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株式会社シーエープラント 代表取締役

伊地知祐吉

https://caplant.com/
YUKICHI IJICHI

2013年、株式会社シーエープラント入社。2015年、同社エネルギー事業部の立ち上げに従事。2022年、同社代表取締役に就任。

 SDGsや2050カーボンニュートラルなど、環境意識への高まりを見せる中、同社のバイオガスプラントの需要は年々高まっているという。伊地知代表は「以前は再生エネルギーといえば太陽光、次に風力という潮流がありました。そのような状況で、廃棄物でエネルギーを生み出すプラントは、積極的に取り組むべき問題だと位置づけました」と語る。

 同社ではバイオガスプラントの再生業務にも注力している。バイオガスプラントは、廃棄物を投入後、メタン発酵によりガスを出し、発電するという仕組みだが、廃棄物の種類によっては、ガスが思うように出ない状況もあるという。さらに、バイオガスが生まれた後の液体は農地へ液肥として活用できるが、排水処理が必要な場合は、薬品投与などで費用がかさむ。その費用が発電の収益を上回り、プラント運営に困難が生じてしまうプラントが各地にあり、課題となっていたからだ。

 伊地知代表は「20年以上プラント事業に取り組んでおり、修理や調整は日常業務。その知見を活用し、技術的な問題の解決や健全な運営の支援も行っています」といい、施工から調整、ガスを発生させて販売するまで、現場で支援する〝一気通貫〟の再生事業を提供している。

 2023年から京都の規格外野菜を活用した食品事業も立ち上げた。目標はフードロスの削減だ。フードロスの統計対象には規格外野菜は含まれておらず、過去から相当数の規格外野菜が廃棄されてきたはずといい、そうした規格外野菜を使った加工品を製造販売している。

 事業立ち上げ当初は野菜を使ったスープを製造販売し、一定の需要はあったものの、製造のロットが小さいがために単価が高くなり、黒字化は困難だった。そこで野菜ジャムの製造販売に取り組んだ。伊地知代表は「製造開発の過程で試食を重ねましたが、野菜の風味や甘味が強く非常においしい。各地で試食してもらって、産直市場や京都府内の道の駅にも商品を並べてもらえるようになり、何とか販路を拡大していけるフェーズに立てた」と手応えを感じている。

 野菜加工事業に取り組んだのは、谷吉廣・前代表取締役の思いがあったという。伊地知代表は「先代は南丹市(旧八木町)の出身で、故郷に恩返しをしたいという思いをずっと抱えていました。とはいえ、発電機やプラント事業は縁遠い部分がありました。コロナ禍で、新規事業への補助金が用意されたので、新たに野菜加工事業を始められた。南丹市の主たる財源である農業に恩返しができました」と述懐する。

 伊地知代表は「私たちの理想は、農家自身の手で農業の『6次産業化』を実現してもらうこと。生産、加工、そして流通と販売まで行えれば、さらなる収益につながる。とはいえ、いきなり個々が機械を購入し、加工品を製造するのは現実的ではありません。ならば、一旦は当社を実験場として、機械や工場を使ってもらいながら商品開発などをして、自律的な発展を支援したい」と期待する。

 さらに、「日本は人口が減少しており、農業従事者も例外ではありません。今後の農業を考えると懸念点が多く、新たな可能性を模索する必要があります。農家が生産したものを適正な価格で、よりよい売り方をしていくことが将来につながるはず」と農業の持続可能性を追求する。

 同社は新たな挑戦で困難を次々と克服してきた。発電機の販売も、当初はゼロからのスタートだった。「日本の市場で知られていない製品だったため、マニュアルの日本語化から、メンテナンスができるようになるまで何度もトレーニングを重ねました」と振り返る。さらに「結果的に発電機は市場に流通するまでに至り、成功体験といえるものになりました。その経験が野菜加工事業にも生きていると感じます。問題意識をチームで共有しながら、ぶれない目標を持って、あとは進むだけ」と前を向く。