1963年生まれ。大阪府出身。1988年明治学院大学卒業後、株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。1989年株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)を設立。1998年、株式会社大阪有線放送社を継ぎ、代表取締役に就任。2009年動画配信の株式会社U-NEXTを設立。2017年株式会社U-NEXTと株式会社USENを経営統合し、株式会社USEN-NEXT HOLDINGS(現U-NEXT HOLDINGS)を発足、代表取締役社長CEOに就任。2024年4月、株式会社USEN-NEXT HOLDINGSから株式会社U-NEXT HOLDINGSへ商号を変更。
“必要とされる次”を目指し、進化し続ける
映像・音楽コンテンツの配信事業を手がける企業が増加し、群雄割拠の様相の中、USEN&U-NEXT GROUPは、会員数約420万人となる国内最大の動画配信プラットフォームのU-NEXTや、店舗BGMやDX化を推進するUSENなど、26の事業会社を傘下に持つ。コンテンツ配信、店舗サービス、通信、業務用システム、エネルギーの5セグメントで事業を展開。宇野康秀・代表取締役社長CEOは「NEXT for U」をコーポレートスローガンに、エンターテインメントとテクノロジーで進化を続ける。
約60年前に宇野氏の父が創業した株式会社大阪有線放送社が前身だが、1998年に宇野氏が社長に就任してからは「有線放送という資産に頼るだけでは成長が鈍化してしまう」と、いち早く通信技術に目を付けた。2001年から、完全常時接続・低コスト・高速・大容量通信を可能にする光ファイバー・ブロードバンドサービスを提供している。常に“次”や“未来”を見据え、業界に先駆けて動画配信サービス「GyaO NEXT」(現U-NEXT)をスタートした。
「経営者となってからこれまで、常に社会的に意義がある事業をやっていくというスタンスは変わっていない。企業は利益が上がれば何をやってもいいわけではない。社会に必要とされる企業になるためには、必要とされる事業をきちんとやっていくべきだ」
24年4月1日、社名を「USEN-NEXT HOLDINGS」から「U-NEXT HOLDINGS」へ変更した。17年12月にU-NEXTとUSENを経営統合してから今年で7年目となり、経営体制の基盤が整い、業績も連続で最高収益を出した。宇野氏は「次のステージに向かうタイミングが来たと感じました」と語る。
「U-NEXT」の「U」は「YOU(あなた)」や「世の中の人々みな」を、「NEXT」は「未来」を指す。それを「-(ハイフン)」でつなぎ、「人が集う店・街を変えたい」「暮らしの中に喜びや感動を増やしたい」という思いを込めたという。宇野氏は社名変更によって、「グループ全体の意志統一と企業ブランド認知の向上を図り、さらなる企業成長を目指す」と話す。
17年の経営統合時、宇野氏は1兆円企業グループを目指し、100億の売上規模の会社を100社作るという構想を掲げ、グループの事業会社社長を目指す人材を社外から募集する「社長発掘プログラムCEO’s GATE」や、起業したスタートアップ経営者や起業家志望者を支援・登用する「起業家登竜門CEO’s GATE」をスタート。社内向けに自らが塾長を務め、年齢・勤務地関係なく意欲があれば応募可能な「未来塾」を開校し、社員のキャリア実現に向けて、互いに研さんする機会を提供している。
また新卒採用でも起業家意識や経営センスのある未来の経営者候補となる人材を見分けて採用していく方法も模索中だ。「現在のべ26人になりました。事業を生み出すこと、既にある事業を守っていくのも大事ですが、新しい事業を作っていく〝人〟を育てることも大事」と語る。
U-NEXTが2023年、有料動画配信サービス「Paravi」を運営する株式会社プレミアム・プラットフォーム・ジャパンと経営統合し、会員数約420万人の国内最大の動画配信プラットフォームとなり、今後は音楽、映画、ドラマはもちろん、スポーツや格闘技のほか、ニッチな分野のライブ配信や電子書籍などデジタル化されるあらゆるコンテンツを扱っていくなど、順調に成長を続けている。
宇野氏は業績が好調な要因として、「将来を見据え、『来たる未来』を信じて戦略を行っていることと、ホールディングスとして攻めと守りのバランスが取れた財務戦略を推進し、経営が安定していること」を挙げる。
店舗BGM事業を始めたのは、創業者である宇野氏の父が、飲食店の従業員が仕事の合間にレコードを裏返す姿を見たことがきっかけで、有線放送で音楽を配信すれば、従業員がレコードを裏返す手間を省くことができ、本来の業務に集中できるはずだという発想から、サービスが広がったのだという。
「社会」が求めるものを提供するという姿勢は創業時から変わらない。これからも「必要とされる次」を目指して、新たなサービスを創造していく。