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株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役 社長執行役員

宇佐美 進典

https://cartaholdings.co.jp
Usami Shinsuke

トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)などを経て、1999年にVOYAGE GROUPを創業、以来19年連続での増収を記録。2001年、サイバーエージェントと資本業務提携。2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合に伴いCARTA HOLDINGS代表取締役会長兼CEOに就任。

デジタルマーケティングの先にある「進化推進」

時代の移り変わりとともに、求められる事業やニーズも変わってくる。製造業や販売業などが日本経済を牽引した時代に続き、現在ではITや金融に対するニーズも高まり、それらに付随するサービスは私たちの日常に必要不可欠なものとなった。そんな中、既存産業にエヴォリューションをもたらし、自ら「進化推進業」と名乗るのが株式会社CARTA HOLDINGSである。次の時代に求められるマーケティングビジネスとは何なのか、宇佐美 進典代表に聞いた。

CARTA HOLDINGSのホームページを開くと、「進化推進業」という文字が目に飛び込んで来る。デジタルマーケティングやEコマース推進、データ分析など多様な事業を展開する同社は、宇佐美代表が起業したVOYAGE GROUPと、サイバー・コミュニケーションズが2019年に統合して誕生した。VOYAGE GROUPは1999年から、サイバー・コミュニケーションズは1996年からデジタルマーケティングやインターネット広告に取り組んできた日本のネット広告業界を黎明期から進化させてきた企業だ。宇佐美代表は「その2社が統合することとなって、共通点を探したときに『進化推進』のキーワードが見つかったんです」と語る。

1990年代後半、インターネットが出始めた頃はその扱いに誰もが困惑しビジネスとして成立するのか誰も答えを出せなかった時代もあるが約25年の年月を経て、今や社会のデジタル化を背景に広告市場全体の成長をインターネット広告が後押しし、その進化は明らかなものとなった。

両社は統合を経て、デジタルマーケティングや広告サービスを皮切りに、あらゆる産業の進化推進をサポートしていく企業体へと変化していった。「例えば自社で新しい事業を興すだけではなく、既存の産業をどのように進化させていくべきなのか、この観点が日本のマーケティング業界に必要になってきたのだと感じます」という。

宇佐美代表は「進化推進」には、二つの道があると説く。「外部の力をうまく活用してDXを進めていく方法が一つ、そしてもう一つは自社内でDXを進めること。自ら構想し、エンジニアを抱え、PDCAも自分たちで行うのです。このアプローチの良いところは、自然な形で進化していけるところと言える。実際、5年前の経営統合で電通グループの連結子会社になり、私たちのようなDXの進んだ会社を取り込んでグループ全体のDXを進めていく、こうしたアプローチも有効だと実感しています」

電通グループのの強みを最大限に生かす事業として、運用型テレビCMプラットフォーム「テレシー」がある。テレビCMの戦略立案、制作から効果分析までを担うサービスで、その最低金額は100万円と破格だ。「電通と組んだということは、テレビ局との関係が近くなるということでもあります。これはネット広告時代に合わせたテレビCMをテーマに、電通と弊社で考え立ち上げた事業であり、双方の強みを出せたプロジェクトではないでしょうか」と胸を張る。

閉鎖的で属人的だったテレビCM業界というものがDXで開放されていく、それによって新しいチャンスを得る企業が現れる。これが宇佐美代表の考える「進化推進」だという。

設立から5年目を迎え、。「統合前、サイバー・コミュニケーションズは1000人企業で、VOYAGE GROUPは350人程度の規模でした。自ら育ててきた会社より規模の大きな会社との統合は、それこそ明治維新のただ中にいるような気分です。廃藩置県を行ない、五箇条の御誓文を作るような会社としての基盤を作る5年間でもありました。その共通言語としてよりどころとしたのが、『進化推進業』だったのです」と振り返る。

改革の進捗について、「実感としてはまだ3合目、大日本帝国憲法が制定され、ようやく基礎ができた段階でしょうか。この後は当然、富国強兵です」と例える。

この5年間を内向きにすぎたと省みる宇佐美代表だが、「テレシーはスタートしました。しかし私たちは大きな挑戦に向けて経営統合をしたわけですから、そのフェーズに入ったにすぎません」と評価する。

リアルとデジタルのビジネスが融合し、進化し続ける中、広告マーケティングも同様であり、マス広告とデジタル広告の世界がつながり、テクノロジーを生かした新しいデジタルマーケティングが求められている。

「奇をてらった策よりは、王道が答えだと思います。誰のどんな課題を解決するサービスなのか、そこが最も重要であり、小手先では通用しない。私自身も小手先のサービスには気乗りしません。新しいからこそ、シンプルで力強い答えが必要になると考えています」

クライアントや消費者はこんなことで困っているのではないか、そうした仮説を頭の中で発展させ、そして期待を込め解決策を練っていく、これが宇佐美代表の王道なのだ。

宇佐美代表が起業したのは25年前、インターネットが黎明期でもあった。だからこそその可能性に飛び込み、世界を変えたいと願った一人でもある。「組織も大きくなり事業領域も広がっていく中で、私たちの事業が世の中を進化させている、良くしている、という実感を持てていることは確かです。しかし自分の手応えとしては事業を追求すればするほど、世界は変わらないものだと痛感させられる。それほど難しい時代の中に置かれているのだということです」と述懐する。

上場も果たし、業績は好調が続いているが、宇佐美代表はスタートラインに立ったという意識で、富士山の山頂でエベレストを思うような心境だと語る。「これは私の思考が、登頂した達成感より日々の学び、プロセス、それを乗り越える道のりに面白みを感じてしまうからでしょう」

映画でも地味な人間ドラマより、派手な乱高下のある物語が好きだという宇佐美代表。波瀾万丈を楽しみながら、時代の「進化推進」をけん引するのだろう。