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株式会社グランドバリュー 代表取締役

古橋慶樹

https://grandvalue.net/
YOSHIKI FURUHASHI

1986年、福島県生まれ。学生時代は野球に専念し、駒沢大学では野球部主将を務めた。大手グループ会社に3年半勤務し、人材業界に転職。18年に独立し、グランドバリューをはじめ複数の会社を経営。2024年5月に「G-LOTUS Holding」としてホールディングス化。介護業や不動産業等、労働者を支える新事業に進出する。

 1社目を創業した当初から「自分一人ではなく、関わる人と成功したい」という強い思いを抱いていた古橋代表。複数の事業を展開するなかでのホールディングス化は、宿願でもあった。「元々8期目でのホールディングス化を目指していましたが、社員一同の努力のおかげで1期前倒すことができました。軸となる人材派遣業はもちろん、運送業などの他の事業もさらに加速させたい」と期待する。

 何よりも社員を大切にすることを心がけている古橋代表の姿勢は、ホールディングス化しても変わらない。「押し付けるのではなく、任せることで責任感を持ってほしい。そのために必要なのは、信じることではないでしょうか。他者から大切にされている人は、同じように他者を大切にできるものだと思います。企業規模が大きくなっても、関わる人すべてに『あなたは大切です』という思いやりを持ち続ければ、それが連鎖していくだろうと考えています」と語る。

 「G-LOTUS Holding」という社名も、社員のアイデアを採用したもので、多くの外国人労働者と関わってきた思いが込められているという。古橋代表は「『蓮』を意味する“LOTUS”ですが、蓮はどんな環境でも美しい花を咲かせます。国籍や個性の異なる人々が集まる会社だからこそ、社員はもちろんその家族、関わるすべての人が、国籍に関係なく、住まいや食生活に困ることなく安心して生きていけるように。彼らの人生を包括的に支える事業を展開するという思いがこもっています」と力を込める。

 同社は求人に一切広告を使わず、ほとんど従業員の口コミで採用しているという。「外国人労働者も多くいますが、信頼している従業員が紹介してくれるのは、優秀な人材ばかり。ハートがきれいな人が多いですね。環境を変えたい、稼ぎたいと来日する人もいれば、経済的に恵まれ、家族に留学を勧められて来る人もいます。すべての人が平等に働ける環境を整えたい。従業員から社長になった人もいます。チャンスを提供できる会社で在りたいですし、それを生かせる人と一緒に仕事をしたいと思います」と語る。

 従業員への信頼から、紹介された人材は必ず採用する。「『あなたが連れてくる人だから信じるよ、仲間にするよ』という姿勢です。例えば、恋人を紹介して『その人はダメだ』と言われたら、恋人だけでなく自分も傷つくでしょう。仲間がこの人が良いと紹介してくれた人を不採用にする理由がない、採用してうまくいかなかったとしたら、それは仕方ないことだと捉えています。私たちもまだ成長過程、どんな過去があっても、大切なのはこれからどうなりたいか、という点を重視しています」

 人材派遣業は、人と人とが支え合うビジネスだからこそ、「個を大切にしたい」という。古橋代表は「会社は団体戦ですが、100分の1ではなく、一人一人の集合体で100という組織にしたい。個が広がることが何よりも重要ですが、それはスキルや業務能力だけではありません。やはり、気持ちの部分が大きい」と明かす。

 外国人労働者の人材派遣業を始めたのも、モンゴル人との出会いがきっかけだったという古橋代表。異文化・異言語の労働者とのコミュニケーションでは、「熱量や温度感を大切にしている」と話す。

 「創業当初、人材を手配してくれる方に『現場の一人一人を愛してください。それが唯一のお願いです』と言われたことがあります。そのときは一人一人を愛するってなんだろうな、と思いましたが、その言葉がずっと心に残っていました。仕事をしている彼らを見ているだけでは愛せないでしょう。でも、彼らの背景を知れば愛せるかもしれない。彼らがどんな目的で日本に来て、何を達成すれば幸せなのか。現時点で、その夢の実現までどれくらいの距離にいるのか。食事はきちんととれているか、住む場所は確保できているか。困りごとはなんなのか、そうした一つ一つを気にかけ行動することで、初めて愛せるのではないかと考えるようになりました。そういう思いが伝われば、自然とコミュニケーションが生まれます」

 関わるすべての人を信じ、愛する——その姿勢を貫く古橋代表だが、そこには自身の経験も影響しているという。「独立したころは、信頼していた人に裏切られたこともありましたが、一方で手を差し伸べてくれたのも人でした。ずっと真っ暗闇でファイティングポーズを取っているような感覚もありました。ボクシングなら12ラウンドで終わりますが、ビジネスは立ち続けさえすれば勝てる。だからこそ、何があっても信じ続けられるし、心が折れないのかもしれません。野球では3割バッターが成功となりますが、ビジネスでは99回失敗しても100回目に成功すれば99回は成功の糧であったと言えます。そんな気持ちを大切にしています」と熱く語る。

 ホールディングス化により、さらなる事業拡大を目指す同社。その原点にあるのは、「人を大切にする」という思いだ。古橋代表は「人にしかできない部分で勝負したい。それは、人と人がつながることで何が生まれるか、という挑戦でもあります。私たちが目指すのは、『あのネットワークに入りたい』と思われる集団であること。『あそこの人たち、なんだか楽しそう』『どこで働いているんだろう?』『どの会社?』そんなふうに興味を持ってもらえるのが理想です。常にチャンスがある環境だと知ってもらいたい」と呼びかける。

 外国人労働者が来日時に抱いていた夢を実現できる環境を作りたい。その思いを胸に、あきらめることなく挑戦し続ける。古橋代表の熱意が、日本と海外をつなぐ架け橋となっていく。