2003年、慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社日本スポーツビジョンに入社。後に、株式会社リクルートキャリアで営業、事業開発を経て、中途採用領域の営業部門長などを務める。2015年11月、株式会社ビズリーチに入社。ビズリーチ事業本部長、リクルーティングプラットフォーム統括本部長、取締役副社長を歴任。2022年7月、同社代表取締役社長に就任。同年10月、ビジョナル株式会社取締役を兼任。
CMなどですっかりおなじみになった転職サイト「ビズリーチ」を運営する同社は、「キャリアに、選択肢と可能性を」というミッションを掲げている。酒井代表は「『ビズリーチ』は、企業と求職者が直接やりとりできるプラットフォームがなかった人材業界において、人材データベースを企業に開放することで採用市場を可視化し、ダイレクトリクルーティングを推進してきました」と語る。
また、「人材紹介ではクローズドな状況から求人を選択していくことが多いのですが、ビズリーチでは、登録すると企業から直接スカウトが届くので、キャリアの選択肢を最大化することができるのです」と強みを語る。
さらに、企業が求職者に直接アプローチをするダイレクトリクルーティングの取り組みが世に受け入れられた要因について、酒井代表は「変化が急速な時代において、ビジネスも刻一刻と変化を迫られています。つまり、新たなことへの挑戦は常に欠かせません。すると、人口減少による人手不足だけでなく、新たな事業の即戦力となる人材不足も常態化することが考えられます。そのような背景があるからこそ、企業自らが主体的に考え能動的に採用活動するこのサービスが受け入れられたのでしょう」と分析する。実際、同社は「社長の本気篇」というCMを打ち出し、大手企業の社長が出演。大手企業といえば新卒一括採用という既成概念を破り、キャリア採用にも焦点が当てられる渾身の一手となった。
人材の流動化が進む中、新たな取り組みとして「社内版ビズリーチ」をスタートした。「外部から人材を引き込むためには手厚いフォローをした上で、『ビズリーチ』のようなスカウト活動を通して魅力を発信していく。一方、社内の社員に対しても同様に魅力を発信できているのかと疑問に思ったのです」という。「例えば、別の会社でマーケティング職の内定を得た方がいたとします。では、その方が辞める会社でマーケティング業務ができないかといえば、不可能ではないはず。つまり、現在在籍する人材を最大限生かすことが大切であり、その重要性が発想の基点になりました」と開発背景を明かす。
「社内版ビズリーチ」の概要については「基本は『ビズリーチ』と同じです。つまり、社内の人材に対して、能動的なスカウト活動を行い、社員の能力を最大化していただくことが目標です」という。そのためには、社員一人一人の経験やスキルを可視化することが第一歩となる。酒井代表は「創業から16年にわたり蓄積してきた転職市場のデータを学習した生成AIを活用しています。そのため、転職市場を基準とした「社内ポジション要件」と「社内レジュメ」の自動生成が可能です。そして、「ビズリーチ」で培った検索・マッチング技術を駆使することで高精度な人材検索を行い、これまでになかった社内の人材マッチングの実現を目指しています」と力を込める。
「キャリアに、選択肢と可能性を」というミッションを体現する取り組みを行ってきた酒井代表は「社内外問わず、各個人が数あるオープンな選択肢から選んでいける世界を目指しています。企業側の視点に立つと、ある社員が退職する時に、代わりに相応しい人材を社内か社外で区別する必要はありません。ただ適切な人材をアサインすればいい。社内の人材流出を止めることと、社外からよい人材を採用することはどちらも両立する」と見据える。
さらに、酒井代表は「人材流出を防ぎ、一人一人の能力を最大化するためには社内でのエンゲージメントを高める施策も欠かせない」といい、「社内版ビズリーチ」がその一助になればと願っている。
酒井代表は、同社がキャリア形成におけるインフラ的存在になること目指す。「就職や転職、そして人事的な問題の解決といえば当社のサービス。蛇口をひねると水が出るような、インフラのような存在になりたい。キャリアの選択肢と可能性の最大化にこだわりながら、一人一人が活き活きと働けるような日本を実現させたい」と前を向く。
酒井代表が仕事で重視しているのは「好奇心」だ。「プロフェッショナリズムも好奇心から全てが始まると考えています。ビジネスや業務への興味は一人一人違っていい。普段歩いている日常だけでも発見は多いはずです。さまざまなことに興味を持てるような、子ども心を大事にしています」と語る。酒井代表の好奇心は今後も同社の推進力となるだろう。