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株式会社エスケイ 代表取締役

保科純一郎

https://www.esukeinet.jp/
JUNICHIRO HOSHINA

1968年生まれ、東京都出身。帝京大学卒業後、91年に証券会社に入社し、個人営業を行う。27歳でエスケイに入社し、14年間勤務。その間、現場や営業、生産管理などを経験し、2010年代表取締役就任。自動車に使われる金属製品のプレス加工やプラスチック製品の加工も手掛ける。

  近年、際立った自動車産業の変革の一つに電気自動車の普及と促進が挙げられる。日本でもいくつかの自動車メーカーが変革に乗り出したが、国内における電気自動車の普及率はまだ高い水準とはいえない。一方、中国では電気自動車の普及率は年々上がっており、世界でも目を見張るものがある。

 世界中で電気自動車のムーブメントが起こる中、その波は自動車部品製造を行うエスケイにも押し寄せている。保科代表は「近年、当社でも新規設備の投資を行いました。とはいえ、こちらの設備は電気自動車専用ではありません。電気自動車のほか、ハイブリッド車やガソリン車にも対応可能です。今も着々と量産の準備を進めています」と語る。

 刻々と変化する自動車産業だが、変化の少ない慣習的な部分も存在するという。「当社が行っているプレスという加工法は、産業革命以来、ずっと変わることがない。金型の中に鉄板を入れて、上から下に押して成型する方法です。今でこそ発展し、さまざまなバリエーションがありますが、基本的な作り方は100年前と本質は変わりません。どんな部品でも、どんな自動車でも、あるいは自動車ではなくても製造することができます」と説明する。

 伝統と変化のバランスを保ち、60年以上の歴史を刻んできた。保科代表は「変化には予測したうえで対応するもの。変化した後に設備投資を行うのでは遅い。まずはトレンドを把握したうえでシナリオを描き、こちらから仕掛けることが重要です。また、予測が外れたとしても仕事を確保するために、プランBも考えておくべき」と時代の変化への心構えを明かす。

 また、保科代表は人材確保にもいち早く取り組んできた。「約20年前から人材不足の兆候があったため、対応する必要を感じていました。現在ベトナムからの技能実習生が15人在籍しています」という。さらに、深刻な人材不足の根本的な解消のため、業務の見直しも行った。「オートメーション化に取り組み、今では相当数の製造ラインが自動化されています。設備によっては、ボタンを押せば製造が行えるものもある。どのような人材でも作業が行える製造ラインの整備には、先んじて注力してきました」と話す。

 栃木県佐野市に本社工場と第2、第3工場を構える。保科代表は地域を活性化させるべく、ロータリークラブの活動を行っている。「ロータリークラブは会社としてではなく、社長である私個人として活動しています。さまざまなところに寄付してきましたが、現在注力しているのは子ども食堂への寄付。地元では今まで3カ所でしたが、今では7カ所に増えました。ここ数年で増加したとはいえ、行政の支援には限りがあるため、当社としても目に見える形で支援しています」と説明する。

 子ども食堂に着目したきっかけは、支援の手を差し伸べる限界に気づいたからだという。「元々当社を知っている子ども食堂から寄付のお願いがきていたのです。確かに知り合いなら声をかけてもらえるが、当社を知らなければ、お願いもできない。それならば、こちらから積極的に声をかければいいと思い、自発的にさまざまな団体に声かけしようと思います」と語る。

 また、地域貢献として栃木県足利市の男子バレーボールチームのスポンサーも行っている。「アカデミーチームの活動資金を支援しています。そのため、アカデミーチームのユニフォームには当社のロゴがあります」と誇らしげだ。事業のほか、地域貢献には今後も取り組んでいきたいと意気込む。

 保科代表のモットーは「凡事徹底」。事業においても大きな売り上げ目標を掲げたり、規模の大幅な拡大を追求するつもりはないという。「誰でも今日よりいい明日を迎えたいでしょう。その思いをずっと持ち続けることを大事にしています。大きな改善はしなくていいので、しっかり歯止めをかける。今日何かを100個つくったなら、次は101個つくる。それを成し遂げるのは明日じゃなくてもいい。1週間かかってもいい。ペースが崩れないように、着実に続けることが重要なのです」と力を込める。