1992年生まれ、神奈川県出身。新卒で株式会社キーエンスに入社。2022年7月に株式会社BLUEPRINT Foundersの代表取締役CEOに就任し、株式会社Archi Village、株式会社Fact Base、株式会社Transleadの3社を創業し収益化させる。
本質的なDXと泥臭い調査で業界変革を目指す
企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、株式会社BLUEPRINT Foundersは、さまざまなの課題を解決するSaaS(Software as a Service)を開発する事業を連続的に立ち上げ、上場を目指してグロースさせる“スタートアップファクトリー”を展開している。竹内将高代表取締役CEOは「業界構造、商慣習を含めて業界変革を目指すことが、日本のDXには必要」と語る。
「難しく聞こえるかもしれませんが、私たちがやっていることは実はシンプル。新規事業をゼロから立ち上げて、急成長させて、5年で上場させる、この三つです」と竹内氏は説明する。IPOまで手掛け、株式売却によって収益を得るビジネスモデルだ。シンプルとは言え、企業をゼロイチで連続性を持って立ち上げ続けることは容易ではない。創業当初、周囲からは「絶対できない」と言われたが、その予想を見事に裏切り続けている。
個社の課題解決をするコンサルティングファームとは異なり、同社は業界に特化した課題解決を行っている。その理由を「個社の課題は実は業界全体に共通していて、その課題はプロダクトで解決できるからです」と説明する。
会社立ち上げまでの流れはこうだ。まず、特定の業界に属する企業の現場を1000件ほど視察し、共通する課題を見出す。その課題を解決するプロダクトを考え、モックと呼ばれる試作品をつくり、現場の声を反映させて事業化する。会社を設立するか否かにあたっては、アイデア段階でテストマーケティングを入念に行い、顧客価値を裏付けして判断している。
既に立ち上がっている3社のうちの一つ、株式会社Fact Baseは、製造業界の課題を解決するプロダクトを提供している。工場の全データを紐づけ管理できる図面管理システム「ズメーン」は、ものづくり現場の新種の神器として、多くの企業に導入されている。竹内氏は「個社でプロダクトをつくると膨大な費用がかかりますが、業界全体で使えるプロダクトなら月額制で使ってもらえる。全員がwin-winです」と言う。
DXと言うと先進的に聞こえるが、同社は事業開発のプロセスでの現場視察や、多くの関連ステークホルダーへのヒアリングなど、泥臭い調査を行っている。1期目から年次経常収益(ARR)1億円を超えるSaaS企業の立ち上げができている源泉は、この泥臭さにある。
「大前提として、当事者に聞いても課題は出てきません。自分たちで分かっていたら、既に解決されているはず。だから、現場に行って、課題を見出し、プロダクトを提案する必要があるのです。1000社も回れば良いモノを生み出せないわけがない」と力を込める。
新卒で株式会社キーエンスに入社し、高価格帯の光学機器の営業をしていた竹内氏は、リストから売るのではなく、いきなり電話でアポ取りをして工場に営業に行くスタイルを5年半続けた。今も地道な調査をできるのは「現場を愛しているからです」と話す。キーエンスで「会社の正解」や「成功し続ける組織の仕組み」を学べたことは大きく、2021年に会社を立ち上げてからも、当時学んだ仕組み化を徹底している。
「事業拡大がうまくいかない会社の大半は、特定の人がいないと成立しない〝属人性〟が高い。上場企業の量産を目指す私たちは、属人性の排除を極めて重視しています」と語る。さらに、会社のために頑張った社員がちゃんと報われる構図も重視し、年収・賞与の他に、立ち上げに関与した会社の株をもらえる制度も設け、社員はモチベーションを更新し続け、会社の業績も上がり続ける。
「大企業出身の人は会社のあるべき姿を知っているので、組織づくりに強いです。事業会社の第一線で活躍してきた優秀で泥臭い人たちに、どんどん入社してもらいたい。優良な組織の一員だった経験を生かし、今度は組織をつくる側に回ってほしい」と熱く語る。
創業以来、売り上げが右肩上がりで、株式会社Fact Baseは既にタイとフィリピンに進出しており、今後はHR(人材)やプラントなどさまざまな業界にも進出し、全てのグローバル展開を目指している。
「日本のサービスはとても成熟しているし、特に製造業は国が違ってもやり方は同じなので、日本のやり方をそのまま海外に持って行ってもすんなり受け入れられます。これからも各業界のインフラ的な立ち位置としてプラットホームを作り、横でつながっている産業同士でシナジーを生み出していきたい」と目を輝かせる。 「大きいことを言うのが嫌いで、絶対にできる範囲のことしか口にしたくない。正直、社会貢献も考えていなくて、自社の社員や関わる人がwin-winになれば良いと思っています。強いて言うなら、売上の数字が社会貢献度の裏付けだと思うので、会社として精いっぱい成長していけたら」と語る。竹内氏は、成功への最短ルートを着実に進み、これからもBLUEPRINT(青写真)を現実化していく。