20
株式会社グロウイング 代表取締役

栗山茂也

https://grow-ing.info/
SHIGEYA KURIYAMA

和歌山県出身。高校卒業後、フリーターを2年、自動車販売ディーラーを1年経験した後、1997年に起業。2005年に株式会社グロウイングの前身である有限会社グロウイングを設立。子会社合併などを経て2016年に株式会社グロウイングに商号変更。

 グロウイングの事業の柱は自動車の販売修理事業とレンタカー事業だ。一方で、建築、飲食、フィットネスなどさまざまなM&Aによる事業買収に取り組んできた経験もある。栗山代表自身がM&Aを多く経験したからこそ培ってきたノウハウをM&Aアドバイザーとして生かしている。「アドバイザーとしては、自社で全て経験したことをお伝えできるのが強みです。この分野は私が今まで見てきた中で、まだ取り組む人がなかなかいません」と話す。

 メディアやSNSでM&Aが話題になることも多く、M&Aコンサルティングや仲介事業への参入は増えているという。一方で業者の増加に伴い、課題も明らかになってきたという。「不動産の仲介には宅建士のような資格が必要ですが、M&A事業の世界では特別な資格はありません。つまり、事業者の質を一定以上に保てていないのが現状です」と指摘する。

 M&Aでは、企業の財務内容を正確に把握し分析するスキルや、リスクを見通す判断力が求められる。だが、企業売買の仲介のみに終始すると、失敗するケースも決して少なくはない。栗山代表は「この業界では現在のところ規制がなく、今後は法整備がなされる可能性もあります」と分析する。

 業界全体で改善が急がれる課題もあるが、それだけにM&A仲介に留まらないアドバイザーとして、栗山代表の真価は発揮される。「やはり、できるだけ多くの人に『M&Aを行って良かった』と言ってもらいたい。自分の働いている会社を愛し、居心地よく思っている人たちの居場所は残したい。そのような理想をかなえるため、まさに試行錯誤しているところです」と語る。栗山代表は、赤字の続く企業でも改善に尽力し、次の事業者に継承する戦略を立てる。企業の未来、そして、企業で働く〝人〟への強い思いを抱いている。

 また、M&Aに関してアドバイスを行う際は、人々の本音や想いを引き出すことも重要だという。「私がバリアをつくってしまうと、相手も身構えてしまいます。そのため、面談などで話す際は、私もありのままに正直でいることを心がけています」と明かす。M&Aというと企業が前面に出ているように見えるが、その中には数多の人々の思いが交差しているのだ。

 実際に自身がM&Aを経験してきた中で、栗山代表のまっすぐで誠実な思いは買収先の企業にも伝わるという。「〝お邪魔します〟という精神は大事にしています。やはり一般的には、買い手側の方がパワーバランスが上だと思われることが多い。しかし、実際そうではない。フラットに手を取り合うことを常に心がけていますし、誠実さは必ず相手に伝わるはず」と買収先との関係を大事にしている。

 ビジネスをする上で、栗山代表の大事にしているマインドセットは「本質を見極める」ことだという。「ある会社の数字や利益を見て、この価格で買収できるからする。しかし、それは本当にしたいことなのかを真に問うことが重要です。本来自分がしたいことではないのに、たまたま来た話に興味が沸いたという理由だけでは失敗してしまう」と語る。

 栗山代表は「M&Aアドバイザーとしての事業は、私が純粋に自身の経験を伝えたいだけ。さまざまなものを見て経験したい、経験したものを伝えたい。それだけのシンプルな考えです。私の本質はそこにあるからこそ、M&Aの仲介事業を行うのではなく、アドバイザーとして事業をしています」と話す。さらに、「ただアドバイザーとして、誰かに『ありがとう』と言ってもらえたら満足です。私の座右の銘は『いつも笑顔』。人が喜ぶ姿や、ありがとうと感謝してもらえることが一番充実する瞬間なのです」と晴れやかに語る。

 多くのM&Aを身をもって経験してきた栗山代表。培ってきた豊富な経験が相談者への真摯なアドバイスを可能にしている。「自分自身でいうのもはばかられますが、私と同じような経験をした人はなかなかいないでしょう。だからこそ相談者にありのままを伝えられることに、非常に価値があるのだと思います」という。栗山代表は、M&Aをめぐる人々の思いを胸に前進していくだろう。