1989年、アンダーセンコンサルティング(現在のAccenture Japan Ltd)でキャリアをスタートし、2006年には日立コンサルティグの立ち上げに携わり、取締役にも就任。2012年からは日本IBMの営業理事として、大手企業を顧客に、AIやIOTを活用した新規ビジネスの立ち上げに貢献した。その後独立し、大手企業からスタートアップまで幅広く顧問として活動、多数の企業のDX推進を支援する。2020年10月に株式会社DNTIを創立。
大手企業の多くが、長年使い続けてきた基幹系システムの維持や改修に大きな時間と費用を割いている。西村社長は「IT関連予算の大きなポーションがこれらに割り当てられ、DX推進への壁となっている」と分析する。そうした中、「付加価値の高いデジタル化は、顧客と伴走して得たアイデアをもとに小さく始めて大きく育てる投資だ」と考え、小さな一歩に踏み切れていない企業を支援し、実行に結びつけてきた。2020年の創業以来、DNTIは西村社長や社員と縁のある大手企業が中心に、顧客が「真に求めているもの」を具体化して提案してきた。
「メインとなるキービジュアルや搭載可能な機能を提示し、それをもとに何を足し引きするかを議論します。そして『この内容なら○カ月、○○万円で実現可能』と、自社のスピード感も示す」。こうした迅速で的確なアプローチが顧客の信頼につながっている。
中堅企業にも長年使用されている基幹システムは存在するが、大手企業と異なるのは、サーバーなどのインフラを除き、大きなシステム更新が実施されていないケースが多い点だ。その結果、システムが塩漬け状態となり、システム全体を理解している人がいなくなりつつあるのが現状と言える。DNTIはこの課題に着目し、基幹システムの見直しとDX推進を同時に進めるアプローチに商機を見出している。
西村社長は「基幹システムのメンテナンスとDXは同時進行が可能、と提案しています。賛同してもらえる企業や実績が増えてくれば、私たちの取り組みの有効性を実証できる。顧客企業、ひいては社会の変革の起点となり得る企業になりたい」と意欲を見せた。
創業以来「明日の当たり前をともに創る」をミッションに掲げる同社は、その理念に基づき、現状打破に挑んできた。西村社長は次の中期計画である2026〜2030年のチャレンジとして、ブラックボックス化のリスクが高まりつつある基幹システムの在り方について顧客企業と膝詰めでアイデアを出し合い、DXを同時に推進していく計画を描いている。
「次の中期経営計画を1年かけて練り上げてきました。その中ではっきりと見えてきたのは、抜本的な採用体制整備の必要性です。おかげさまで創業5年目に社員数50人、売上10億円を達成できました。中期計画では、2030年に社員500人、売上100億円という高い目標設定をしています。その目標実現のためには、当社のミッション、ビジョン、バリューを、全社員に浸透させることが不可欠ですが、社員数が増えれば私個人が直接語りかけることは難しくなります。そのため、会社設立時の思いを書籍にして伝えようと考えています」といい、会社全体を一枚の強い岩にしたいという。
さらに、2031~2035年には、自社プロダクトによるビジネスを事業の中核に育てる計画だ。次期中期計画期間中に培ったノウハウをプロダクトとして昇華させ、建設業界や物流業界などでのB2BのSaaSビジネス展開をも視野に入れるDNTIは、常に変化しながら新たなビジネス創出の機会を探っている。
「これが実現すれば、私がいなくても事業が健全に回るでしょう。そのため、社員には常にこうした思いを伝えています。他社に転職できるスキルや経験があったとしても、この会社で仕事をやり続けたいと思ってもらえる環境を整えることが重要だと考えています」
西村社長は、固定概念を捨て、ゼロベースでサービスを組み立てることを常に心がけているという。そこから、現在顧客から高い評価を得ている「ワークショップ技法を使った意識改革サービス」も生まれた。また、「お客さまとともに考え、ともに創る」という価値観を大切にしている。それを実現するために、「壁をドアに変えよう」(創意工夫)、「当たり前を疑おう」(慣習に囚われず多様な視点を持つ)、「常に変わり続けよう」(現状に満足せず新しいことに挑戦)、「共に考え、共に創ろう」(お客様も含めたチームワーク)、「私たちらしさを大切にしよう」(DNTI Way)を、自社の行動指針に掲げている。
「常にチャレンジしたいが、早く確実に成長する道も選びたい」という積極的な姿勢で、必要であれば、M&Aといった選択肢も視野に入れている。西村社長は、確固たる芯を持ちながらも、変化を重ね、自走できる企業に自社を育てていくことを目指す。そんな企業であれば、自然とそれにふさわしい人材も集まってくると確信しているからだ。西村社長の安定した経営と失敗を恐れぬチャレンジ精神が100億円企業実現のカギとなる。