1969年生まれ、群馬県出身。1990年にワークマン入社。2011年に商品部海外商品部長に着任。PB(プライベートブランド)商品の開発に携わる。高機能で低価格な商品の開発に注力し、2018年9月には運営責任者として「ワークマンプラス」1号店を立ち上げ、客層拡大を推進。2019年4月から現職。
同社は社是として掲げる「声のする方に、進化する」の通り、多くの客層に愛されるPB(プライベートブランド)商品を世に送り出してきた。顧客の声に応えてきた一方、同社に立ちはだかったのは、少子高齢化に伴う労働人口減少だった。職人のなり手が不足し、若い人材の流入も停滞。つまり、ターゲット客の減少が懸念された。
小濱代表は「最初に考えたのは、職人さんが仕事以外で着用できる商品の開発。職人さんたちも、釣りやバイクなど趣味を持っている。そこで、従来の商品との差別化としてPBを立ち上げる発想に至ったのです」と振り返る。
新たなPB商品開発に当たり、小濱代表が着想を得たのがアウトドア雑誌だった。「例えば、クライミングでは180度開脚ができる衣服が推奨されます。そのためにはズボンの設計に工夫をこらす必要がある。また、アウトドア商品は遭難した時に目立つようにカラフルにできています。つまり、それらの工夫は作業服に応用できる」と明かす。
そうしたアイデアから生まれたのが、同社が得意とする防水防寒にカラフルなデザインを施した防寒付カッパ。小濱代表によると「ある日突然、姿を消すように売れたのです。原因を調査すると、SNS上で当社のカッパをおすすめしてくれていました」と語る。そして、SNSを端緒にPB商品をカテゴリー分類し、フィールドコア(FieldCore)、ファインドアウト(Find-Out)、イージス(AEGIS)の3ブランドを立ち上げ、それらの商品を主力とする「ワークマンプラス」が出店された。
「ワークマンプラス」に新たな活路を見出した同社だが、進化はまだまだ止まらなかった。小濱代表は「『ワークマンプラス』の出店により女性も来てくれるようになったのです。特にショッピングモールへの出店は、一般のお客さまに対する発信拠点の役割を担うようになりました。一方、お客さまが増えるにつれて、女性は入りづらいという声も聞こえてきた」と振り返る。
また、顧客の来店時間帯も同社の戦略に大きく影響した。「職人さんが来店するピークは大体7時から9時まで。一方、当社の話題性により女性が来てくれるようになると、10時以降の来店が増加。すると、今度は職人さんから、駐車場が混んでいて買い物ができないという声も上がってきました」という。幅広い客層を獲得したからこそ、新たな壁が立ちはだかったのだ。
そのような中、小濱代表は全ての客層に対して誠実でいると同時に、商機を逃さなかった。「当時は、SNSで当社の商品をおすすめしてくれる方が増加していた時期。子育て中の女性からは、子どもと公園に行っても撥水機能で汚れが付きにくいとの投稿もあった。そして、彼女たちが発信する際に使っていたワードこそ『#ワークマン女子』だったのです」と説明。こうして「#ワークマン女子」が誕生。「ワークマン」や「ワークマンプラス」と共存しながら、あらゆる顧客の声に応えるべく、変革を成し遂げた。
大幅な客層拡大に成功しても、現状維持に甘んじることはない。小濱代表は「『#ワークマン女子』が成功を収めた次の課題は、当社の男性用衣類とテイストを合わせることでした。男性用衣類はアウトドアから派生しているため派手で、女性用衣類は大人可愛いをコンセプトにしているためです」という。また、「せっかく家族で来店するのであれば、皆さんそれぞれに買ってもらいたい。キッズ商品も例外ではありません」と強調する。
コロナ禍もあってアウトドアが流行したのを小濱代表は見逃さなかった。「キャンプであれば家族とともに行くでしょう。ならば、親子コーデを提案できないかと考えついた。親子そろって同じコーディネートを楽しめたら、いい思い出になるはず」と語る。
また、女性向けの「#ワークマン女子」のみで地方展開することは、人口減の日本では長期的成長が難しいと判断し、キッズ商品に加え、再度同社の強みである男性用衣料の強化を宣言した。第一に機能性、第二にベーシックかつ光るデザイン、第三に低価格を掲げるワークマン”らしさ”の下、「Workman Colors」の出店が決定した。
次に小濱代表が打ち出す戦略とは。「『#ワークマン女子』や『Workman Colors』は、プロが認めた機能性がコアとなる。今後は『ワークの強靭化』として、職人やプロのお客さまに向けた商品開発に注力します。そのためには気候変動への対策が欠かせません」と語る。実際、労働寿命の延伸を使命として、同社は快適ワーク研究所を設立し、「猛暑や暖冬に対応すべく、新商品を開発し、販売スケジュールも見直していきます。また、既存店については目下3年ごとのリニューアル改装を行う見込みです。最新のレイアウトと既存店同士の相乗効果でお客さまの満足度を高めていきたいです」という。頭から爪先まで同社商品を着用する小濱代表。その表情は誇らしく、笑顔に満ちていた。