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株式会社AIBOT 代表取締役

伊吹哉太

https://ai-bot.co.jp/
KANATA IBUKI

1994年生まれ。2020年に株式会社AIBOTを設立し、代表取締役に就任。

集客に悩む多くの経営者や店舗オーナーとの出会い

 伊吹氏は、滋賀に生まれ、地元の工業高等専門学校でプログラミングなどを学び、その後大手通信会社に就職。すぐに独立し、不動産、車の売買、美容クリニックの会社の経営を知人と共に行うなど、多岐にわたる事業を展開してきた。日々多くの経営者と交流する中で、彼らが集客に悩んでいることに気づいた。特に、コロナ禍で来客数が減少し、経営が困難になっている地域密着型店舗のオーナーからは「今いるお客さんを大切にしたい。そのためには、どうにか新しいお客さんを増やして、経営を継続しなくてはいけない」という切実な声を多く耳にしたという。さらに、LINEを集客にどう生かすかという相談も多方面から寄せられていた。

 そんなある日、伊吹氏は都心部の大手カフェチェーンの店舗を訪れ、レジに置かれたLINE公式アカウントの登録POPに気づいた。そのカフェをよく利用する彼がそのアカウントに登録し、登録されている友だち数を確認すると、その数は数百人と意外にも少なかったのだ。

LINE公式アカウントに本当に必要なのは、顧客管理でもマーケティングでもない

 「有名でブランド力があり、毎日数百人のお客さんが訪れるカフェですら、LINE公式アカウントの友だち数がとても少ないことに驚きました。つまり、LINEを効果的に活用できている企業はほとんどない。これをうまく使えば、多くの人の力になれるのではと考えたんです」と伊吹氏は振り返る。

 LINE公式アカウントを効率化する顧客自動管理システムやマーケティング自動化ツールを提供する企業は多いものの、LINE公式アカウントを利用する企業や店舗の最大の悩みは、顧客管理でもマーケティングでもない。「友だちが集まらない」ことなのだ。友だちを増やすために一般的に取られる手法は、店舗にQRコード設置する、ホームページやECサイトから誘導する、LINE広告を利用する程度に限られていた。「そこで注目したのが、友だち紹介キャンペーン制度です。タクシー会社のアプリのように、アプリを友人に紹介して専用クーポンがもらえる機能をLINE公式アカウントに搭載してしまえば、口コミで友だちが増えていくと考えたんです」と語る。

柔軟な働き方とキャリアの機会提供を目指して

 そこで約1年かけて「LIBOT」を開発した。友だち紹介キャンペーンや顧客管理、顧客へのサービス案内をLINE公式アカウントだけで一括して利用できるのが特徴だ。外部のサイトに遷移することなく簡単にでき、LINE公式アカウントに登録している顧客は、周囲のLINEユーザーにアカウントを紹介することで、インセンティブを受け取ることができるというシステムだ。

 「例えば、行きつけのカフェが公式LINEアカウント3名に紹介すればコーヒー一杯無料』と言っていれば、家族や仲のいい友人に紹介したくなりますよね。こうしたインセンティブを提供することで、口コミによる集客が実現するのです」と話す。

 LIBOTは月額9800円から利用できるため、宣伝広告費を抑えることができる。導入時には、マーケティングの目的や方法について丁寧にヒアリングされ、どのように活用したいかを相談することも可能だ。必要な素材やロゴなどを提供すれば、LINEアカウントの構築もすべて担当してくれる。SNS運用の専用チームもあり、必要に応じてLINE運用に関するアドバイスも受けられる。

 LIBOTは、飲食店や美容系店舗にとどまらず、不動産業界や保健業界など、多種多様な業種に広がりを見せており、現在全国で1200社が導入している。今期の売り上げは10億円を超え、急速に成長を遂げている。しかし、伊吹氏はLIBOTにはまだ改良の余地があると語る。現状のLINE公式アカウントでは、ユーザー名しか収集できず、詳細な顧客情報を得るためには、別途アンケートを実施する必要があるのだ。ただ、アンケートの集計には手間がかかり、回答率も低いという課題がある。「今後は、ユーザーの人物像や興味・関心に基づいた情報を取り込むシステムを構築し、よりパーソナルなデータをもとにキャンペーンを展開できるようにしたい」という

 株式会社AIBOTは、LIBOTに加えて、AI事業やITコンサルティングにも取り組んでいる。また、子会社ではプログラミングスクールの運営なども行っており、今後はデザイン会社としての側面も持ち、IT、クリエイティブ、教育の三つの方面で事業を拡大していく予定だ。 

 「デジタルとアナログの融合が弊社のモットーです。デジタル時代においても、口コミのような人と人とのつながりはアナログ的な側面があります。アナログでしか解決できない課題があり、デジタルとアナログの境界線をなくして、さらなる価値を提供していきます」と意気込んでいる。