長崎県出身。東京大学大学院卒業。1985 年に法学博士号を取得。大学教授や政府委員としてのキャリアを経て、2008 年に薬事法ドットコムを設立。 現在は弁護士法人と連係し、一気通貫のコンサルティングに携わっている。
薬機法に違反していないか、といった広告のチェックから、エビデンス作成まで。複雑な規制があるヘルスケア業界で、いかにビジネスを伸ばしていくか。そこに重点を置いたコンサルティングを会員制で提供し、さまざまな成功事例をプロデュースしてきた株式会社薬事法ドットコム。より規制が複雑化してきている現状に加え、テレビ、雑誌、ネットと媒体ごとに違う審査基準が設けられていることもあり、今は広告チェック業務の依頼がかなり多いという。
「良いか悪いか。それは法律が分かれば大体判断ができますが、これではダメですね、で終わってしまったら意味がない。そこで、問題点を改善できる代替案を提案できるというのが我々の大きな強み。法律を分析し、マーケティングのビジョンを定めるリーガルマーケティングの手法を実践する。これは我々しかできないことだと思います」
さらに、同社ではマーケティングに必要な要素となるエビデンス作成も担う。有名大学医学部教授やワールドワイドコンサル会社の元リサーチャーのほか、提携している日本臨床試験協会にて適切なエビデンスを作成している。
林田氏は行政との関係性が強く、機能性表示食品制度で、なかなか免疫表示が認められなかった時期に「これなら行政も認める」ことをつかむなど、行政の指針をいち早く知ることを強みにしている。
「行政にはルールがあっても抽象的なことが多いので、行政から情報を引き出すといった活動も必要になってきます。社長も官僚OBなのでそれを生かして情報収集を行っています」
法律事務所であれば、法律だけで終わってしまうが、マーケティングやエビデンス作成、行政情報の収集など幅広く活動しているのが特色だ。林田氏はヘルスケアビジネスに参入すると決めたときから、すべてのニーズに応えたい、という気持ちが大きかったという。
「ビジネスの観点から言うと、弁護士や法律事務所が助けてくれるのは法律だけ。それだとニーズを完全に満たしていないのでは、という思いをずっと持っていました。すべてを網羅する、そんなサービスがあってもいいのではないか、というところが始まりでした」
誰もやっていないことを自分が切り開いていきたい。他人を違うことを実践した方がやりきれるのでは、という思いもあったが、破産寸前になったこともあったという。「このまま破産するくらいなら、何ができるだろうかと必死に考えて一気通貫のヘルスケアのコンサルでいこうと方針を立てたのですが、資金がなく、無料でできるメルマガ配信を始めました。ヘルスケアの展示会に行って、出展者と名刺交換をして名刺を集めて、そこにメルマガを配信し、その出口としてセミナーを開催して、会員を獲得するなど一つずつ積み上げていきました」と振り返る。
それが実を結び、現在会員企業は500社以上になった。中でも大手ボディメイクジムのコンサルは、わずか2店舗の時代から関わり、それから100倍以上の成長を遂げるなど、成功事例も多い。
「大手ボディメイクジムは、BeforeとAfterの違いを見せられればビジネスがうまくいくはずだから、と適法に見せられる方法を教えてください、と依頼された。媒体審査のためにも絶対にエビデンスがいるから、と2カ月でマイナス15キロを示せるエビデンスを作成しました。エビデンスを武器にして媒体審査を通す、という方法を展開するようになったのは、この大手ジムからでしたので、振り返ると大きな転換点だったと思います。マーケティングとエビデンスを組み合わせるなど、それまで考えつかなかった方法を提供できるのが我々の独自性です」と自信を見せる。
リーガルマーケティングを武器に、ヘルスケア業界でのコンサルティング業を切り拓いてきた林田氏。なかでも、今特に力を入れて取り組んでいるのが医療ビジネスへのコンサルティングだ。
「エビデンスというのは、メディカルと非常に関係しているもの。例えば、大手ジムの『やせる』を示すにはどのような試験をすればいいのか、何を指標にするのか。そういったところでメディカルの知識が必要となってくる。自分で勉強したり、教えてもらったりしてきましたが、その中でメディカルの分野はビジネスの観点から見ると非常に前近代的な世界だなと感じたことが、医療ビジネスへのコンサルティングを始めるきっかけでした」
日本ではNASDAQで病院が上場すれば、「医者が金儲けするなんて」と言われることもある。規制も多く、昔の意識からなかなか抜け出せないこともあり、その現状は医療の停滞につながっていると指摘する。
「海外だとオンライン診療がすごく進んでいるので、定期的な投薬であれば通院する必要がない。そこは日本がすごく遅れているなと思うわけです。そういった規制に対して、どういうことができるのか。ヘルスケア分野と同じように医療ビジネスにレクチャーができればと。オンライン診療などを軸に、医療ビジネスのコンサルも請け負うようになりました。立ち上げ2期目で年商30億を突破するなど、成功事例も増えてきました。もともとマーケティングでオンラインの仕組みは慣れていますから。自社のリソースを生かせる」と胸を張る。
さまざまな規制に対応しなければならなかったヘルスケア業界で、広告チェックやエビデンス作り、行政の交渉、売り上げアップという四つのサービスで、コンサルタントとしての新境地を開拓してきた林田氏。今後は、健康・美容・医療というヘルスケアの全分野をコンサルとして制覇したいと意気込む。
「勉強もしましたが、法律、マーケティング、エビデンス、行政。この四つを組み合わせる発想やセンスというのは、元々持っていたものかもしれません。ニーズがあって、競合がいないところを狙ってサービスを始めました。その原点にあるのは、小さいころから持っていた、新たなことを切り開くという気質。自分の進む道はこれだという信念を持つこと。そういうところに支えられていると思います」