東海地区で空き家活用サービス「ヤモタス」を運営する和工房。改修工事から運用まで、オーナーの負担は一切ないサービスで、不動産投資のビジネスモデルとして注目を集めている。松久保正義代表は「投資家にもオーナーにも損をさせない仕組みが、空き家問題解消につながる」と話す。
元々建設現場の職人だったという松久保代表は、体を壊したことをきっかけに経験を生かせるリフォームの道に進んだ。5年で独立するという目標をかなえ、2012年に和工房を立ち上げた。松久保代表は「子供たちの未来を憂い、社会問題を解決したいと思っていた。空き家リフォームなら、職人時代の知識や経験を生かして、その問題を解消する手伝いができるのではないか」と考えたことが、空き家活用サービス「ヤモタス」の原点だと語る。
年々深刻化する空き家問題だが、松久保代表は「処分したいという人もいれば、自分が生まれ育った家だから売りたくないという人もいて、家族の中でも意見がまとまらなかったり、施設にいる両親から売らないでほしい、と言われていたりなどで、活用されていない空き家が非常に多い」と指摘する。そこで、オーナーの自己負担ゼロで空き家を借り上げ、リフォームと運用を代行し、賃料収入を発生させて、空き家を“問題”から”資産”へと変える「ヤモタス」が生まれた。
松久保代表は「ヤモタス」の特徴を、「オーナーには、面倒な作業は一切なく、工事費もゼロ。入居者が決まれば、管理の手間もなく一定の賃料収入を得ることができ、改修工事によって空き家の資産価値もアップする。借り上げ期間は13年ですが、その間何か壊れても、修繕費をいただくことはありません」と説明する。
「ヤモタス」のもう一つの特徴は、不動産投資のビジネスモデルでもあることだ。専用の物件情報サイトから、投資家が投資したい物件を選び、改修費用を負担し、運用を開始するというスタイルだ。「投資家側としては投資額以上のメリットを享受できることはもちろん、ほかの不動産投資と違って気軽に始められる。戸建てに投資しようと物件を探しても、なかなか見つからないことが多いが、専用サイトに物件がどんどんアップされていくので、マッチングしやすい」と利点を挙げる。また、長期的に安定した収入が得られる不動産投資を本当に必要としているのはシングルマザーだとして、「シングルマザー大家業プロジェクト」も展開、社会課題の解決につなげている。
同社は、年間1万戸の空き家を「ヤモタス」で再生・運用することを目標に掲げる。松久保代表は「年間平均約5万戸の空き家が増えているため、なかなか減っていかないのが現状。日本の住宅は30年が寿命だと言われていますが、30年で住めなくなるわけではなく、30年で使われなくなるだけ。一方で住宅の着工件数も増えており、資源の無駄遣いという面もある。空き家をリフォームして活用することは、住宅の寿命を延ばすだけでなく、環境問題にもアプローチできる」と語る。
松久保代表は「ヤモタス」の仕組みについて、「誰も損しない仕組みにすることを一番重要視しています。こういったビジネスモデルだと投資家やオーナーを泣かせてしまうことも多々あると思いますが、当社だけがもうかる仕組みではなく、バランスを保っていくことに力を入れました。双方にここまでフェアな仕組みはあまりないはず。利益を得るのではなく、社会貢献として続けていきたい」とアピールする。
「地域に空き家が多いと衰退していくだけでなく、雰囲気も悪くなる。空き家活用の動きが増えていけば地域活性化にもつながる」と語り、「他社にも『ヤモタス』のような取り組みで、空き家事業に参入してほしい。今のままだと日本の状況は変わらない」と訴える。
将来、空き家を集めて、街を作るというビジョンを掲げる松久保代表は、「ヤモタス」を全国へ広げるため、認知度向上に努めている。「『ヤモタス』という社会活動にもなるビジネスモデルを知っていただくことが、我々が長くこの事業を続けていけることにもつながると思います」と力を込める。
和工房株式会社
代表取締役
1980年、愛知県出身。ビル・マンション建設現場の職人からリフォーム業に転職し、2012年、和工房株式会社を設立。空き家活用サービス「ヤモタス」を運営し、社会課題の解決に取り組む。