エコノミスト未来賞2024

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コロナ禍で、ワクチンの認可にこれほど関心が集まったことは今までなかったのではないだろうか。同様に、医療機器ビジネスも、認可されたものだけが市場参入できる規制ビジネス。医療機器のレギュレーションは国や地域で異なり、日本でレギュレーションをクリアしても、欧米の市場に投入するには改めて現地のレギュレーションの壁を越えなければならない。mk DUOの肘井一也CEOは、そうした医療機器関連の国内外法規制に対するコンサルティングなどを通し、顧客企業をトータルにフォローアップしている。

何でも相談できる“ホームドクター”のように

大学卒業後、内視鏡関連製品の研究開発やマーケティングなどに従事した肘井CEOは、その後、アメリカ系や欧州系の認証機関で医療機器の認可に関連した業務に従事。いわば、製造する側と審査をする側を経験したわけで、双方の視点を交えて、医学的な有効性が高く、より安全な医療機器を早期にグローバル市場に投入できるよう、顧客企業をサポートしている。

そうした中で肘井CEOは、「多様なご要望を持つお客様に対し、それぞれのニーズに応えるテーラーメイドのサービスのご提供を目指しています」と話す。そして、同社に仕事を依頼する顧客はさまざまな課題を抱えており、「私たちのいちばんのこだわりは、その課題解決に対して、お客様の期待を超える成果を出すよう心がけることです」という。しかも、「お客様の課題に対し、少しでも私たちで解決できる可能性があれば、ご依頼は断らずにお受けするようにしています」と明言する。

もちろん、それができるにはしっかりとした裏付けがある。医療機器への規制要求が多様化する中で、外資系企業に10年以上いたことから、国内外に信頼できるパートナーがいるのだ。これにより、自ら対応するだけでなく、顧客の要望に応えられる専門のパートナーを紹介することが可能で、最適な解決方法が提供でき「ちょうど、困ったときに何でも相談できる、ホームドクターのような立場でありたいと思っています」と話す。

お客様と一緒に考え、行動する

さらに肘井CEOは、mk DUOを起業した思いともオーバーラップさせながら、「常に、ユーザーオリエンテッドなサービスに徹するコンサルティング会社でありたいと思っています」と話す。自身もエンジニアで、かつては技術オリエンテッドな考えを持っていたが、技術は現場で使われ医療に貢献してはじめて役に立つという考え方にシフトしてきたという。大事なのは顧客の問題解決のため何をすべきかで、コンサルティングに際しても「お客様が抱える問題に対し、私たちはお客様よりも俯瞰的に捉え、あるべき姿と現状との差分について説明し、その差分の原因と対策についてお示ししています」と強調する。

また、質の高いサービスを提供するためには、常に新しい情報をインプットすることも欠かせない。特に、今ヨーロッパは四半世紀に一度の大きな改革期になっているということで、刻々と変化する新しい情報を入手し、それに基づいて顧客にコンサルティングしなければならないのだ。また、新しい規制についてセミナーで講演してほしいという依頼もあり、「そうした依頼はとにかくお受けするようにし、プロとしてのレベルまで新たな情報をまとめ上げ、皆様にご説明できるようにしています」と話す。そうしてアウトプットすることで、自分自身の理解も深まり、知識的により研ぎ澄まされていくという。

2020年3月の設立から約2年。「一気に走ってきたイメージがある」と話す肘井CEOだが、コンサルティングをしている顧客企業に対してはある思いがあるという。「私たちは、完全委託というよりも、お客様と一緒に考え、行動することをモットーとしています。ですから、1~2年後には、私たちが介入しなくてもお客様が自社で問題を解決できる体制を構築していただくことを意識しています」という。たとえるなら、一定のレベルに達して体制が構築できた顧客には自ら次のステップに進んでもらい、そのぶん新しい顧客に対応する焼畑農業のようなスタイルだと話す。

技術開発と規制の融和目指す

もう一つ同社の特徴として、コンサルティング費用を月々の定額制とした、サブスクリプションを実施していることがある。医療機器のビジネスでは多様な対応が必要で、顧客ごとの要望も異なる。このため、サービスごとに契約するのは費用対効果に課題があり、自分たちで対応できるサービス内であれば定額制が公平性の面から望ましいということで、「私たちの医療機器ビジネスの幅広い知識と、グローバルネットワークによってそれが実現可能になっていると考えています」という。

今後に向けては、日々技術革新が進む医療機器ビジネスの世界で、各メーカーは技術開発を進めながら新たな規制要求もクリアしなければならないとして、「その中で、自分たちとしては、構想設計の段階から、技術開発と規制という一見矛盾する内容を融和するような、ソリューションプロバイダーになっていきたいと思っています」という肘井CEO。そのためには、次世代を見越せる知見を持った若い人材も招きたいと話し、「それは自分の後継者ではなく、新しい時代に合った形でお客様と共存共栄を図るスキームを考えてくれる人であってほしいのです」と、将来の飛躍に思いを込める。

Profile

mk DUO合同会社

https://mk-duo.com/

CEO

肘井 一也

1988年東北大学卒業後、オリンパス入社。内視鏡関連製品の研究開発、マーケティング、海外調達等に従事。2007年に米国系の認証機関UL Japan、14年に欧州系の認証機関DEKRAサーティフィケーション・ジャパン入社。医療機器認可に必要なCEマーク、QMS、薬事第三者認証、各種規格、海外法規制に従事。20年mk DUO合同会社設立、国内外法規制に関するコンサルタント業務に従事。

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