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Ultra FreakOut株式会社 代表取締役社長

宇木 大介

https://ultra-fout.jp/
Uki Daisuke

早稲田大学を卒業後、SI企業にてエンジニア・営業・マーケティング業務を経て、経営企画部門で投資やM&A実務を経験。2020年、株式会社フリークアウト・ホールディングス執行役員およびUltra FreakOut株式会社代表取締役就任。タクシーサイネージメディアを運営する株式会社IRISの代表取締役も兼務。

デジタルサイネージの可能性を追求

新たな広告手法として注目を集めるデジタルサイネージでさまざまなプロダクトを展開するUltra FreakOut株式会社。タクシー車内のデジタルサイネージ運用を数多く手掛けた実績を持つ宇木大介代表は、これまでのノウハウを生かした新たなプロダクトの提供や事業化の支援など「デジタルサイネージ活用の可能性を追求したい」と語る。

同社は、多角的に広告事業を展開するフリークアウトグループ内で、全国のタクシー約7万台の車内に設置されたデジタルサイネージ「TOKYO PRIME」の運用を担っていた基盤開発チームを中心に、2017年に設立された。デジタルサイネージと複合機を組み合わせた国内初のオフィス内デジタルサイネージ広告「Office Vision」をパートナー企業と共同で開発するなど、デジタルサイネージの活用から、プロダクト提供、創出支援を主軸に事業を展開。24年1月からは、タクシーサイネージのノウハウをさらに生かしたDOOH事業の配信プロダクト「Maroon(マルーン)」の提供も開始した。

「現在、さまざまな場所にデジタルサイネージの設置が進んでいますが、多くの企業がその活用方法を模索している状況です。ハードウエアの選定や管理するソフトウエアなど設備投資も大きい。成功事例としてタクシーサイネージを運用してきた配信基盤のノウハウがあり、それを転用する形でより手軽に、信頼性の高いデジタルサイネージを活用できるプロダクトを提供したいと考えました」

「Maroon」は、複数のデジタルサイネージへの配信を一元管理できるほか、初心者でも使いやすいUI/UXを備えているのが特徴だ。一例として、温浴施設向けの混雑表示モニターでの広告・コンテンツ配信システムとして導入されている。「サウナの混雑を可視化するためのモニターで、画面の一部にリラックスできるような広告を配信しています。サウナは男女別ということもあり、広告としてはターゲティングしやすい。清涼飲料水やビールに加えて観光など、自分の余暇、休日に楽しむといったものなら広告としても受け入れてもらいやすいと考えました。デジタルサイネージの設置場所は無限大ですが、訴求したいサービスやターゲットに適した使い方をしなければ効果は出ません。企画提案から広告効果が出るまで、伴走しながら支援できるのが一番の特徴です」と自信を見せる。

街中はもちろん、ショッピングモールや電車内、喫煙所、トイレなど挙げれば切りがないほどデジタルサイネージの設置場所は増えている。宇木代表は「サイネージ活用の可能性を追求するためにも、さらに多くの企業とパートナーシップを築いていきたい」と語る。

「場所が決まっていてデジタルサイネージを設置したいという企業もいれば、タクシーサイネージを見てライドシェアやレンタカーなど、同じように活用できないかと問い合わせをもらうことも多くなりました。サービスをエスコートする存在でありたいと思っています。課題解決を一緒に考える中で、最終的にデジタルサイネージは必要ない、という結論でもいい。活用してもらえるように性能や品質を上げる努力し続けて、パートナー企業と一緒に歩んでいくというところに強みを持っていたい。悩んだら実施する方向で、可能な限りできるところまで支援する。そのスタンスは崩さないでいこうと思っています」と力を込める。

宇木代表は「デジタルサイネージは、コミュニケーションツール。その場所で目にする人がどんな感情を欲しているか。共感を得る力が大切」とも語る。それはどんなことも「自分ごと化」するという考え方がベースにあるという。

「そんなに仰々しいことではないと思いますが、自分だったらどうするんだろうということを考えるようにしています。それは、多角的にものを見られる訓練になっているだけでなく、新しい気付きを得たり、経験になったりする。人と人とのつながり、コミュニケーションの活性化にもなりますし、自分のことだとしてもいろいろな切り口で考えていけるようになる。『自分ごと化』の目線を持ってほしい、というのは当社のメンバーにも常に伝えていることです」

テレビや新聞、屋外広告などのマスマーケティングが主流だった時代から、インターネットやスマホの普及に伴い情報をパーソナライズして届ける時代へと、広告を取り巻く環境が大きく変化する中、宇木代表は「公共の場にあるデジタルサイネージだからこそ、見る人の“興味の外側”を意識したメディアを作りたい」と意気込む。

「『こんなものあるんだ』という驚きや気付きを持ってもらえるツールにしたいという思いがあります。スマホの普及で、自分の好きなものや興味のあるもの以外に触れる機会が少なくなっていることに加え、広告は我慢の時間という認識を持っている人もいる。そういった認識を変えたいですし、そのためのツールとしてサイネージを生かしたいと考えています」

デジタルサイネージの分野でも、パーソナライズした情報を元に個人によった広告を配信する動きもあるというが、「例えば、来店時にスマホ内のアプリと店舗の端末を連動させ、店内のサイネージで個々に商品をレコメンドするなど、技術的には可能ではあります。ですが、それに不快感や不安を持つ人は多いのではないでしょうか。そういった技術の進歩と世の中が受け入れてくれるか、は全くの別物ですから、そのせめぎあい。そこを見極めながら、企画提案や開発を行っていく必要があると考えています」と指摘する。

ポスターや造作物をデジタルサイネージに置き換えることで印刷コストなど削減され、消費電力を下げるハードの開発にも取り組むなど社会課題の解決にも力を入れている。「CO2削減を始めとする環境問題にもごくごくわずかですが、間接的に関与できている」と評価する。

「技術の発展や世の中のニーズの変化をしっかりとキャッチアップしていくことはもちろん、デジタルサイネージというツールがインフラとして機能できるようにプロダクト開発を進めていきたい。街づくりの一端をデジタルサイネージが担うなど、全国各地に設置されたデジタルサイネージが地域の活性化などに昇華されてくいことにも取り組んでいきたい」と意欲を燃やす。

「プロダクト開発に、完成形はない」と言い切る宇木代表は、デジタルサイネージ分野のスタンダード企業を目指し、可能性を追求し続ける。