神奈川県逗子市出身。1994年、日本医科大学卒業。日本医科大学付属第一病院にて麻酔科研修後、横浜市立大学医学部付属病院眼科に所属。2006年、国際親善総合病院眼科部長に就任。2010年、神奈川県横浜市に戸塚駅前鈴木眼科を開院。現在は同クリニックの理事長を務めるほか、県下に計4カ所のクリニックから成る鈴木眼科グループの代表を務める。
耳鼻科医の父と眼科医の母の背中を見て育った鈴木理事長は、日本医科大学に進学するものの音楽に熱中したという。医学部卒業後、最初に目指したのは音楽の道だった。アメリカの名門バークリー音楽大学に入学したが、周囲のレベルの高さに圧倒され、4カ月で帰国した。その後、麻酔科の研修医としてさまざまな手術に関わる中で、特に興味を引かれたのが眼科だった。
2002年、東京歯科大学水道橋病院の眼科を率いる白内障・屈折矯正手術のパイオニア、ビッセン宮島弘子教授と出会った。「宮島先生からレーシック手術の手ほどきを受けました。私の方向性を決めた多焦点眼内レンズも教えてもらいました」と語る。2007年に国際親善病院眼科部長に就任し、2010年には戸塚駅前鈴木眼科を開院した。その間、鈴木理事長は多焦点眼内レンズの治療に注力し続けている。
鈴木理事長は「多焦点眼内レンズは、眼科医療における革新的な治療法」と言い切る。近視・遠視の矯正だけでなく、老眼へのアプローチも可能で、緑内障のリスクを低減する効果も見込めるといい、「その名の通り、このレンズは複数の距離にピントを合わせることができます。水晶体の代わりに眼内レンズを挿入することで、遠近の視力を確保し、メガネやコンタクトレンズから解放され、裸眼で生活できるようになる」と力を込める。
挿入手術は、術前の測定データを基に精密なレーザー技術で行われ、わずか10〜15分で完了する。局所麻酔のため痛みも抑えられ、術後の回復も早く、多くの患者が手術翌日から通常の生活に復帰できるという。「自由診療ですが、一度の手術で生涯裸眼での生活が可能になることを考えれば、軽自動車1台分の治療費は決して高額とはいえないでしょう」と強調する。
さらに、多焦点眼内レンズは日々進化しており、連続的に焦点を拡張する焦点深度拡張技術を採用した高品質なレンズも開発されている。だが、こうした革新的な技術を積極的に採用する医療機関は依然として少なく、普及には大きな課題があるという。「不思議なことに、この技術の可能性に気づいている眼科医が少ない」と指摘する。眼鏡産業への影響や、既存の医療体制との競合を懸念し、業界全体の受け入れが進んでいないという。多焦点眼内レンズが普及すれば、眼鏡やコンタクトレンズの需要が減少し、関連産業の市場にも影響を及ぼしかねず、緑内障治療の需要減少による製薬会社に与える影響も無視できないという。「多焦点眼内レンズは、眼科医療におけるパラダイムシフトだと考えています。新しい技術の導入には必ず抵抗がありますが、患者にとって本当に良いものであれば、最終的には受け入れられていくはず」と語る。
「生涯裸眼の世界へ」という理念を掲げる鈴木理事長の視線は、医療の枠を超え、より大きな社会の変化を見据えている。「医師が処方する薬もコンビニで入手できるようになりました。眼鏡やコンタクトが不要になるかもしれない未来では、眼科医の役割も変わるのではないでしょうか」と明かす。
「人生において、価値ある仕事に取り組める時間は限られています。今後、多焦点眼内レンズのスペシャリストとして患者に貢献するためには、『選択と集中』が不可欠。神奈川県の戸塚、鎌倉、逗子に加え、妻が運営する金沢区のクリニックも展開してきましたが、これからはコンタクトレンズの処方など一般的な診療を行うクリニックと、多焦点眼内レンズなどの手術に特化したクリニックを分け、専門性を高めていきたい」と意気込む。
新たに大船にも開院を予定する中、今後はITやマーケティングを活用し、新たなビジネスモデルの構築も視野に入れる。「変化を恐れるのではなく、患者のQOL向上を第一に考え、新しい可能性に挑戦していく。それが、医療の本来あるべき姿なのかもしれません」