やさしい食の選択肢を提供

ovgo代表取締役 高木里沙 2025.10.20

 おいしくてエコな焼き菓子を日本から発信したい。米国進出に向け、準備を着々と進めている。(聞き手=永野原梨香・ライター)

 アメリカンクッキー、マフィン、バナナブレッドなど、植物性の食材のみを使用した焼き菓子を生産・販売しています。食品業界での二酸化炭素排出は生産時や輸送時だけでなく、畜産段階での排出量も大きな課題です。卵やバターなどの乳製品を使用しなければ、温室効果ガスの排出量低減につながります。

 ミッションは「未来にとってやさしい食の選択肢を楽しく提供すること」。食材は、できるかぎりオーガニックで国産のものを使用します。妥協せず、楽しみながらおいしさを追求し、商品開発することがポリシー。定番のチョコチップクッキー「インポッシブルチョコレートチップ」(税込み410円)はもちろん、ぎゅうひを使用したクッキー「モチインザダーク」(税込み500円)」などのユニークな商品も人気です。

 ハロウィーン期間中(~10月31日)は、ぬいぐるみブランド「Ty」とのコラボレーションクッキーも販売しています。限定クッキーをTyキャラクターのパッケージで個包装販売しつつ、店舗ごとに限定商品を展開したところ、ミレニアル世代を中心に人気化しています。

 実店舗は原宿、日本橋、西神田、虎ノ門と都内に4店舗。店舗ごとに消費者の年齢層は異なります。原宿ではZ世代が、日本橋の店舗はオフィスワーカーや近隣住民が中心です。インバウンド需要も増加中で、全体の売り上げの2割弱を占めます。

 当社は、三井物産出身の溝渕由樹が、小学校の同級生と創業しました。わたしは、溝渕の学生時代の友人。以前は、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)で、財務アドバイザリー業務を担当していました。「手触り感のあるものを通して社会貢献したい」と思案していた頃、溝渕に事業計画の作成を頼まれ、仕事を手伝うなか、21年にCFO(最高財務責任者)として入社。23年、溝渕から代表を引き継ぎました。

日本独自のフレーバーを検討

 今後は、都内に10店舗は出店したい。並行して、米国進出のタイミングを見計らっています。アメリカンクッキーは米国生まれのお菓子なので、進出できる素地は十分にある。22年には、米国の国際認定制度「B Corporation」を取得しました。社会や環境に配慮した公益性の高い企業が取得できる制度で、日本国内の飲食店では初の取得です。

 23年には米国法人を立ち上げ、昨年は、経済産業省主催の起業家育成・海外派遣プログラム「J-StarX Food Frontiers USA」に参加。7カ月かけて、米国進出のためのマーケティングや物流の方法などを、識者からの講義、サンフランシスコでの勉強会などを通じて学びました。

 米国の消費者からは「クッキーのサイズが小さい」という声もあります。抹茶やゆずなど、日本独自のフレーバーを推していくことを念頭に置きながら、消費者の声を商品設計に生かしていく予定です。将来的には、グーグルで検索することを「ググる」と言うように、「優しい選択をする」「楽しい選択をする」などを表現する動詞として広がるぐらいに、「ovgo」ブランドを育てていきたいです。

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企業概要

事業内容:植物性素材を使用した焼き菓子の製造・販売

本社所在地:東京都千代田区

設立:2020年5月

資本金:570万円

従業員数:60人

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 ■人物略歴

たかぎ・りさ
 1989年、米国出身。2015年9月、慶応義塾大学大学院理工学研究科を修了。学生時代には米国とフランスに在住経験を持つ。2016年4月、メリルリンチ日本証券(現BofA証券)の投資銀行部門に入社し、グローバルM&AやIPOなどの財務アドバイザリー業務に携わる。2021年3月、CFOとしてovgo入社。2023年8月より現職。

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週刊エコノミスト2025年10月28日号掲載

高木里沙 ovgo代表取締役 やさしい食の選択肢を提供