に踏み切ることにしました。父が生前話していた、『少子高齢化で仕事が減少する今後は、従業員約150人の生活を守ることが難しくなる。一方でこれからは再生可能エネルギーの時代が来る』という考えに共感し、太陽光発電事業のみを受け継ぐ形にしました」と明かす。

太陽光発電事業に絞ると決断した鈴木氏だったが、これまでの仕事とは畑違いの領域、前職の知識はほぼ生かすことができなかった。そんな中助けられたのは、太陽光発電の領域に長けた幹部や従業員たちの存在だった。「人に助けられて、何とかやってきました。その恩に報いるために、私は『人』を大切にして、会社や地域社会へ貢献していきたいと思っています」と話す。実際に鈴木氏は、従業員や関連企業への目配り・気配りを欠かさない。従業員とは一人ひとり、ささいなことでもコミュニケーションを取り、関連企業とも密に連携を図ることで信頼関係を築いている。

「何気ない会話から業務のヒントを得ることも多いです。逆に、コミュニケーションをとらなければ情報がまったく入らず、業績が悪化してしまうということも社長業をやるなかで痛感しました。いくら時代が進んでも、人とのコミュニケーションはまったく侮れません」と語った。

「太陽光発電事業は、地域住民の理解ありきのもの」という鈴木氏は、地域の清掃活動や祭りに積極的に参加し、地域の方々とのコミュニケーションも図っている。「人を大切にする」という思いは、事業に関わるすべての人へと向いている。

2024年4月には、改正再エネ特措法の施行を控え、太陽光発電事業のビジネスチャンスが広がる可能性が高い。今後は、発電所内のパネル増設や改修工事によって、発電効率や継続性を高めていく方針だ。

また、スズデンホールディングは、鈴木氏のいた山形電気保安管理を含め、多くのグループ企業を抱える。「山形電気保安管理の他県展開や、発電所に関わるような高圧メンテナンス事業の展開なども考えています。他にも、採算が取れるビジネスがあれば積極的に投資していきたい」と語る。

スズデンホールディングは鈴木氏を含めて6人と少数精鋭の組織だ。当然ながら、社員だけでできることは少ない。「太陽光発電という事業は、地域住民や関連企業、従業員など、関わるすべての人の支えなくしては成り立たない」と話す。広大な敷地で稼働する数々の太陽光発電所は、関わる人々がワンチームになって協力してきた賜物だ。

突然社長になり、人の支えがいかに大切か身をもって経験してきた鈴木氏。だからこそ、「人を大切にする」というポリシーのもと、太陽光発電事業を通じて地域社会へ貢献していく。