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株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役 社長執行役員

宇佐美進典

https://cartaholdings.co.jp
SHINSUKE USAMI

トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)などを経て、1999年にVOYAGE GROUPを創業、以来19年連続での増収を記録。2001年、サイバーエージェントと資本業務提携。2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合に伴いCARTA HOLDINGS代表取締役会長に就任。

 同社の進化推進事業は、包括的なデジタルマーケティングのみならず、DX支援、データ分析および計測技術の導入支援から戦略立案など多岐にわたる。宇佐美氏は1999年に創業者の一人としてアクシブドットコムを設立、2011年には株式会社VOYAGE GROUPと社名を変更して、2019年にインターネット広告業界を黎明期から牽引してきたサイバー・コミュニケーションズと経営統合して誕生したのが、現在のCARTA HOLDINGSだ。宇佐美代表は「2社の共通点を探った際に、『進化推進』のキーワードが浮かび上がったのです」と説明する。

 両社は経営統合の後、デジタルマーケティングや広告サービスなど、あらゆる領域の進化推進を支援していく企業へと変化した。「自社で新たな事業を興すだけでなく、既存の産業をどう進化させていくべきか。そのような視点が日本のマーケティングにおいて欠かせないものとなってきています」と指摘する。

 宇佐美代表は進化推進には二つの道があるという。「一つ目は外部の力を活用し、DXを進めていくこと。二つ目は自社内でDXを進めることです。自ら構想し、エンジニアを抱え、PDCAを行っていくことが有効に働く。そのようなアプローチが自然な形での進化につながるはず」と話す。

 同社は経営統合によって電通グループの連結子会社になり、その強みを最大限に生かす事業の中に、運用型テレビCMプラットフォーム「テレシー」がある。これは、テレビCMの戦略立案、制作から結果分析までを一気通貫で担うサービスだ。「電通と組むことで、テレビ局との関係も近くなる。『テレシー』はネット広告時代に合わせたテレビCMをテーマとしています。電通と協業して立ち上げたもので、双方の強みを活かせるのです」と力を込める。かつてのテレビCM業界は閉鎖的かつ属人的な側面があった。DXによりその側面をよりオープンにし、企業が新たなチャンスを得られるようにする狙いだ。

 さらに、「テレシーは私たちにとって大きな挑戦。高みを目指して経営統合をし、ようやくファーストフェーズを迎えたといえる」と評価する。リアルとデジタルのビジネスが融合し、急速に進化しつづけている中、広告マーケティングも同様に、マス広告とデジタル広告の世界がつながるに連れて、テクノロジーを活かした新たな形を模索するフェーズに入っている。

 宇佐美代表は「奇抜な策略ではなく、王道こそ答えだと思います。誰のどのような課題を解決するサービスなのかを定めることが最も重要で、小手先を使わない。シンプルで力強い答えが必要になると考えています」と強調する。

 確かな推進力をもって事業に注力する宇佐美代表は、起業した25年前のインターネット黎明期から新たな技術の可能性を追求し、世界を変えようと前進し続けてきた。自身が歩んできた道のりについて「組織が大きくなり、事業領域も広がるに連れて、世の中の進化に貢献している実感があることは確か。一方、事業を追求すればするほど、世界は簡単に変わらないものだと痛感することもある。それほどに難しい時代に置かれていると感じます」と明かす。

 上場も果たし、業績も好調だが、宇佐美代表はまだスタートラインに立った段階で、「富士山の山頂でエベレストを思うような心境」だという。「私は登頂を果たした達成感よりも、日々の学びやゴールに至るまでのプロセス、困難を克服していく過程に面白みを感じます。そのような心境が大いに反映されているかもしれません」と微笑む。

 VOYAGE GROUPを設立した1999年から続く軌跡について、「統合前、サイバー・コミュニケーションズは1000人企業で、VOYAGE GROUPは350人程度の規模でした。自ら育ててきた会社より大規模な会社との統合は、まるで明治維新の真っただ中にいるような気分です。廃藩置県を行い、五箇条の御誓文をつくり、基盤を打ち立てていく。その共通言語としてよりどころとなったのが『進化推進業』だったのです」と振り返る。今後の改革については「現在はようやく基礎ができた段階。今後は富国強兵に努めていきたいです」とする。劇的に変わりゆく中、宇佐美代表は力強い信念を持って、大きな波も乗りこなしていくだろう。