スマホで歴史観光の音声ガイド

ぐるり代表取締役 中野賢伸 2025.09.08

 学生時代に歴史コンテンツに特化した位置情報型音声ガイド「GURURI」を開発。自治体と協力して地域の観光振興にも乗り出している。(聞き手=和田肇・編集部)

 私たちが開発したウェブアプリ「GURURI」では、グーグルマップをベースに、協力する自治体が選択した史跡にマークが付けてあります。マークをクリックすると、博物館のように史跡の音声ガイドを聞くことができます。ですので現地に行かず家で聞くこともできます。

 音声は私たちがナレーターに依頼して作成しました。マークした史跡の中には、その場所に近づけば、現地のボランティアガイドや神主さんなどの音声ガイドが聞ける史跡もあります。これらは基本的に無料サービスです。

 マークしてある史跡の詳細な住所アクセス情報や他のユーザーの投稿も見ることができます。そこを訪れた多数のユーザーの投稿を見るのも、ひとつの参考になります。アカウント登録をすれば、現地を訪れたログの取得(マイページで記録可能)ができるほか、史跡を巡った写真なども投稿できるようになります。

 これまで神奈川県横浜市や小田原市、箱根町、東京都台東区、静岡県三島市、長野県上田市、大阪府堺市、徳島県鳴門市、広島県広島市などと協力して、GURURIを利用できる地域を作りました。収益は自治体から受注する制作費で得ています。

 歴史好きだった父親の影響で、子どもの頃からよく父に連れられて、史跡巡りをしていました。ただし、歴史は好きでしたが、大学で本格的に勉強しようという考えはなく、大学は経済学部に進みました。起業してみたいという思いがあり、大学2年生の時に、民間企業による学生限定の起業アイデアコンテストのようなものがあり、これに応募して優秀賞をもらいました。その時のアイデアがGURURIです。史跡巡りが好きだったので、それをもっと面白く便利にできないかと思い考えました。

 一方、通っていた横浜国立大学は、学生の起業支援がかなり充実していることも知りました。それで大学3年生の時に、学生起業としてGURURIのサービスを行う会社を友人らと立ち上げました。私自身はシステムエンジニアではないので、システムは友人に作ってもらいました。最初は手弁当で皆に手伝ってもらいました。

広島の原爆、語り継ぎたい

 最初に実用化したのは、NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(脚本・三谷幸喜、2022年)もひとつの背景にあって、横浜市でした。今後は史跡観光の案内だけでなく、宿泊の予約機能や地域の特産品購入ができる機能を導入することにも取り組んでいきたいですね。地域振興につながればいいと思います。外国語の音声ガイドにどう取り組むかという課題もあります。

 私は広島県生まれですが、広島でも原爆体験を語ってくれる方が年々減り続けています。これを何とかしたいです。GURURIを作ったように、原爆を語り継ぐのに活用できる何かシステムを作れないだろうか。これも重要な取り組みとして考えています。

 

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企業概要

事業内容:アプリケーション開発・運営

本社所在地:横浜市

設立:2022年8月

資本金:200万円

従業員数:8人

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 ■人物略歴

なかの・けんしん

 2000年広島県生まれ。22年横浜国大経済学部3年生の時に、歴史観光のための位置情報型音声ガイドアプリを開発し、株式会社ぐるり設立。24年同大卒業。25歳。

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週刊エコノミスト2025年9月16日号掲載

中野賢伸 ぐるり代表取締役 スマホで歴史観光の音声ガイド